【初代ゴジラ】あらすじを三幕構成で読み解く
一幕(約20分)
一場:状況説明(謎の沈没続出)
日本近海で南海汽船に所属する船が連続して原因不明で沈没する。同社の子会社である海上警備会社に勤める尾形は仕事に追われ、恵美子とデートする時間もなくなる。
二場:目的の設定(ゴジラの伝説)
大戸島に取材に行った毎朝新聞社の萩原は、島の伝説の怪物ゴジラの伝説を訊く。その夜に嵐とともに何かが島を襲うが巨大な怪物としか思えない。政府は各科学分野の専門家を調査団として派遣する。そこには恵美子と尾形も居た。恵美子の婚約者芹沢は出港を見送る。
二幕(約50分)
三場:一番低い障害(ゴジラの目撃)
大戸島で調査団は白昼にゴジラを目撃する。
水爆実験で生まれたと思しき放射能を撒き散らす未曾有の怪物に日本全土が恐怖に包まれる。日本政府は直ちにゴジラの駆除を決定して海上自衛隊で爆弾を投下するが、これがゴジラを刺激して東京湾でも目撃される。
四場:二番目に低い障害(ゴジラの撃退方法とは)
日本政府からゴジラの撃退方法を聞かれて、山根博士は水爆を受けても死なない未知の生物を研究対象にすべきだと主張する。
一方で萩原は芹沢博士の研究がゴジラ対策に使えるかもしれないと噂を聞いて取材に行くが追い返される。恵美子は芹沢に尾形との交際を伝えるつもりで訪問するが、会話の流れで芹沢の秘密の研究を見せてもらい、恐怖で絶叫する。
五場:状況の再整備(一度目の東京上陸)
ゴジラが一回目の東京上陸。被害は小さく済んだが、日本政府は沿岸部に高圧電流の有刺鉄条網を敷設し、周辺住民は避難(疎開)する。山根博士はゴジラ抹殺に邁進する世相に悲しみ、ゴジラ退治を主張する緒方とも険悪になる。
六場:一番高い障害(二度目の東京上陸)
ゴジラが二回目の東京上陸。今回は陸上自衛隊の万全の準備も虚しく、東京は広範囲に火の海になる。
三幕(約30分)
七場:真のクライマックス(芹沢の決意)
破壊された東京と苦しむ人々を見て心を痛めた恵美子は、芹沢との約束を破り、尾形に相談する。二人は芹沢を訪ねて説得し、芹沢にオキシジェンデストロイヤーの使用を決意させる。芹沢は戦争利用を危惧して、研究成果や資料を全て焼却破棄して情報漏洩の可能性を断つ。
八場:すべての結末(東京湾での特攻)
芹沢はオキシジェンデストロイヤーで海中のゴジラ抹殺に成功する。そして情報漏洩の最後の可能性である自分自身を断つために、芹沢はその場で空気ケーブルを切り自殺する。
しかし古生物学者の山根博士に言わせれば、あのゴジラが最後の個体だった保証はどこにも無い。もし人類が水爆実験を続ければあのゴジラの同類がまた世界の何処かに現れるかもしれない。
FIN
▼解説:
本作は1954年(昭和29年)の作品で、もちろんハリウッド式三幕構成なるものが日本で認知される前ですし、そもそもハリウッドだってシド・フィールドが著書『Screenplay: The Foundations of Screenwriting』で紹介したのが1979年なのですが、およそ同じようなフレームに当てはめることができます。
一番教科書のセオリーに乗ってなかったのは四場と五場でしょう。もし今の時代に作るならば、順序を入れ替えるかもしれませんね。その方が観客が飽きさせずに映画を作りやすいと言えるでしょう。ただ物語の筋としてはゴジラが一度でも東京上陸する前の方が、恵美子が芹沢の研究を目撃するタイミングとしては最適だとも思えるので多少の工夫やアレンジは必要でしょうけれども。
実はこの映画は異なる2軸の物語が同時進行する形を取っています。それはゴジラ映画という看板からは想像もつかない、男女三人が織りなす恋愛ドラマなのですが、それはまた次の記事でまとめようと思います。
(了)
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