『毒恋~毒もすぎれば恋となる』
日本/テレビドラマ/2024
頭脳明晰な天才弁護士・志波令真役に濱正悟、公私ともにその志波の相棒となっていく天才詐欺師・ハルト役に兵頭功海、志波の同僚弁護士・風間公太郎役にお笑いコンビ "おいでやすこが" のこがけん。
脚本は川﨑いづみ氏。
今思うと、私が大好きだったアメリカドラマ『SUITS』に設定がちょっと似ていたかな(あちらはBLではなくブロマンスだった)。『SUITS』は時々テレビ放送があったのでシーズン5くらいまで見たが、人間関係も複雑で、法廷劇としての面白さもあり飽きることがなかった。
主要俳優陣の演技がとても面白かった
まず濱正悟。顔はとてもきれいな顔をしている。しばらく見ていて、『絶対BL・・・』にちょっと出ていたなぁと思いだした。そちらでは全然違う可愛げのある役だったので、すぐに結びつかなかった。
濱正悟の演技はメリハリがあってとても面白かった。頭脳明晰で仕事で着実にキャリアを積み重ね、”冷酷無慈悲な氷の法王”という不名誉なあだ名をつけられながらも意に介せず仕事に邁進する志波令真。その自信満々でいつも心に鎧をつけていたような彼が、ハルトに恋をして、だんだん心を通わせるに従ってハルトに対しての接し方や二人きりでいるときの話し方が柔らかく変わっていった。
濱正悟がとても端正な顔立ちをしているので、私は志波が女性にモテて恋愛経験も豊富だといつの間にか勝手に思い込んでいたが、彼は恋には奥手だった(ついでに喧嘩も弱かった)。もしかしたらいつの間にか『SUITS』のハービーと重ねてしまっていたのかもしれないし、BLのよくあるパターン(仕事もできて女性にもモテて腕っぷしも強く、一見非の打ちどころがないかのような人物設定って珍しくない)として刷り込まれていたのかもしれない。正体不明のハルトに翻弄される恋愛に不慣れな志波を、実に憎めない感じに演じた濱正悟が面白すぎた。
濱正悟には今回興味を持ったので、これからほかの作品でも見られることを楽しみにしている。
そして、兵頭功海。スラリとした肢体と今時らしいきれいな顔。かわいさを前面に押し出し、志波令真を ”りょうくん”と甘~い声呼んで、いつの間にか警戒心の強い志波の懐に入り込んだセクシー美人。
彼が公の場でもどこでも志波を甘~い声で「りょうくん」と呼んでいたのは私にはいささか違和感があったが、見た目も話し方も軽く甘い感じで、いつまでたってもどこか胡散臭い感じが漂っていたところが天才詐欺師らしくてよかった。
功海くんは『下剋上球児』にでていたと聞いていて、このドラマを見終わってすぐ『下剋上球児』をみた。貧しさに負けず野球に打ち込む健気な根室知廣に涙した。素朴な”根室君” のほうが私はすきだったけれど、”ハルト” のような正体不明な役も似合う気はする。とにかく素材がいい人なので、これからも様々な役をやれるだろう。
最後にこがけん。私はこのドラマで一番好きだったかな。この人面白かった!こがけんが演じていたのは志波の同僚弁護士の風間。この人はゲイであること、同性の恋人がいることをオープンにしている。恋に奥手な志波が「自分の友達のことだ」と言い訳しながら恋の悩みを相談をすると、”本人の悩みなんだろう” とわかりながらもそうとは言わず、 "お友達のために" 親身になってアドバイスをくれるナイスガイ。仕事面でもいざというときに助け舟を出してくれたりして。舞台俳優並みに大仰なこがけんの演技から、鼻持ちならない嫌な奴なのかと思いきや、とてもいい人なのが面白かった。こかげん、またみたいなぁ。
主演の二人は昔から知り合いの仲良し
ドラマ開始前に二人のインタビューをみた。前からずっと知り合いでプライベートでも仲が良いとのこと。ご本人たちが言うのだから、仲がいいのだろう。こんなにプライベートで仲良く付き合ってきた親友と同性の恋人役を演じるなんて、役者ってなんだか大変だなぁ・・・と思ったのは、一般人の私の感想。役者稼業に身を置いている人には、そんな ”やりにくそう" な仕事はいくらでもあって、それほど気にしていないのだろう。
テレビで見ている私には二人だけのしっとりしたラブシーンに見えても、『25時、赤坂で』でも見たように、実際の撮影現場では周りにたくさんの人がいて密室での秘め事感はゼロ。美しい見え方を優先して徹底的に作りこまれたラブシーンは、自然な気持ちの成り行きではなくて作品なのだ。ドラマをいい作品にするために、共演する親友とそれぞれ自分の役を妥協なく演じているだけ。
それはわかるのだけど、楽しそうにキャッキャ言いながら仲よく話しているインタビューの二人を見ると、ちょっと不思議な気持ちになる。
でも、共演しただけでそれほど仲良くなったわけでもないのに、作品のプロモーションとファンサービスのためだけにイベントの時だけ "それ風" の仲のよさを装うパターンよりはずっといいか。
ストーリー展開よりも、俳優陣の演技の面白さにひかれて見終えた作品だった。