IMAXやDolbyCinemaは格差なのか?
なんかTwitterがまた燃えていたのでちょっと考察してみます。
▼経緯:
🔵SNSは「バズりあれ」と言われた
おそらく発端はpapiko氏の下記ツイートでしょう。
これまでディズニーはIMAXによる画面拡張をよく宣伝していましたが、リトルマーメイドに関してはあまり見かけなかった気がします。というか、現時点で検索をかけてもヒットしません。他の作品でも見当たりません。そもそもIMAX社がこういうビジュアル広告を止めた方針なのかしら。
ところがSNS時代ですから、本作を現地で観覧した人だからこそ語れる「まさかの可変式アスペクト」で陸上と水中を使い分ける凝った演出。思わぬIMAXのアドバンテージにTLは俄かに沸き立ちました。
papiko氏のツイートがバズった背景として、映画『リトル・マーメイド』がすでに賛否両論で炎上していたこともあるでしょう。本作は公開前から有色人種起用に関する議論や、その範疇を超えた誹謗中傷や罵詈雑言やディスも多かったので、それに対抗する形で擁護派も声高に主張する機運がありました。
なお全くバズりませんでしたが、私も引用RTで反応しました。
私はリトルマーメイド自体には中立的な立場(強く肯定も否定もしない)ですが、IMAXガチ勢(中級)なのでこういう技術的な話題は楽しく語ってしまいますね。
papiko氏が問題提起していた「アピールしない」のは、あまりIMAXを推しすぎると観に行けない地方在住者へのマイナスプロモーションになるからかしら、と一瞬バッド・フィーリングがよぎりました。
🔵SNSは義をもって対処された
さてしかし、その悪い予感は的中しました。
数時間後には地方在住のまー氏のお気持ち表明ツイートが注目を集め始めます。
なんというか、この方もやや被害妄想の匂いがあるというか、完璧主義ゆえの潔癖症気質なのか、それとも単純にこの方がもともと「完全版商法」に悪い印象があって何事も結びつけて考えてしまいやすいのか、でもリプ欄を見るとIMAXマウントは気にしないだの気にするだの相手に合わせて発言内容をコロコロ変えてるし、ここまで来ると本当に最初から観る気があったのかさえも怪しく、インパクトの強い『ベイビーわるきゅーれ』の画像を使ってTwitter民を煽る意図(IMAXでキャッキャしてる人達に冷水を浴びせたい)があっただけのようにも読み取れますが…
いずれにせよ、このメッセージ(=IMAX地域格差)に強く同調する人達が多く存在するのは事実です。
これに呼応する形でIMAXガチ勢(日本最上級※まいるず調べ)のあべんた氏も苦言を呈します。
少なくとも発端のpapiko氏はそこまで排他的な表現はしていませんが、それを拡散する人や、影響を受けて呟く人達のツイートがどんどんエスカレートしていた部分はあるでしょう。最初は純粋にIMAXを推すような「IMAXの設備を工夫して使った珍しい映画だぞ」とか「今回のIMAX活用法はレベル高いぞ」という声が、いつの間にか「IMAXで観ないと意味ないぞ」まで変容することは、140字で言葉足らずなTwitterでは十分に起きうる現象です。
あべんた氏も指摘していますが、特にブログやYouTubeで頑張っているインフルエンサーは視聴者の「損するかもしれない」という不安に訴えることでアクセス数を稼げるので、煽るような表現に陥りがちです。
そして受け手側も「言葉足らずで誤解を招くツイート」ほど反応しやすくなるので、それがTwitterのアルゴリズムでTLに表示される頻度アップに繋がり、ますます拡散炎上していきます。まさに炎上のスパイラル。
他にも映画アカウント界隈でたまにお見かけする方々が色々と発言されていました。
こちらもまたずいぶん攻めた分析というか、論理に飛躍がある考察ですね。まあ投稿時刻が異常なので或る程度は推して知るべしとも思いますが、でも言いたいことは感覚的には解ります。もっともご本人も「気がする」で留めていますので責めるつもりはありません。感想は自由ですから。深夜テンションなのかクソ早起きが日常な人なのか知りませんが。ただ、ここには発言者の認知バイアスがありそうと見て取れることは論じておきたいです。
発言者の月夜野氏はIMAXなどの特殊上映に強い興味と知識をお持ちだから他の人もそう考えるだろうと誤解しやすい(=これは人間なら誰でも起きうる認知バイアス)のですが、世間の多くの人はシンプルに興味も知識もありません。日本人の90%は年間で映画館に行く回数が0〜1回です。そういう人達からしたら自分で詳しく調べるのは大変だから、TwitterやYouTubeやTikTokでササっと検索して「よく知ってそうな人が良いと言ってる物に行こう、年に一度あるかないかの特別行事だし、多少出費が高くてもレンタカーの自動車保険みたいな物だろう、交通費や食事代に比べたら微々たるもんだし」くらいの軽い気持ちでしょうから、そういうレイヤーの人達に「自分の意見をしっかり持て」なんて言っても説得はできません。
月夜野氏の警鐘は、むしろ映画館ガチ勢、IMAXガチ勢、AV機器ガチ勢こそが胸に留めるべき教訓でしょうけど、そういう人達の多くは言われなくてもすでに心得ている(大きなお世話)し、これが通じない偏屈な輩はこの手の炎上では無視できるくらい少数だと私は思います。
