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『ひだまりが聴こえる』10話(日本/テレビドラマ/2024)

中学卒業時に患った突発性難聴のせいで人と距離を置いて付き合うようになった杉原航平役を中沢元紀、航平と偶然に大学のキャンパス内で出会い、授業補佐のためのノートテイクを引き受けて仲良くなる佐川太一役に小林虎之介。

このドラマ、すごく好きなのけれど、この頃見ていてずっと悲しい。なんだか悲しい毎日になっている。

<あらすじ>

太一は犀の経営する手話関連ビジネスの会社でアルバイトを始め、慣れないながらも前向きに仕事に取り組む。犀の右腕の千葉が太一を指導する。仕事の現場で千葉を手伝った太一は、千葉のプロフェッショナルな仕事ぶりに大きな刺激を受ける。そして、自分は中途半端で、今のままでは千葉のようないい仕事はできないと落ち込む。そんな太一に、犀は自分の会社で正社員にならないかと誘う。

多忙で疲れており、時にノートテイクもおざなりになってしまう太一を、航平は心配していた。
ある日、太一から”俺が大学を辞めたらどうする?”と聞かれ、太一が他にやりたいことが見つかったと話すと、太一のために”自分は太一がいなくても困らない、もう大丈夫”と伝える。太一は自分から退学の話を切り出してみたものの、航平から自分はもう必要ないと言われて傷つき、涙ぐんでその場を去る。航平はそんな太一の辛そうな様子に戸惑い、立ち尽くす。

太一は祖父の源治にも、退学の件を相談する。源治は、太一が自分のお金で通っている大学なのだから好きにしろという。そして、何かを決める時には”寂しい”を理由にするな、と太一に語りかける。
そして太一は、仕事に専念するため退学を決意する。

一方航平は、マヤから”太一のことが好きなのか?”と聞かれ、”片思いだけど好きだ”と答える。なぜあの人でなければならないのか、あの人が本当に必要なのかと詰問するマヤに、航平は太一との出会いで変われた自分のこと、そして太一への深い想いを語る。

<感想>

うーん・・・。犀社長からの仕事への誘いも、源治じいちゃんのアドバイスも、太一の退学への流れを作っていて、見ながらだんだん諦めの境地にいたり、言葉がなかった。航平のノートテイクをやめて、新たな世界に行ってしまうのね・・・と。
面白みのない安定志向の私から言えば、アルバイトしながら大学で経済の勉強して、就活の時にインターンで犀社長のところで働いてそのまま就職すればいいじゃない、なんてお思うけど、太一はそういうタイプではないわよねぇ・・・。まぁ、イノシシな人だから、退学を選択するんだろうなぁ・・・。

そして、航平。太一が大好きで、性格もよくわかっていて、苦しめたくないと思っていたら、やはりああ言うしかないかなぁ・・・。”もう太一がいなくても困らない”くらい言わないと、太一の背中を押してやれないものね。
太一の涙に戸惑うのは5話での階段でのシーンでもあったけど、航平は太一の涙に弱いよね。太一が泣くと、 ”えっ・・・、太一が、泣いちゃった・・・” って、ちょっとオロオロする航平が好きです。

航平はとても表情豊かになった

自分が大学を辞めたらどうする?と太一に聞かれたときの、初めの航平の慌てようが可愛かった。太一何したの?学校にバレたらマズいこと?また喧嘩?と、矢継ぎ早。この時の中沢くんの演技が好きだった。なんか太一のことになると、人目を気にする余裕もなくなりちょっと変なテンションになる航平が面白くて好き。航平は、本当に表情豊かになったなぁ。
太一と出会った頃の航平は、他人と交わろうとせず、表情も硬くてほぼ無表情だった。それが太一と一緒に過ごすようになって、感情を表に出せるようになった。太一と言い争って怒ったり、えくぼが出るほどにっこり笑ったり、やきもちを焼いてムッとしたり、太一と女の子の会話を邪魔してみたり、太一のことを思い出して爆笑したり、太一を心配して大慌てで詰問したり。
自分をそんなふうに変えてくれた太一は、これからもずっと一緒にいたい”必要”な人だろう、本当は。でも、その気持ちを断ち切ろうとするくらいに、太一のことを思いやっている航平が、見ていて辛い。

