
『ふったらどしゃぶり』1話~3話(日本/テレビドラマ/2025)
同棲する彼女との関係に悩む萩原一顕(かずあき)に武藤潤。萩原と会社の同期で、幼馴染のルームメイトとの複雑な関係に悩む半井整に伊藤あさひ。整の幼馴染のルームメイト・藤澤和章(かずあき)に松本大輝。一顕と同棲している恋人・水谷かおりに秋田汐梨。
萩原一顕と半井整の出会いは間違いメール。一顕が自分あてに送ったつもりだったメールは、アドレス間違いで誰かのもとへ。その誰かが実は半井整だった。ふたりは会社の同期だが、親しくはない。ちょっととっつきにくい雰囲気の整と職場で話すとき、一顕はつい敬語になってしまうほどの距離感だ。そんな二人が相手がだれかを知らないまま、メールで他愛もないおしゃべりをするようになり、次第に自分の悩みを打ち明けるようになる。
私はセクシャルなシーンや言動が多いドラマはBLに限らずあまり好きではないのだが、このドラマは意外と今までのところ好きで、面白い。主演の二人の ”社会人ぽさ“ がいい感じだし、全体的に落ち着きがあって気に入っている。
私が伊藤あさひを見るのは『絶対BLになる世界VS絶対BLになりたくない男』『下剋上球児』の次がこのドラマで、あのかわいかった椿谷くんがどう変わっているか楽しみにしていた。あまり感情を表に出さずちょっととっつきにくいクールな雰囲気をもちながら内面には熱い気持ちや悩みも秘めている青年がとてもよく合っている。
武藤潤は、キービジュアルで見るよりかっこいい。ちょっと臆病なところもあって(整には敬語、彼女には不満を打ち明けられずにっこり笑顔・・・)、まわりに結構気を使うが営業職故かあまりそれをいとわず、やさしくて少年のような雰囲気をもったかわいげのある青年が似合っている。今回の役柄に関しては、ちょっと赤楚くんに雰囲気が似ているような気がしている。赤楚君の愛らしさをちょっと減らして、少年ぽい素直なところを足した感じ・・・か?
二人がお互いがだれか知らないままやり取りしたメールの文面が、実際にもありそうな自然感じでとてもいい。大人男子にありそうな言葉遣いのせいかな。なんだか聞いているとするするっとなじめる感じ。
二人はそれぞれのパートナーとの間にセクシャルな問題を抱えている。でも、誰かに打ち明けるわけにもいかず、悩みは深まるだけだった。そこに思いもかけず見知らぬおしゃべり相手ができて、メールでの他愛もないおしゃべりの続きで、顔も知らないその相手についその立ち入った悩みを打ち明ける。
これだけ書くと、そんなことある?・・・と思うのだけど、ドラマはこの辺がとても自然に作られていた。
二人がそれぞれ抱えているような問題は、近くの親しい友達にはかえって話せないことだろう。自分のこともパートナーのことも知っている共通の友人や身内になど、なおさら打ち明けられないだろう。
おそらく会うこともないし、会いたいとは思わないし、実在するのかどうかもわからない相手。そんな相手だから話せた、というのは私はなんとなくわかる。
というのも、私がこのnoteにBLやブロマンスのことだけを書いて3年も続いているのと少し似ている気がしたのだ。近くの友人には話せない。わかってもらえるとも思わない。もし知られたら奇妙な目で見られるはず。だから、こうしたものが好きなことに気づかれないように暮らしている。でも、全く知らない人ならば、却ってなぜか聞いてもらってもいいかなと思えて、noteに好きなことを書いている。会うことがなくても、性別も年齢も外見も何も知らなくても、好きなこと(このドラマの場合は悩みだが)を共有できる人が少しでもいれば、それはうれしいことだから。
BLドラマでは、あと少しで分かりそうなのに、気づきそうなのに、「すれ違わせる」ような流れがよくある。結構よくある展開なので、あまり面白味を感じなくなったエピソードのひとつ。このドラマでも整に一顕が雨の音を聞けるサイトの情報を送るといい、お互いのメールを交換しそうになってしなかったすれ違いがあった。相手のメールアドレスが分かれば、そこで知り合ったはずだが、整は断った。でも、それはとても自然だった。整と一顕の当時の関係性や整の性格を考えたら、「いらない」と断りそうだったから。無理な「すれ違わせ」感は感じなかった。
彼らは3話で出会うことになった。前からお互いとても近くにいたけれど、メールの相手が誰なのかをやっと知った。ひと気のない小さな美術館でのそのシーンはとても静かできれいだった。びっくりしたけど騒ぎ立てずに、でもやっぱりちょっと照れる大人男子二人の自然な雰囲気と、甘くセクシーではない会話がとてもよかった。あの時整が断った雨音サイトのやり取りが、ここでうまく使われていた。
知り合った二人がどうなるのかも気になるが、もう一つ気になるのは彼らのそれぞれのパートナーが、なぜ彼らを受け入れようとしないのか。
一顕と同棲しているかおりはあやふやな関係ではなく恋人で、一顕をもともとは拒否していたわけでもなかった。今でもハグなど彼女なりのスキンシップを求めることもあるし、一顕を好きなことはわかる。また、整と同居する幼馴染の和章も、整に恋愛感情は抱けないというものの、自分が知らない外の世界で楽しそうにする整には独占欲や嫉妬に似た感情を見せ、整には何かしらの特別の感情を持っているようにみえる。
一顕と整は同じような悩みを抱え、互いにすぐ近くにいると分かったからにはこれからきっと一緒にいることも増え、互いの悩みの原因を補い合う方向に行くのかと思う。でも、欲が満たされたからといって、この先もずっと一緒にいたいと考えていた元のパートナーへの気持ちがさっと冷めるとも思えない。
二人がそれぞれのパートナーとこれからどう向き合っていくのかがとても気になっている。