【市子】時系列を整理して、原作舞台の情報も絡めて、考察する【川辺市子のために】
アマプラで視聴したので考察します!
原作舞台についても調べたので、その情報も整理します。
ミステリー作品なので、本編を未見の方はブラウザバックを強く推奨します。
ネタバレ注意🚨🚨🚨
▼映画あらすじ(時系列で再構成):
2015年8月13日
川辺市子がプロポーズされた翌日に失踪する。
2015年8月21日
長谷川は後藤刑事から「1987年生まれの川辺市子は存在しない」と告げられる。
2015年8月28日
長谷川が独自に市子の捜索を始める。
長谷川はキキから市子の過去を訊き出す。
長谷川は後藤の捜査に同行して情報を訊き出す。
・さつきの証言
・梢の証言
・山で発見された白骨死体は川辺月子
・川辺月子は2歳で重病になっていた。
・川辺市子は月子の名を騙って通学していた。
長谷川は北の任意事情聴取に立ち会う。
長谷川は市子の荷物から川辺月子の保険証と4人の家族写真を見つける。
長谷川は独自調査で北から真相を訊き出す。
山本さつき
1999年7月(当時小学六年生)
市子ちゃんだと思ってたら3歳年下の月子ちゃんになってて意味不明w
(*市子が妹の月子になりすましていたと疑っている)
幸田梢
2000年9月(当時小学四年生)
男子から守ってくれた月子(実は市子)と仲良くなる。
月子(実は市子)は明らかに貧乏そう。
小泉に月子(実は市子)の自宅から追い出される。
月子(実は市子)の自宅を見て異常性を察知して逃げ出す。
(*市子や小泉がカーテンを閉めて月子を隠す描写あり)
北秀和
2008年7月(当時高校三年生)
月子(実は市子)に惚れてストーカー行為を始める。
田中宗介
2008年7月
交際していた月子(実は市子)の心が離れるのを感じる。
月子(実は市子)の自宅を見て異常性を察知して逃げ出す。
川辺なつみ
2008年8月
筋ジストロフィー症の月子を市子が殺す。
それで月子の死亡を隠蔽するために、小泉に書類偽造させる。
北秀和(2)
2008年9月
月子(実は市子)を花火に誘う。
月子(実は市子)と小泉の話(月子殺害)を聞いてしまう。
月子(実は市子)の小泉殺害を目撃。
月子(実は市子)から正体を明かされる。
夜中に小泉の死体を線路に放置。
そのまま市子が行方をくらます。
吉田キキ
2009年5月
市子とケーキ屋を始める夢を共有する。
市子から「人を殺したことがある」と告白される。
井出
2010年夏
市子が就籍と指紋採取がネックで戸籍取得を断念する。
その数週間後に北秀和が「市子を探している」と現れる。
北秀和(3)
2010年12月
執念でバイト中の市子を発見するも拒絶される。
長谷川義則
2012年8月
祭りの屋台で買った焼きそばを市子に分けてやる。(出会い)
北秀和(4)
2015年8月
逃げてきた市子を一時的に匿う。
自殺希望者(戸籍提供志願者)の冬子が家(市子)を訪ねてくる。
冬子を車に乗せて市子の待つ海に向かう。
夜の海の埠頭で市子と冬子と三人で集まる。
長谷川義則(2)
独自調査でなつみから真相を訊き出す。
市子を探す旅路は続く…
警察署で後藤が長谷川に電話をかけるが長谷川は無視する。
自動車の海中転落事故が報道される。
犠牲者は若い男女二名で身元は不明。
FIN
▼大まかな解釈:
ミステリー:
川辺市子はなぜ失踪したのか?
答え:
長谷川にプロポーズされたけど、婚姻届を出そうとすれば戸籍を持ってないことがバレてしまうのと、過去に殺人を犯した自分が幸せになる権利はないと思ったから、逃げた。
結論:
しかし、長谷川はそれでも市子に会いたいから追い続ける。
…というのが、確実に正しいと言える範囲でしょう。
▼ラストの解釈:
海中転落事故と、電話の内容が謎として残ります。
海中転落した2名は身元不明だとテレビで報道されますが、埠頭に集まった市子・冬子・北の3名のいずれかなのは明らかです。
そして電話ですが、おそらく時間差で和歌山県警と大阪府警は男女どちらかの身元を特定しており、それが長谷川の関係者だったので、後藤刑事は長谷川に電話したのだと思われます。(フェリーで帰る途中だった長谷川はいま電話に出ると川辺なつみの住所特定につながると考えたのか、電話に出ませんでしたが)
よって、死亡した男性が北秀和であるのは確定です。
では同じ車の女性は、市子か自殺希望者の冬子のどちらだったのか。
●市子シリアルキラー説
一つは過去を精算するために、市子が北を殺した説です。
車に乗っていたのは、北と冬子です。
市子は冬子を殺して戸籍を背乗りしつつ、彼女の過去の秘密を知る北を消す作戦を実行しました。北に冬子を殺させて、その最中などに隙をついて北を殺したか、あるいは北の罪悪感を責めて自殺に追い込んだ、というのがこの説の筋書きです。
市子「私に幸せになって欲しいなら、過去を知ってるアナタは死んで」
市子の悪魔のような女を最大限にフィーチャーしたこの説。
個人的には、この説はあまり当たってない気がしています。
