『宙わたる教室』で再び感じる俳優小林虎之介の魅力
このドラマを見始めた頃は、このドラマでこんなに虎之介くんをたっぷり見られるとは思っていなかった。主人公は窪田正孝演じる藤竹叶先生なのだが、岳人なしでは話が進まないくらい、魅力的な中心的人物になっている。
ドラマはとても好評のようで、特に初っ端の虎之介くんの柳田岳人に焦点を当てた第1話で、彼の演技に魅了された人は多かったようだ(私が虎之介ファンとして贔屓目で好意的な感想を拾い読んでいることを差し引いても、好評であるように感じる)。
華やかさはないけれど心に染みるいいドラマで、さらに彼がいい演技を見せて注目されているのが本当に嬉しいことだ。
私自身『宙わたる教室』第1話で岳人に引き込まれて、何度も見直した。岳人を演じる虎之介くんが予想以上にとにかく魅力的だった。私は『ひだまりが聴こえる』で小林虎之介という俳優に出会えたわけだが、それはとても幸運だったかもしれないと、『宙わたる・・・』第1話を何度も見直しながら感じた。
『ひだまりが聴こえる』は一応ジャンルとしてはBL作品ということになっているが、切ない恋に加え、人と人とのとても細やかな心の交流や様々な価値観、人生の選択について描かれていて、とてもいい作品である。
実は『ひだまり・・・』の番組のサイトでドラマ放送開始前に虎之介くんの写真を見た時はあまり魅力を感じなかった。眩しいほどに爽やかな笑顔と”ノートテイクで聴覚に障害のある友人を助ける”という太一の行動があまりにも”いい子”の設定に見えて、あまり魅かれなかった。
ところが『ひだまり・・・』第1話を見て、このドラマにはまった。BLドラマで1話からハマるという事は私はほとんどないので、驚いた。主演の虎之介くんと中沢元紀くんがとにかくよかったのだ。物語がすすむほど、BLドラマとかなんとかいうより二人の演技力に心を掴まれた。
BLドラマを見るときに、きれい、かっこいい、美しいという見た目に惹かれたり、二人の見た目の組み合わせが気になることもよくある。でも、『ひだまりが聴こえる』はそうではなかった。二人セットではなく、二人の俳優のそれぞれの役者としての強い魅力にまず引き付けられた。
そして、『宙わたる教室』を見始めた。
虎之介くんの演技は、まだ荒削りな感じはある。そこがいい。
出来上がりすぎていない不安定さというか、揺らぎみたいなものを感じる。生な感じ。定型がないというのか、うまくいくかいかないかやってみないと分からないような、でも、うまくいったら、誰も予想していなかったような物凄いものが出てくるような感じ。そしてその荒削りさが『ひだまりが聴こえる』の太一にも、今の柳田岳人にとても活きている気がする。
キャリアを積んでいけば、この荒削りさは大人しくなり洗練されていくのかもしれない。それは楽しみでもあり、同時に少しだけ残念でもある。でも、もし彼の演技がより安定した方へ変化していくならば、良くも悪くも洗練されて自分のスタイルが出来上がってしまう前の、まだ決まった型を持たないかに見えるこの虎之介くんの揺らぐ生な演技を、今こうしてリアルタイムでみられるのは、本当に幸運だと感じる。数年後に”彼の若かりし頃のみずみずしい演技”としてではなく、今のこの時に彼が演じているその荒削りな生々しい演技を、同じこの時に自分が受け取れることがとても嬉しい。
「いい俳優だなぁ」と思っていた人が消えていくのを見ることが、時々ある。犯罪に関わって道を踏み外す人、関係者とうまく行かずにスクリーンから遠ざかる人、スキャンダルに足をすくわれる人。大ファンというわけではなくても、その人の素晴らしかった作品や演技を思うと、なんとも言えない虚しさでいっぱいになる。誰にでもできることではないのに、誰にでも訪れるチャンスではないのに、いい作品に出演するチャンスを得てその中で素晴らしい演技を見せてきたというキャリアを台無しにして消えていく人たち。
彼はまだ若い。これから大きく活躍する可能性がある。様々な作品で主役を張れる人、脇にいても主役とともに輝ける人、作品をより魅力的にするひとだと感じる。彼に魅了された多くのファンや関係者が飛躍を期待しているだろう。私もその一人。
どうか世間の怪しいもの、不健康なもの、邪なものにかかわらず、巻き込まれず、よい作品に出会いながら、幸せに、健康に、俳優としてのキャリアを着実に積んでいってほしい。
私がおばあちゃんになった時に「私ね、小林虎之介が若い頃からず〜っと好きなのよ〜」と言わせてほしい。