地磁気のS極とN極が時どき入れかわるというのは、本当ですか?どうしてそんなことが分かるのですか?もし、入れかわったら、事故や、災害がおきたりしないか、心配です。
Akyuさん(小学4年生)からの質問
(回答:海域地震火山部門地震発生帯研究センター 金松)
Akyuさん、地磁気のS極とN極が時々入れかわるというのは本当です。地球の歴史から言ったら確かに“時々”ですが、実は一番最近でも77万年前という古さになります。ですので人類が誕生してからはまだ起こっていないくらいの“時々”になります。それより前は数十万年から数百万年程度の間隔でS極とN極が入れ替わっていたという気が長い話です。
S極とN極の入れかわりが記録されている例として、地層の記録があります。Akyuさんは地層がどうやってできるか習いましたか?泥や砂利が海底や湖の底にたまって固まって地層になります。泥や砂利にはマグネタイトという方位磁石の性質を持った鉱物がまざっています。最初に海底や湖底にたまった時には泥や砂利は、まだふわふわしていますが、その中のマグネタイトは方位磁石のごとくN極の方向に動いて揃います。しばらくたつと泥や砂利は固まります。固まるとマグネタイトはもう動けなくなり、N極の方向が地層に記録された事になります。地層が順々にできるのでこれを測定装置で磁気の方向を順々に測っていくと、はるか昔にS極とN極の方向が何度もおこっていた事が分かります。千葉県の市原市には77万年前のS極とN極の入れ替わりが記録された地層があります。最近世界に認められ、この時代はチバニアンという国際的に有名な地層になりました(興味があれば調べていてください)。
おっしゃるように、地磁気は宇宙からやってくる有害な紫外線や宇宙線から私たちを守るバリアの役目をしています。そしてS極とN極の入れ替りの時には、地磁気は弱くなり、私たちの社会に影響を与えると考えられています。地球に降り注ぐ宇宙線が増え、送電線や衛星ネットワークを破壊してしまうのかもしれません。ただS極とN極の入れ替わりにかかる時間は数千年程度と考えられており、少しずつゆっくりで、急に起こることはなさそうです。世界中には100以上もの地磁気観測所があり、地磁気がどのように変化しているか細かく観測されています。こういった観測からS極とN極が入れ替わりそうな気配があるか、変化を見ていれば、ある程度予想ができます。また数千年かかるとすると、人類はこれにそなえる時間は十分あると思うので、今はご心配なさらなくとも大丈夫と思います。
地磁気のS極とN極の入れ替わりについては、そもそもどうして起こるか十分に分かっていません。他にもまだ分からない事も多く、S極とN極の入れ替わるところまではいきませんが、S極とN極が赤道近くまで大きくふらつく中途半端な不思議な現象もあります。研究者はこういった不思議な地磁気のふるまいを理解しようとしています。高知コア研究所には過去の地磁気の研究に役立つ地層がたくさん保管されています。ドリルで掘り抜かれ円柱状になったコアという試料が研究のための貴重な試料となっています。
<参考ウェブサイト>
・ 気象庁 地磁気観測所 地磁気の基礎知識
・千葉県 誕生!チバニアン