今更だけど、中沢元紀くんの声がいい。

ずっとドラマを見ながら、いい声だなぁと思っていた。品のある感じで、落ち着きがあり、表情豊かな声。ドキュメンタリー番組のナレーションとか、小説の朗読とか、声の仕事もできるだろうなぁ・・・。聞いていて心地よい声だ。

今だに片思いだと思っている航平

5話、6話で航平が太一に友情よりも強い気持ちを伝えた。拒否されると思っていたけれど、太一は航平との付き合いを断つことなく、二人の交流は続いた。
6話で航平が、”もう太一が嫌がるようなことはしない”と言った時、太一は”嫌じゃなかったらどうするんだよ・・・”と答えた。ドラマを見ている自分は、そこで勝手に両思いになったと思い込んでいたけれど、航平の耳にはこの言葉は届かなかったんだ。だから、航平は今も自分は太一に片思いだと思っているのも当然だったのだと、今回航平がマヤに”自分の片思いだ”と答えた会話を聞いて、実感した。あれ以来ずっと、片思いの恋を胸におさめて過ごしてきたんだなぁと。太一の気持ちがどんなものかははっきりとは語られていないので、私もわかっているわけではない。ただ、お互いに好意は持っているとわかるだけ。
大学を辞める話をした太一に、航平が”もう太一がいなくても困らない。大丈夫”と言った時、その言葉を聞いた太一が、”お前はもう・・・”と言って、言葉をつまらせて、涙ぐんで、行ってしまった。なんて言いたかったのかな・・・。

特別予告なるものを見て、また悲しくなる

もうすぐドラマも終わってしまうので、いろいろ情報に触れたくて検索していたら、公式サイトで特別予告なるものを見つけ、見てしまった。
夕暮れの石段で抱きしめ合うふたり、夏祭りで「航平」の名を呼びながら航平を探し回る不安そうな太一、その太一を捕まえた航平のかっこいい浴衣姿、「幸せだった」の過去形の言葉・・・。クライマックスに向けてのとても美しくて悲しくなる予告でした。あ〜、やっぱり悲しいじゃない!
あと2話しかないけど、どうなるの?!どういう感じに終わらせるつもり?!原作は(読んでないけど)今も続いているようだけど、原作とは違う結末もあるかもしれないし。油断ならないわ。
二人の明るい未来のための前向きな別れとか、見る勇気ないなぁ、見るけどね・・・。

太一への思いを語る航平がとてもよかった

太一への深い思いをマヤに語った航平がとてもよかった。元紀くんの演技が、やはりとてもいい。
出会ったことも好きになったのも、偶然。別に必要だから誰かを好きになるわけじゃない。好きになった相手が、いつしか必要な人になるのだろう。自分に迷惑をかけない人を好きになれるわけじゃない。何かをもっとうまくやれる人がいても、必ずしもその人が大事な誰かの替わりになれるとも限らない。助けてもらうために、誰かと恋に落ちるわけじゃない。
航平は太一と出会って、太一との会話ややり取りで魅かれるものがあって、好きになっていった。自分の存在をそのまま受け入れて、自信を無くしていた自分のいいところにたくさん気づいてくれた太一のおかげで、航平も自分自身を肯定し、受け入れることができたのだろう。

恋愛ではないのかもしれない

ここまできて感情に名前を付けたがるのは野暮だけど、これは恋愛ではなく、やはり友情なのかもしれない。恋ではなく、人生でなかなか巡り会うことのできないとても強くて濃密な友情なのかもしれない。
10話の終わりで航平が語った太一への想いを聞いて、そんなふうに感じた。





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