なぜカプチーノは「カプチーノ」なのだろうか?①
① カップッチョの謎
発端:アッシジのカップッチョおじさん
イタリアのアッシジで、小さな民宿に泊まった時のことである。
アッシジは、キリスト教の聖人、聖フランチェスコゆかりの教会がある町だ。
そのため、巡礼者が数多く訪れる。
私の泊まっていた民宿も、そんな巡礼者を受け入れる宿だった(もっとも、私は巡礼者ではなかったが)。
この民宿の朝食どきの風物詩は、白髪の、まるっこい風貌のおじさんだ。
朝食を食べていると、このおじさんがのそのそとやってきて、各々の飲み物のオーダーをとっていく。
私は毎回カプチーノを頼むことにしていた。
なぜカプチーノか。
それはイタリア人の朝食のお供といえばカプチーノだ、と聞いたことがあったからだ。
郷にいれば郷に従え、というわけである。
オーダーをすると、おじさんは、うむ、と頷き、キッチンにのそのそと戻っていく。
そしてしばらくすると、
「カップッチョ!カップッチョ!」と呟きながら、カプチーノをのそのそと運んでくる。
言葉の響きにおじさんの丸っこい風貌も相まって、なんだか可愛らしい。
その後も「カップッチョ」という響きは何となく印象に残り続けた。
日本でカプチーノを頼んでも、心の中で、「カップッチョ、カップッチョ」と反芻してしまう。
だが、カプチーノではなく、カップッチョと呼んでいたのはなぜだったのだろうか。
方言か、それとも一種の幼児語で、私のような小童が一丁前にカプチーノなんて頼むもんだから、ちょっとからかっていたのか。
カップッチョを探せ
平成一桁生まれの私にとって、何かが気になってしまったら取るべき行動はただ一つ。
とりあえず、ググるしかない。
だが、Google大先生に、「カップッチョ」とは何か教えをこうてみても、見当違いのものばかりが出てくる。
安直に調べる方法は通用しないらしい。
それなら、と、私は手元にあったイタリア語の辞書で調べてみることにした。
おじさんは業界人?
カップッチョ(cappuccio)には三種類の語釈が掲載されていた。
一番頻度が高いであろう、最初の語釈には「頭巾」や「帽子」とある。
多分これではない。
二番目を見てみると、キャベツの一種。
キャベツ太朗でさえキャベツではないのに、カプチーノがキャベツのはずはない。
諦めかけて三番目の語釈をみると、そこにお目当てのものがあった。
「俗語」を意味する括弧書きがあるから、どうやら方言ではないようだ。
シースー的な感じなのだろうか。
あのおじさんは業界人だったのか。
新たな疑問
そんなわけで、カップッチョの謎についてはひとまず解決した。
だが、じわじわと別の疑問が頭の中に広がってくる。
それは、そもそもカプチーノとはどういう意味なのか、という疑問だ。
カフェ・オ・レやカフェ・ラテのように「カフェ」という言葉もつかない。
しかも、その一方で、牛乳入りコーヒーという意味ではキャラ被りしている。
カプチーノとはどういう意味で、どういう由来があるのか。
私はもう少し調べることにした。
そうすると、おじさんの俗語「カップッチョ」が、実は的を射た表現だったことがわかったのだが…
それについてはまた次回お話ししよう。
(つづく)
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