これはほぼ同意です。映画館で多く観覧している人ほど、映画を物語で味わうことに理解があると思います。それを踏まえた上で、作品と立地と予算によっては特殊上映を選ぶという人が大多数なのではないでしょうか。ここでも懸念すべきは、普段めったに映画館に行かないけどIMAX炎上に釣られてしまう大多数の人達はどうすれば良いのかだと思います。
これも正論だと思います。現状が不満ならば、不満であることを社会で可視化していかないと、社会は変わっていきません。
▼考察:
さて、ここからは私の意見を書いていきます。
🔵リトルマーメイドの宣伝方針
papiko氏の「なぜアピールしないのか」という疑問については、私が冷静に考えて辿り着いた結論は、昨年の『ライトイヤー』の興行不振からディズニーがIMAXの強調にあまり宣伝効果がないと判断したのではないかということです。
そもそも『リトルマーメイド』なんて子供向けの映画ですから、親子連れ3〜5人で観覧するのに特殊上映の追加料金を積極的に出費しようとする保護者は少数派でしょうし、それよりは広く子供達に観てもらえるように純粋に物語やキャラクターをアピールしようとしたのかと。
ちなみに「うちの田舎にはIMAXが無いのに!」という恨み節や、それに伴う炎上が面倒臭いというのは日本に特有っぽい感じも受けますが、本作については海外メディアでもIMAXの画面拡張を宣伝している素材を見ません。なので世界的にIMAXをアピールしないのが最近のトレンドなのかと思われます。
その上で何故『リトルマーメイド』があそこまでIMAXに凝った演出(陸と海で画面サイズが変わる)なのは、シンプルに制作開始がコロナショックの前だったからでしょう。一所懸命に作ったのに宣伝してもらえなかったのは、タイミングが悪かったと結論づけられる…というのが私の推測です。
🔵IMAX地域格差
田舎ではIMAXシアターが無いとか、DolbyCinemaはもっと悲惨だとか、よく映画館の地域格差みたいにTwitterで言われますが、実際のところはどうなんでしょうか。
基本的に施設が豪華なシアターは都市部に集中しています。しかし都市部は田舎に比べて住宅環境が悪かったり、空気が汚かったり、水や食事が不味かったり、生活費が高くついたりするものです。それらのハードな条件の中で一所懸命生きてる人達なんですから、田舎より少しハイグレードな映画館くらいあっても良いじゃないか、というのが私の意見です。
要するに娯楽施設なんですから遊園地と一緒ですよ。日本全国に遊園地はありますが、ユニバーサルスタジオやディズニーリゾートのような特別な場所は限られていますし、それに文句をつける人は居ませんよね。「やっぱ遊園地は東京ディズニーリゾートが最高だ!TDRだけが本当の遊園地だ!」って興奮してTwitterに呟いてる人が居ても、赤の他人から集団リンチ的にお気持ち表明されることなんてほぼ無いですよね。(ごく身近な人からの嫉妬はあるかもしれませんが)
それは何故かって、東京や大阪に住むことの大変さを皆理解してて、東京や大阪に住むことと天秤にかければ優れた遊園地があることくらい許せるからですよね。同じことがIMAXやDolbyCinemaにも言えるだけでしょう。
🔵炎上の原因は地方民にあり?
このnoteでも紹介しましたが、非IMAX上映のことを「出涸らし」と表現して最初にバズったのはおそらく地方民なんですよね。Twitterで「出涸らし」と検索すると判ると思います。
加えて、その際にIMAXだけで画面サイズが上下に広がることを「完全版商法」とも呼んでいます。この2つのキーワードが強くて解りやすかったのがバズった大きな原因だと思います。
ただ、重要なのはIMAXだDolbyだと騒いでる都会民は、そんな通常上映を蔑むような発言を積極的にはしていないように見えることです。少なくともバズらせた当事者にはなっていません。
ここから、都市部の選択肢が豊富な人達は気持ちに余裕を持てるので無邪気にオタクライフをキャッキャ楽しんでいるだけで、むしろ地方でそもそも施設に不満を持っていたオタクが「自分が行かないこと」に理由をつけて正当化したい側面があるのだと私は思います。地方民とはいえ日本には数千万人いますから、ちょっと集まるだけでTwitterのトレンドなんて作ってしまえるわけです。
そもそも自分が本当に観たい映画だったら、近くにIMAXシアターがあろうがなかろうが観に行きますよね?仮に近所にシアターがあってもIMAXが満席なら通常上映でも良いから観たくなりますよね?
原因と結果が逆なのです。IMAXシアターが無いという理由だけで観に行く気持ちが失せるような映画は、そもそもそこまで魅力的じゃなかったということですよ。観に行っても、見に行かなくても、どっちでも良い当落線上にあるから悩むわけで。
つまり最大の責任は、、、
「周囲に配慮せずにIMAXマウントを取る人」でもなく、
「被害妄想でかまってちゃんなIMAX難民」でもなく、
「都市部にしか存在しないIMAXシアター」でもなく、
「作品そのものの魅力に欠ける映画」なのではないでしょうか。
了。
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