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映画Sucker Punchの日本語タイトルを考えてみよう【エンジェルウォーズ】

ザック・スナイダー監督映画『Sucker Punch』は日本語タイトルで損しているような気がします。

『エンジェルウォーズ』って言われても、スターウォーズのB級パロディ映画かな?もしかしてセクシー映画かな?って思っちゃう人が居ても無理ないと思うんですよね。

ちょっと代案を考えてみましょう。


▼エンジェルウォーズは妥当なのか?

先ずワーナーブラザースジャパンがつけた日本語タイトルについて、真面目に評価してみます。

この映画は最初に登場人物のモノローグから始まります。

原文:
Everyone has an angel. A guardian who watches over us.
日本語字幕:
誰にでも天使エンジェルがいる。守護天使が見守ってる。

はい。ここで第一声から「エンジェル」と出てきました!

それでこの映画は戦闘シーンがメインビジュアルだと言えますから、そのエンジェルが戦場で暴れまくるということで「エンジェルウォーズ」とつけたくなる気持ちは解らなくはありません。

しかし残念ながら、ちゃんとセリフを最後まで読むと、この日本語タイトルは全く逆の意味だったことが判ります。

原文:
Everyone has an angel. A guardian who watches over us. We can't know what from they'll take. One day, old man. Next day, little girl. But don't let appearances fool you. They can be as fierce as any dragon. Yet, they are not here to fight our battles… but to whisper from our heart, reminding that it's us. It's everyone of us who holds the power over the worlds we create. 
日本語字幕:
誰にでも天使エンジェルがいる。守護天使が見守ってる。様々な形に姿を変えて。ある日は老人。次の日は少女。外見は優しくてもドラゴンのように荒々しい。でも敵と戦ってはくれない。ただ心の奥からあなたに囁くのだ。誰もが世界を変える力を持っていると。

おわかりになりましたよね。エンジェルは戦わないんですよ!(爆笑)

これ、映画の根幹に関わる重要な解釈ちがいでして。

この日本語タイトルのせいで理解が難しくなってる可能性さえあります。

実はこのモノローグを語っているのは主人公のベイビードールではなくてスウィートピーです。つまり映画の結末でスウィートピーが施設から脱出するのを手助けする天使がベイビードールだったということを暗示してるんですよ。もちろん初見時はそこまで見通せないでしょうけど、わざわざ誤解を促進するタイトルにする必要は無いですよね。

そういう意味でも、この日本語タイトルは失格です。(断言)

*右端の大剣を持っているのがスウィートピーです。

▼そのままサッカーパンチで良かったか?

では英語の発音をそのまま日本語表記するのはどうでしょうか。

まあ普通に書くと「サッカーパンチ」になりそうです。

この原題の『Sucker Punch』は本来「不意の一撃」という意味です。弱いと思っていた相手から油断していたら一発思わぬヒットを喰らった時に使う言葉です。しかし、日本人には馴染みがありません。

しかもサッカーもパンチもそれぞれ和製英語のように意味が固着化しているので、使いづらかった部分もあると思います。日本人の多くが、サッカーは「蹴球」という意味で定着していますし、パンチは「拳を使った打撃」という意味以外考えられないと思います。ちなみにこの映画の少女たちはおそらく一度もパンチ攻撃をしません。刀剣か銃かキックかビンタだけだったと思います。あ、一度だけありましたね、支配人がカードで負けた客をパンチで殴る場面が。(笑)

(記憶にないだけで未確認なので、もし他にもあったらごめんなさい)

しかも2011年当時はまだ某スポーツカンフー映画がヒットしてから時間が経ってなかったので、もし私が決める立場に居たら「それは、なんか少林サッカーみたいだから止めよう」と会議で意見しそうです。

ということでサッカーパンチはあまり良い案だとは言えなさそうです。

▼代案を考えてみよう!

英語のsucker punchに一番近そうな日本語(和製英語を含む)は…

不意の一撃
不意打ち
思わぬ一発
会心の一撃
クリティカルヒット

…あたりになりそうですが、アクション映画のタイトルとしてちょっと格好良くはないかもです。個人的には『不意打ち』とか結構好きですけど。(笑)

ここは敢えて劇中の要素から独自につけるのが良いでしょう。

この映画は、ベイビードールという名前の少女が4人の仲間と一緒に精神病院で5つのアイテム(地図、炎、ナイフ、鍵、そして不明のあるもの)を集めて脱走しようとする物語ですから…

ベイビードール
少女たちの戦い
少女たちの脱出
脱走計画
レノックス精神病院からの脱出
エスケープ・フロム・レノックス
エスケープ・フロム・ナイトメア
ダンシング・イン・ザ・ドリーム
ダンシング・ファナティクス
ファイブ・シングス
ファイブ・シングス・トゥ・コレクト
マップ・ファイア・ナイフ・キー・アンド・ワン・ラスト・シング
ワン・ラスト・シング
5つの集めるべきもの
トリック・ショット
妄想迷宮
妄想病院

一番安パイなのは『ファイブ・シングス』ですかね。

まあ『フィフス・エレメント』とほぼ同じですけど。(笑)実際に5つ目の要素が何かがラストで明かされる(主人公が気付く)ので、映画の構造的にも結構似ているのでね。

もしくは、それを逆手に取って、『ワン・ラスト・シング』も結構良いと思います。ベイビードールが集めるべき5つのアイテム、その最後の一つは何かのかという問いかけがそのままタイトルになりますし、妄想の中で彼女たちを助けてくれる上官が必ず言うセリフでもあります。

Oh, yeah. One last thing.

それ以外ではどうするか。

とりあえず主人公の名前を置くタイプの映画は多いので『ベイビードール』も結構有力な候補になるでしょう。原語タイトルがFirst Bloodだった映画は日本語タイトルで『ランボー』でしたし、What's Eating Gilbert Grapeも『ギルバート・グレイプ』になってましたから、それらと同じパターンです。ただし「ベイビードール」という単語はキュートすぎて、エンジェルウォーズと受ける印象があまり変わらないので、私の中では少し弱いです。

個人的には『エスケープ・フロム・レノックス』を推薦したいですね。レノックスは精神病院の名前です。この映画は妄想シーンが複数ある上に、現実世界の精神病院に重ねて売春酒場のシーンでよく語られるので、主人公の目的が見えにくくなりがちです。タイトルでレノックスという屋敷からの脱出が目的であることを最初に観客の脳内に植え付けることは結構良い効果があると思います。

(了)

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まいるず
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