【碁盤斬り】あらすじを三幕構成で読み解く
まるで教科書のように綺麗な三幕構成(三幕八場)だったのでメモ。
以下は、初見時の楽しさを大幅に削いでしまうので、映画を未見の方は今すぐブラウザの戻るボタンを押していただきたく候。
▼あらすじ:
一幕(約40分)
一場:状況説明
柳田格之進(草彅剛)は訳あって貧乏な浪人。娘のお絹(清原果耶)と二人暮らし。囲碁がやたら強いが、賭け囲碁で萬屋源兵衛(國村隼)にわざと負ける。また別の日に格之進はひょんなことから源兵衛の店で茶碗の目利きをして源兵衛を助ける。
二場:目的の設定
格之進からの恩の着せ売りを危惧した源兵衛は、これまた事の成り行きで格之進に囲碁の師事を申し込み、二人の交流が始まる。格之進と源兵衛は親睦を深め、同時にお絹と弥吉(中川大志)も特別な仲になり始める。
二幕(約70分)
三場:一番低い障害
雨と共に格之進の過去を知る者が現れて格之進に復職を求める。真実を知った格之進は辞退するが、柴田兵庫(斎藤工)への復讐を遂げるために信濃へ向かうことを決める。
四場:二番目に低い障害
格之進に50両を窃盗した嫌疑がかけられる。格之進は切腹も考えるが、お絹が吉原に身を売って金策する。宿の女将(小泉今日子)は大晦日までお絹を店に出さないのでそれまでに返金すべしと猶予を与える。格之進は金を萬屋の弥吉に届けて、もし屋敷から50両が見つかれば弥吉と源兵衛の首を斬ると約束させる。
五場:状況の再整備
格之進が中山道の囲碁会を渡り歩いて柴田を探す。柴田は賭け囲碁で有名になり、大晦日の江戸両国での囲碁会に招待されていることを突き止める。
六場:一番高い障害
格之進が江戸に戻り、柴田と囲碁で勝負する。負けそうになった柴田は刀を抜いて格之進に斬りかかるが、格之進はこれに刀で応じて柴田を返り討ちにする。
三幕(約20分)
七場:真のクライマックス
源兵衛の屋敷で50両が見つかる。深く反省する源兵衛と弥吉を見た格之進は二人の首を刎ねる代わりに、源兵衛の碁盤を一刀両断する。これ、まさに碁盤斬りなり。見つかった50両で格之進はお絹を買い戻す。
八場:すべての結末
お絹が弥吉に嫁入りする。格之進は結納を見届けて、ひっそりを江戸を去る。
▼雑感:
このように、非常に綺麗な三幕構成なので、時代劇のプログラムピクチャーとして非常によく纏まっていると感じました。
ハリウッドの文脈にもしっかり当てはまるので、プロモーションさえ上手く行けばゴジラマイナスワンのように米国で一山当てられるかもしれませんね。
細かい点を挙げれば、気になることは結構多くありましたけど、そもそも「囲碁でバトルしようぜ!」の世界観なので、あまりシリアスに指摘するのもナンセンスなのかな、と思います。
…が、思いつくままに書いてみましょう。(笑)
一幕が完全に江戸時代版のおっさんずラブなのは、観ていて笑ってしまいました。草彅剛と國村隼がかわいいかったです。(笑)
二幕の斎藤工はキャラ造形がシン・ウルトラマンとほぼ同じで、それも笑ってしまいました。うーんシンウルの功罪か。(笑)
それまでずっと頑なに囲碁でバトルしてきたのに、二幕の最後になって急に派手なチャンバラになったのは、まあおそらくプロデューサー側からの強い意向だと思われます。きっと誰か声が大きい人が言ったのでしょう、時代劇なんだからそういう派手なシーンが必要だと。しかし、その切り返し具合が強烈すぎて、あんな10人近くも斬り捨てなくても良いでしょ、と私は思わずには居られませんでした。あんな斬り合いが始まれば普通に逃げそうな町人ばかりだったし、それとも当時の囲碁クラブっていうのはあのくらい気性が荒い輩の集まりだったのですかね?(笑)
真剣による斬り合いも映画として必要なシーンだとは思いますが、もっと渋い演出にしてほしかったな〜。一瞬で決まる、みたいな。斎藤工の渾身の太刀が外れて碁盤に引っ掛かり、もたついたところを草彅剛の脇差がストンと腕を切り落とす、みたいな画を見たかったですね〜。それだとラストの碁盤斬りの場面との対比にもなって面白いと思うのですが。流石に映画のタイトルとそれまでの話の流れから草彅剛が二人の首を刎ねずに碁盤を叩き斬ることは誰でも予想ついたでしょうから。(*もちろん原作の古典落語をご存知の方々も;笑)
三幕で格之進が江戸を去った理由がよく解りません。誰かコメントで教えていただけると幸いです。自分からも感想や考察を読み漁って、いろんな意見を読んでみたいと思います。
私なりの仮説は:刀じゃなくて囲碁でバトルをつけるさすらいの浪人ここに爆誕せり!好評だったら続編も作りますので乞うご期待!…という感じでシリーズ化への布石って感じです。
そう、布石。… … … 囲碁だけにね⚪️🟤😜
●追記:
本作の元になった落語(古今亭志ん朝)を動画視聴した感想はこちら。(5月20日付)今回の映画版で大幅に加筆されたポイントがどこか判りました。
小説版(映画の脚本家が執筆)を読んだ感想はこちら。(9月8日付)三幕で格之進が旅に出た理由が正確に判ったほか、小説版ではわかりやすかった格之進のキャラが映画版では非常にわかりにくくなっているポイントも見つけました。
(了)
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