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うつ病に対する想像力の欠如に遭遇した話

まずもってお断りしておきますが、僕は今心療内科に通って抗うつ薬を処方されてはおりますが、正式に「うつ病」という診断名が出ているわけではありません。

ですので今回のお話は、僕が「うつ病患者という立場で感じたこと」とはニュアンスが異なるかもしれません。

しかし、僕はこの2~3ヶ月の間にうつ病に関することはかなり情報収集をしてそれなりに知識も理解も(以前よりは)深めたという自負もありますので、その上で感じたことを書かせてもらいます。

何度か書いておりますが、自宅から自転車で5分もかからないところに行きつけの居酒屋さんがあり、(緊急事態宣言等が出ていない)平常時には僕は週に2~3回はそこに飲みに顔を出しています。

僕の住んでいるところは歴史は古いけど今はさびれている田舎町で、そういった居酒屋さんに集まる定連さん達はみな「近所のオジサン・オバサン」達がメインです。

その場では、誰も僕の職業上の立場やバックボーンなども知りませんし、僕はそこの居酒屋だけで通用するあだ名で呼ばれているので、誰も僕の本名すら知りません。

そんな空間でどうでもいいバカ話をするのは、なかなかにリラックスできる時間であるのは間違いないのですが、土地柄や客層から、そこには「民度」とか「デリカシー」といったものはほぼ期待出来ません。

ある晩のことです。

古くからの友人同士らしい中年男性三人がその店のカウンターで飲んでいました。

席一つ空けて僕一人座っていました。

必然的に3人の会話はよく聞こえてきます。

話題は、3人の共通の知り合いが「うつ病」にかかったという話でした。

当初は「あいつもう死んだような顔しとったぞ」と、多少の同情を含めた口ぶりではありましたが、そのうち一人がこんなことを言います。

「でもあいつの立場で鬱になるんだったらオレなんかとっくにうつ病になっとるわ」

あとの二人はそれを聞いて笑うと「そうだわ!それを言うんだったらオレも鬱だわ!」「いや!オレなんか超鬱!!」といって尚更大きな笑い声をあげます。

典型的なうつ病に対する無理解とマウンティングです。

職業上の立場もあるとは思いますが、お店のママも「それだったら私だってうつだわ!」と合わせて笑っています。

ちなみに僕はこのママにも今回の失恋の愚痴は多少喋ってまして、「もう今病院で抗うつ薬と睡眠薬貰ってなんとか過ごしてますわ」と話した時は「そんな薬やめなさい!!いい?人間は3日も寝なかったらもう自然に眠れるんだってば」と諭されたこともあります。

僕は「それが眠れないから困ってるんですってば・・・」という言葉を飲み込み、苦笑いするしかありませんでした。

その3人の男性の話題は、うつ病の友人のことはすっかり忘れ去られたかのように他のことに移りました。

僕は彼らの「うつ病」に対する知識の無さ、何よりも苦しんでいるであろう人への想像力の無さにため息はつくものの、それを諭すことまでは(店の空気を考えて)出来ませんでしたしする気もありませんでした。

今僕が、居酒屋の隣の席で飲んでいる初対面の人に「自分がうつ病である(もしくは過去に患ってた)」という話をされたらどう対応するだろう?

まずは「それは辛かったですね・・・」と一言目には言ってあげたいです。

そして相手が構わないのであれば、その時の苦しみや、治療の経緯などについても耳を傾けたいです。

正直この三ヶ月、僕にとっては「人生最悪の三か月」であることに間違いはなく、こんなにも重苦しく絶望感を抱えたまま日々送ったことは未だ経験が無いのですが(本当に苦しいです・・・)、もしもそれでうつ病の人に少しでも寄り添えることが出来るようになっているのであれば、そこにこの苦しさの意味を見出すしかありません。



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