結んだ瞬間
僕は陸上競技が好きです。
「運動音痴だけど運動部に入りたいな」
陸上部に入る動機はそれだけでした。チームスポーツで得意なことを活かして、仲間と勝利する嬉しさは僕にも何となく分かります。でも僕はきっとそこの輪には入れなさそうな気がした。
だから、誰にも迷惑をかけることなく、コツコツと記録を伸ばしていく陸上競技を選びました。
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中2に上がると何故か僕は円盤と砲丸を投げていました。
体は小さくて、ガリガリ、非力、雑魚メンタル。それでも、幸せなことに僕の中学には円盤を投げられる環境があり、かっこいい投擲選手の先輩たちがいました。
先生は僕が投擲選手になることを快諾してくれました。
投擲種目は投げたあとに「ウォーッ!!」と叫んだりするイメージもあり、ド派手な印象を受けるかもしれませんが、意外に走る種目より「コツコツ」が似合います。
(そもそも僕の出られる地区大会ぐらいのレベルでは叫ぶ選手はほとんどいませんでしたが、それは置いといて)
コツコツです。数センチ記録が伸びると嬉しくなります。もっと遠く、それだけを目指して1日に40~60回、投げます。
僕は非力でチビでしたが、環境が整っていたこともあり平凡な選手くらいにはなることができました。とうてい威張れる記録ではありませんでしたが…。
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10数年の時を経て、今まさに自分の中に陸上競技のマイブームが来ています。YouTubeのおすすめはほとんど100mのハイライトになりました。ボルトやゲイ、ガトリンやブレイクの全盛期がスマホをめくってもめくっても流れます。
簡単に触発され、家トレをまた始めました。ガリガリの体を変えたくて、合ってんのか間違ってんのか分からないフォームでダンベルを振り回し、プロテインを飲んでいます。
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何も成せない僕の人生で、努力が実を結んだ瞬間ってあったんだろうか、とかふと考えます。
大きな大会には出られなかったけど、砲丸の飛距離がグングン伸びていった頃のこと。毎日の腕立て、腹筋、スクワット、ショートダッシュ。その小さな毎日が数センチを積み重ねていきました。
きっとそういう生き方なんだよな。僕はそうなんだ、でもそれでいいんだ。
馬鹿みたいに効率悪いことを真面目にやって、身分不相応なことをやって人から笑われて、それでも小さく結果を出すのが僕なんだと思います。
昔の自分、頑張ってたよな。「何も成せなかった」とか勝手に卑下すると、自虐のようでなぜだか他人を否定しているようなバツの悪さを感じます。
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僕は頭も良くなくて、人の気持ちを考えられなくてよく人を怒らせちゃうけど、そんな自分だからこそ。
かっこ悪くても効率悪くてもいいから、ただ誠実に。愚直に、真剣に。
陸上競技をやっていた頃を思い出して、コツコツ目の前のことを頑張ろうと思いました。