【白雪姫】なぜレイチェルゼグラーはあんなに強気な発言をしたのか【実写版】
▼「白雪姫」とは?
『肌は雪のように白く、髪は黒檀のように黒く、唇は血のように赤い』
だったよね?
え?
純血の白人(コーカソイド)女優を起用しないの?
まあ…
レイチェルゼグラーは、父がポーランド系で母がコロンビア系。つまり黒人の中ではかなり白い。もし出演者全員が有色人種もしくは白雪姫がいる村の住民が全員もっと肌の色が濃い人達だったなら、むしろ的確な人選かもしれない。
要するに、日本人が日本人だけで集まって演劇で白雪姫をやれば「めんそーれ」って言葉が似合う沖縄美人よりも色白な秋田美人をキャスティングするように、コロンビア人がコロンビア人で集まって白雪姫をやっても良いじゃん、という話である。
同じく主演女優の人種をめぐって強く批判されたリトルマーメイドでも「七つの海をそれぞれの人種に割り振る」という、異論はあるけどまあそれなりに正当性のありそうな設定を入れてきたので、ディズニーが何の策も無しにスノーホワイトを有色人種に変えたとは思えないんだよね。
▼世間の反発:
しかし世間の声はシビアである。
上記のツイートは8,000以上のいいねを集めている。
あの発言は強烈だったからね〜。
ただ、ちょっと立ち止まって、想像力を使って欲しい。
こうなったのには、何かしらの理由があったはずだ。
こんな性格の悪そうにしか見えないだけの本性で、トップ女優になれるわけないでしょ。(苦笑)
▼彼女の正体:
レイチェルゼグラーは元YouTuberである。
ゼグラーは中学生から歌い手系YouTuberとして活動していたが、世界に美貌に恵まれた少女や歌声が素晴らしい少女は多くいるが、それらの両方を併せ持つ人は稀有である。数年間の活動で彼女は「界隈では知る人ぞ知る」人気者になった。
そして20歳でスピルバーグ映画のオーディションに受かって、文字通りシンデレラガールになった。
白雪姫に関する一連の問題発言をした当時まだ22歳なので、若いインフルエンサーによくある勘違いと、人種差別に対抗するため強気になった結果だとも思わないか。
想像して欲しい。
14歳から歌い手系YouTuberとして活動していたコロンビア系の美少女。
「めちゃうまいね」とたくさんコメントがつく。
しかし同時に「有色人種が白人プリンセスのディズニー曲を歌うな」といった酷すぎるコメントも大量に付いていたはずだ。
そして、逆に純血なコロンビア系の人からも「白人の真似事をするな」みたいな厳しい声や嫉妬や誹謗中傷が飛んでいたと思われる。
ゼグラーは白人にも黒人にもなれない、中間の人なのだ。
ゼグラーは中学生の多感な時期を、自分のアイデンティティをDNA的に一つに定めることができず、心無いネット民からの誹謗中傷に耐えながら、たまに変態男たちがDMに送ってくる世界のチンポ写真博覧会を都度ブロックしながら、過ごしてきたのである。彼女がどれほど「強い人間」である必要があったのか、想像するだけでも恐ろしい。
あなたも想像して欲しい。
そんな思春期を過ごしたコロンビア系とポーランド系のハーフの少女の人格が、どのように形成されるかしら?
