塾という「場」 9 ー生徒の「まるごと」に寄りそうー 対話
(iv)対話
自分を知り、深め、押し広げていくという世界の立体化。
それは、異なる視点を獲得し、言葉に至らない思いをすくいあげ、自分の物語として修正し編みなおしていくということです。それは、対話的プロセスによって駆動しています。
生徒、指導者ともに、他者に対しても自分に対してもつねに対話的に接するということが重要です。
「対話的」というのは、それぞれがそれぞれのリアリティを超えて、経験を重ね合わせることによって、新たな視点を獲得していくことにつながります。哲学的な問答という対話的プロセスをもつことで、自分の視点を相対化して、世界を多視点で立体化していきます。
そうした対話的プロセスに、前述のネガティブ・ケイパビリティは欠かせません。
哲学対話、オープン・ダイアローグ、インナー・モノローグ、p4c等々、昨今、教育の現場でも「対話」が注目されています。
これは、対話というものが、「他者」を自己の内部で経験する手段になるからです。
私たちは、「多元的な自己をつくっていく」「あいまいな自己になっていく」ことで、しばしばマイナスに働いてしまう固定的な関係を、変化する自分や環境に合わせて編みなおすことで生きのびてきました。その編みなおしは、対話的プロセスのなかで成し遂げられるのです。
そして、この対話的プロセスに伴う(自)他との開かれた関係には、治癒的な効果があるのです。