「言語の壁」をどう表現するか(アバター2:ウェイ・オブ・ウォーター)
アバター2の感想です。
この記事で物語のネタバレはしません。
▼英語を話す理由:
10月に上映された第1作のリマスターの特典映像として先行公開されたパートの中に「英語を流暢に話すナヴィ」の姿があり界隈では少し話題になりました。
なぜEnglishを話しているのか?
誰かが彼らに英語を教えたのか?
だとしたら、いつ、どんな目的で?
私は色々可能性を考えたのですが、、、
、、、この仮説は間違っていました。(笑)
答えは簡単でした。
ジェイクが10年間パンドラで過ごすうちに
「今じゃナヴィ語の方が母国語に聞こえるようになった」
という理由で
映画の中で全てのナヴィは便宜上英語を話しているだけでした。(!)
要するに私達が映画館で見られるのは「英語吹替版」だったのですね。
なんか『バーフバリ』で役者はテルグ語を話しているのに、タミル語が流通して、それに日本語字幕がついていたのと似ています。
うーん(笑)
リアリティ志向から考えると、普通にナヴィ語を話してほしい気持ちもありますが。。。
いっそのこと、全部の役者がガチでナヴィ語を話して、画面には終始英語字幕が表示されるバージョンも作ってほしかったです。
ブルーレイとかで特典音声として入れてくれないかしら。(笑)
残念なことにリップシンクは英語で一致していたので、可能性は限りなくゼロに近いでしょう。現実問題、子役に至るまでナヴィ語を覚えて話すのは大変ですしね。物語の中心がナヴィになってしまった以上、俳優チームが言語を学習する負荷が高くなりすぎました。
▼アバター1での素晴らしい取り組み:
アバター第1作では、地球人であるジェイクが、パンドラという異世界に入っていく物語であるため、ナヴィ語は「異質なもの」として観客にプレゼンテーションされる必要がありました。
ポリネシアの言語をヒントにキャメロン監督がアイデアを出して、それをプロの言語学者が発展させて、全く新しい言語体系(単語と文法)を創作し、さらに俳優とディスカッションを重ねながら発音を決めるという非常に手間のかかるプロセスで作られた言葉でした。
特にアクセントについては劇中で一番ナヴィ語のセリフが多いゾーイ・サルダナに決めさせて、キャスト全員が彼女の話し方を参考にして真似をしました。こうした流れはブルーレイの特典映像にまとめられています。
ここまでやっているからこそ、リアルにありそうな言語として、観客はパンドラの世界観に浸れるんですよね。
ただし、それは映画の大半のセリフが地球人のものだったから可能なことでした。ナヴィの村がメイン舞台になるアバター2では学習負荷が何倍にも跳ね上がります。しかも子役も多いです。
またメインがナヴィになったということは、パンドラはもはや「異世界ではない」ということを意味します。であればストーリーを伝えるためには、アメリカ映画であれば英語を話すのが最適な手段になります。
このバランス感覚がキャメロンの本質ですし、決定には異論ありませんが、創作の方向性から決まったことだとはいえ、正直少し寂しいと感じたポイントでした。
了。