『カラオケ行こ!』(2024/日本/映画)
原作は漫画で私は読んだことはないが、筋書きを以前どこかでみて、面白そうだなぁと思っていた。
映画が公開されて、割と好きな俳優の一人である綾野剛とオーディションで選ばれた男の子・齋藤潤君が主演と知り、俄然観に行きたくなった。
この映画は本当に面白かった。
成田狂児役の綾野剛は、掴みどころがない裏の社会の男を好演し、何とも言えない色気があった。映画の中で「気持ち悪い」と”聡実くん”に一蹴された裏声だが、なかなかどうして美しかったと思う。最初聴いた時はびっくりして笑っちゃったけど!
そして岡聡実役の齋藤潤くん。彼が素晴らしかった。彼がいなければこの映画はこんなに魅力的にならなかったと思う。よくぞオーディションで選ばれてくれました。
この二人の出会いで、この映画はきっと何倍も魅力的になったのだろうと思う。
狂児と聡実くんの関係、お互いに持つ感情は、見る人によって如何ようにも解釈できそうだ。BL的な描写はないけれど、それが好きな方にはそれ風にみることもできる。BLではないけれども(原作はどうなのか、読んでいないので分からないが)、何とも言えないいい雰囲気が漂い、その加減が絶妙なブロマンスになっている。
BL関連映画といえば、最近なら2年前の『チェリまほ the movie』、1年前の『美しい彼 劇場版 eternal』を見にいったことを思い出す。この2作品はテレビドラマから入ってその延長で見たもので、見にいく前からかなり楽しみにしていたし、登場人物や関係性もすでによくわかった上で見た。自分の中では、大好きだったドラマの延長線上にある”最終章”のような感じで、映画単独でよかったかどうかの判断は難しかった。大好きだったドラマと切り離して考えることはできず、映画だけにマイナスの印象や評価を持つということができなかった。ただ、何も知らない人に ”面白いBL映画” として映画単独でおすすめできるかというと、それは厳しいかなと思うところはあった。
例えば、3回も映画館に観に行って何度も感想を書いた『チェリまほ the movie』に関しては、多くの人にお勧めしたいとまでは思えなかった。ドラマファンなら楽しめるかもしれないが、テレビドラマ『チェリまほ』ファンでない方には、例えBLがお好きな方にでも気軽にお勧めはできないと初回鑑賞の際に感じた。自分の中ではチェリまほの”最後のイベント”のような位置づけで楽しんでいたと思う。ドラマファンへのご褒美映像集のようなシーンも多く、映画単独で”映画として”高い満足感なり面白さを感じるのは難しいという気がした。
また、映画のチェリまほはテレビドラマの世界とは別物になってしまった感じもあった。
その点、この『カラオケ行こ!』は、BLやブロマンスファンの方にも、そうでない方にも、面白い映画としておすすめできる。BLやブロマンスは嗜好品だと思っているので、人によって好みが違うから普段はあまり特定の作品をおすすめしたいとは思わないのだが、これはおすすめできる。笑えるところもあり、ジーンとくるところもある。BL・ブロマンスファンがドキッとしたり顔がニヤけてしまうような二人のシーンもいろいろ散りばめられていて、狂児と聡実くんをずっともっと見ていたくなる。
主演二人のやりとりがとにかくいい。この映画を見たら、やはりブロマンスっていいなぁと実感した。
何だか思った以上にはまってしまって、もう一度見にいってしまいそう。
関西弁イントネーションの「さとみくん」の呼びかけを、綾野剛の声でもう一度聞きたい。