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母のいろは歌の区切り方がおかしい件について(3)
さらに続き。
これまでの経緯については、以下にリンクを置いておく。
記者から興奮気味に続報が送られて来た。
あまりに異様なことだらけで、空恐ろしくなって来ました。
戦時中から戦後まもなくにかけて、この地域では50件近くの死体が発見されています。それなのに、死体身元不明のまま処理されているなど、捜査らしい捜査が行われた形跡がありません。
あなたの伯母さんについては、『身元判明なるも死因不特定』として処理されています。まともに捜査したとは思えません。
捜査資料には、被害者には兄がいると記載されています。あなたにとって伯父に当たる方だと思うのですが、ご存命でおられたら、情報をいただけないでしょうか?」
にわかには信じ難い話だったが、俺は伯父を訪ねることにした。80代の伯父は認知症が始まっており、何を聞いてもウンウンと頷くばかりで、ちっとも会話が成立しなかった。
思い切って
「いろはにほへと」
と話しかけてみたところ、
「チリヌルオワカ」
と答えが返って来た。伯父は続けて、
「ヨタレソツネ、ナラムイノ、オクヤマキョウコエテ」
と例の不思議な区切り方でいろは歌を口にした。
「ねえ、伯父さん。ヨタレソツネってどういう意味なの?」
と問うたが、伯父は答えない。
諦めて帰ろうとすると、伯父はポツリと口にした。
「仕方なかったんじゃ・・・」
「え?」
「仕方なかった・・・よたれモンはな。殺されても文句は言えん・・・」
それきり伯父は何も語ろうとはしなかった。
これ以上のことは分からない。記者からの続報を待つしかないようだ。