市子にできるのはセックスを餌に男に悪事を働かせることだけだったので、さすがに自分で北を殺してそのまま車ごと海に落としたり、北をマインドコントロールして自殺させるのは、不可能だったと思います。
市子の過去を知って探し続ける長谷川を尻目に、全く別人の戸籍とアイデンティティでシリアルキラー(連続殺人鬼)として覚醒した市子がのうのうと生き続けるのも、なんか不自然ですし。
というか、ありえないですけど『市子パート2』があれば、今度は市子が過去を知る長谷川を殺しに行く物語になりそうです。
まさかの貞子シリーズみたいなトンデモ展開。(笑)
●北による無理心中説
もう一つは、絶望した北が無理心中した説です。
車に乗っていたのは、北と市子です。
一つ重要なポイントがあって、車に乗っていたのが市子だからといって、冬子が生きているとは限らないということです。
そもそも自動車ごと海中転落などしたら、死んでも、すぐに身元が調査されてしまいますので、自殺補助としてはあまり良い方法とは言えません。どこか山奥などにひっそりと死体を隠すはずです。
よって、私の推理は以下です。
市子と冬子の勢いに押されて、意思薄弱な北は冬子の自殺に加担してしまいます。市子も先日まずは北の家に逃げ込んだくらいには北を信頼しているので、今後は川辺市子ではなく北見冬子として、北と一緒に生きていく決意をしたのでしょう。
しかし、自責の念に苦しむ北。俺が守ると約束したのに市子はこんな犯罪に手を染めて。もうこうなってしまっては市子を救うことはできない。
思い詰めた北は、そのまま自動車を海中転落させて市子との無理心中を図り、それは成功したのでした。
これは考えうる中で最悪のバッドエンドかもしれませんね。市子をありのままに受け入れようとしていた長谷川は想いを果たせぬまま、市子は永遠に消えたのですから。
ただ、後藤刑事の電話をするときの表情が、なんとも虚無で、あれは死体の写真を見た後藤刑事が市子だとわかったので、テレビや報道よりも先に長谷川に教えてやろうとしたのかなと、私は思います。
●私の結論
ほぼ繰返しになりますが、一応まとめておきます。
それが私の結論となります。
北に言わせれば、愛する市子にこれ以上罪を重ねてほしくないと思って、市子を殺すことが救いになる、とか考えそうですから。
ただし、パート2を作るなら、市子がサイコパスでマインドコントロールさえ使いこなすシリアルキラーの魔女だったという線にして、続編では冬子の戸籍で暮らしていた市子を見つけた長谷川を市子が殺すストーリーにしてほしいです。(笑)
▼川辺みなみの経歴を詳しく:
警察がホワイトボードにまとめてくれてました。(笑)
2回目以降の視聴だととても解りやすく見えますね。
この他にも、後藤の警察手帳も一瞬ですが彼が事情聴取した人物にまつわる捕捉情報が満載でした。例えば、幸田梢は一度月子(実は市子)の家に遊びに行って追い出されたあの日以来、その後は月子(実は市子)とずっと口をきかなかったとメモしてあります。切ないですねー。
▼舞台版との違い:
映画『市子』は2023年の公開ですが、元になったのは2015年の舞台『川辺市子のために』です。
映画版と舞台版の一番大きな違いは、映画版では市子が意図的に呼吸器を止めて月子を殺しました(故意の殺人)が、舞台版では市子が不注意で呼吸器の操作ミスで月子を事故死させてしまったこと(過失致死)です。
私も舞台は見てないので、ネットで探した断片的な情報だけから判断していますが、当時の市子は高校に進学して初めて男子と交際して、それが楽しすぎるあまり月子へのケアがおろそかになって事故を起こしてしまったようです。
なので、映画の中でも殺人を実行するシーンで、ずっとカメラの方を真っ直ぐ見つめてくる市子が強烈でしたが、それは大胆なアレンジだなあと思いました。
いや、でもよく読んだらどっちとも取れるなあ…ただ映画版では宗介と交際を続けるのが難しくなるくらい真面目に介護に奉仕してたので、ニュアンスは異なりそうです。
カッなって小泉を刺殺したのは映画と舞台で同じと思われますけど。
しかし、どうやらそんな簡単な話ではありませんでした。
▼舞台版には続編あり:
2015年の舞台が高評価だったので、2018年に続編となる舞台『川辺月子のために』が上演されました。
この続編では、衝撃の展開にするために、なんと小泉雅雄にもツキコという名前の娘が居たと明かされます。(すみませんが、これは話だけ聞かされると笑っちゃいますね;笑)
舞台『川辺月子のために』は自動車の海中転落(被害者が誰なのかは明示しない)があることからも、映画版『市子』はこの2編の舞台を合わせる形で再構成されたようですね。
さすがに小泉にもツキコという同じ名前の娘がいた設定はボリューム過多なのでオミットされたようですが、そのために映画では市子の残虐性が際立ち、また唐突な第三者キャラクターの登場につながりました。
つまり映画では赤の他人である冬子がひょっこり現れましたけど、舞台では実の姉妹である市子と月子がたった一枚だけ残った戸籍をめぐって何かしら衝突をしたのでしょう。うーん、なんて衝撃的で救いようのない物語なのでしょうか。ノベライズしてくれたらちょっと読んでみたいかも。
(了)