【終活110番029】在宅から施設への切り替え時

親が要介護状態に陥った場合、ほとんどの子どもはとりあえず自分たちで何とかしようと考えるものです。要は家族介護です。しかし、いったん要介護になった親の状態が快方に向かうことはありません。残念なことですが、悪くなる一方です。「介護には出口がない」とか「介護には定められた期限がない」と言われますが、家族介護から施設にシフトするタイミングを見誤ると、介護地獄に足を踏み入れることになりかねません。だから、以下のような明確な判断基準を持っておくようにすべきです。

●排泄介助が必要になったら施設
●車椅子になったら施設
●寝たきりになったら施設
●会話ができなくなったら施設
●子どもの顔がわからなくなかったら施設
●隣近所に迷惑が及んだら施設

さて、親を施設に入れることを決断したとします。しかし、施設選びというのは、実に悩ましいものです。全国に介護施設はピンからキリまで無数にあります。元気なうちであれば通販カタログで商品選びをするように楽しい時間が過ごせるかもしれません。予算に合わせて少しでも快適な物件をさがす意味もあろうというものです。でも、要介護になって、ましてや認知症だったりしたら事情はちがってきます。

基本的に、介護施設というのは入所者を管理する場所です。管理するのに手間がかからない健常者に対しては、多くの職員が愛想よく接してくれるものです。入居金が数千万円もするような施設であればなおさらです。しかし、いったん認知症になってしまったとしたら、期待するのは虚しいだけかもしれません。期待がはかなく裏切られる確率はきわめて高いです。どんなに気心のやさしい介護職員であっても、オムツ交換をしても会話も通じず、表情もなく醜態を晒している要介護者と接すること自体に喜びを感じるひとは多くありません。介護施設での、ふつうであれば信じられないような事件が頻発するのを見れば明らかです。精神病院に勤める医者や看護師がよく言っています。「まともに相手をしていたら、自分までおかしくなる」と。

実際、介護施設に勤務する介護職の7割は、やりたくて介護の仕事をしているわけじゃない…という調査結果もあります。さらに言えば、川崎Sアミーユ連続殺人事件(2014年)や相模原やまゆり園大量殺傷事件(2016年)や横浜大口病院終末期患者大量殺害事件(2016年)の後の調査では、3割近い介護職が「自分が加害者になる前にこの仕事を辞めたい」とコメントしています。

何が言いたいかというと、要は介護施設に過度な期待をするなということです。ただでさえ待遇が悪く、人材が足りない世界です。にもかかわらず、箱ものだけが増え続け、介護の「か」の字も知らない管理者が他業界から転職してきて入所者獲得に躍起になっている職場では、現場の第一線で頑張っているまじめな職員ほど袋小路にはまって燃え尽きてしまいがちです。その矛先が入所者に向かないという保証などどこにもありません。

雨風がしのげて、食事が出てきて、一年じゅうエアコンがきいていて、お風呂にも入れてもらえて、たまにおぐしまで整えてもらえるのです…。子どもに面倒をかけることもなく日々を過ごせるだけで良しとする。そんな割りきりがないと、いかなる介護施設であっても、納得できるということはまずないでしょう。それが現実です。
という前提に立って、以下に、施設さがしの手順を書いていきます。

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