▼成功しても続く試練:
2021年にゼグラーはスピルバーグに見そめられて、映画デビュー作にして一躍トップ女優の仲間入りを果たした。念願のハリウッドスターだ。これまで以上にたくさんのファンが爆発的に増えた。ここまで典型的な「シンデレラ」ストーリーも珍しい。
しかし、その年度のアカデミー賞でオスカー像をゲットしたのは主演女優のゼグラーではなく、純血コロンビア系の女優で主人公の兄嫁を演じたアリアナ・デボーズの最優秀助演女優賞だった。
黒人が何か受賞するたびにポリコレブーストだと騒ぐ人達の言い分が真実なのか、それとも陰謀なのか確かめる術を私は持たないが、少なくともゼグラーはポリコレブーストの恩恵は受けられなかった。
何よりも、思春期からハーフ黒人として悩んできたゼグラーはここでもピュア黒人のライバルに負ける形になったことだけは事実だと言える。
それでもゼグラーの大型作品への出演は続いた。DC映画のヒロインや、ハンガーゲームの新作の主演と、順調にキャリアを積み上げていく。
そしてゼグラーはついにディズニープリンセスの椅子に座る権利を手に入れた。歌い手系YouTuberとして芸能キャリアをスタートさせた彼女にとって、それは一つの究極のゴールである。
しかし、そこで彼女の肌の色をめぐって大量のバッシングが飛んできた。
ディズニーファンの数は多い。それこそ、新人女優までチェックする熱心な映画ファンとは比較にならないほど層が厚い。それは見方を変えれば、頭が固すぎて度を超えた誹謗中傷をしてくる人数も爆発的に増えるということだ。
特にスノーホワイトはディズニープリンセスの中でも最古参で主力選手の一人である。しかも名前にホワイトが入ってる。ディズニーのどのイラストを見ても白雪姫の肌色は一番明るく描かれている。しかもタイミング的にも、実写版リトルマーメイドが大きな物議を醸した直後でもあった。
彼女への攻撃はどれだけ苛烈だったか、あなたに想像できるか?
その中で、与えられた役割を全うするためには、ゼグラーは「強く」なるしかなかったのだ。
▼問題発言を許すべきか:
ネットの向こうからぐだぐだ言ってくるアンチに「てめえの言ってることなんてあたしには効かねえよ」と笑い飛ばすくらいの度胸が必要だった。それを態度で示す必要があるとゼグラーは考えたのだろう。
しかし彼女は気づかなかったのだ。自分に誹謗中傷をふっかけてくるキチガイな奴らの向こう側には、あまり強く声を出さないけど「本当はスノーホワイトを黒人がやるのはなんか違うと思うんだけど、まあ会社がそういう方針なら仕方ないし、彼女も人気が出てきたから役をオファーされただけで、それで女優としてオファーされたなら断りたくはないよね、今後ディズニーに干されるのが怖いのもあるかもしれない。でも、やっぱり気になる」と悶々としていた人達の方がはるかに多かったことを。
そして、彼女はそんな人達を心底怒らせてしまった。
映画が女性の強さにフォーカスを当てる現代的な解釈の脚本だったことも災いしたと言えるだろう。「いつか白馬に乗った王子様が」という古典的な夢を見るディズニーファンや懐古厨な映画好きは今だってかなり多い。そういう人達も仲間に取り込んでいく、人付き合いの巧みさが欲しいところだったが、まだ若いゼグラーにそのスキルは十分無かった。もしくは会社や事務所が彼女を適切にコントロールすることに失敗した。
ゼグラーの発言は間違いだったし、正式に謝罪して、反省を見せて、今後は態度を改めるべきだと、私は思う。
しかし、この一件だけで絶対に彼女を許さないレベルで怒るのは、若者の失敗に対していささか大人気ない態度だと思う。
最近のSNSでは芸能人やセレブが問題行動や失言をすると、彼らが社会的に抹殺されるまで徹底的に叩く風潮がある。まるでTwitterで相手をブロックするような感覚でとことんやる人が多い。しかし現実世界はネット世界と異なり、実体があるし生活もあるし人生がある。現実世界で相手をブロックするように消し去るのは殺人あるいは裁判所による接触禁止命令に値するが、そんなことをするのは色々な意味で難しいし、安易にやって良いものでもない。
SNSと現実が混同した人が増えてきた社会で、Twitterからブロック機能を緩和する仕様変更を決断したイーロンマスクは、エスカレートする現実世界での攻撃性に待ったをかけるという意味で賢明だったかもしれない。
(了)
◆余談
本稿を準備中に目に入ったニュースだが;実写版スノーホワイトの名前の由来は、本人のルック(雪のように肌が白い)ではなくて、本人の業績(吹雪を生き抜いた)に置き換えられたらしい。
こうなるとガルガドット演じる魔女がスノーホワイトの何に嫉妬して毒殺まで画策する設定に変えたのか気になるわね。たしかに昨今の人を外見で判断しないポリコレ的価値観の時代に「美しさ」に嫉妬して行動するのはナンセンスだし、そもそもレイチェルゼグラーよりガル様の方がお美しいからね。(笑)