王様のガレット
フランス、ベルギー、ルクセンブルクなどフランス語圏の国々では1月初旬になると、パン屋(Boulangerie)やケーキ屋(Patissier)の店頭に「ガレット・デ・ロワ(Galette des Rois 王様のガレット)」と呼ばれる、丸い大きなパイ生地の焼き菓子が並ぶ。
カトリック社会で公現祭(1月6日※カトリックでは主日の日曜日に移動)と呼ばれる、東方の3人の博士がイエスの聖誕を礼拝に来たことを祝う祭事に由来する焼き菓子だ。焼き菓子の中には、「フェーブ(La fève)」と呼ばれる陶製の小さな人形などが入っている。ガレットを切り分け、フェーブが入っていると、その人はその日の王、女王となり、ガレットに付いてくる「王冠(La couronne)」を被る。周囲の人は、その日、王、女王のいうことをきかなければならない、という慣習がある。
2センチメートル程の大きさの、フランス語で"豆"を意味する「フェーブ」は、ローマ神話の農業の神サチュルノの祭事に縁起を遡るといわれる。「ガレット・デ・ロワ」に入っている人形は、陶製もあれば金属製のものあり、その形も人、動物、ランプなどさまざま。
近年、パリではハート型のガレットもチラホラ。公現祭に食べるこの焼き菓子も地方によってさまざまあり、パリ周辺は主にパイ生地の焼き菓子を、南仏では「ブリオシュ(Briosh 玉子パン)」の上にドライ・フルーツをのせた「ガトー・デ・ロワ(Gateau des Rois)」を食べる。
公現祭の日、1月6日に3博士の聖遺物があるドイツのケルン大聖堂では記念日の特別ミサがある。
3博士が星に導かれ、イエスが聖誕した小屋に辿り着いたことから、歌いながら家々を巡り、募金を集める「シュテルン・ジンガー(Sternsingers 星の合唱隊)」という子どもたちの組織がある。この日、シュテルン・ジンガーも大聖堂を訪問し、ミサの後に祭壇で聖歌を披露する。
聖歌の後、堂内で最後の募金活動する。ドイツ各地で集められた募金は、シュテルン・ジンガーの代表がベルリンの首相官邸に届ける。毎年、約5億円の募金があり、世界の恵まれない子どもたちの援助に使われる。
ケルン大聖堂には、15世紀のケルン派の巨匠シュテファン・ロヒナー作の祭壇画「ドームビルト・アルターピース(Dombild Altarpiece 大聖堂の絵画・祭壇画)」が顕示されている。東方の3博士はケルン市の守護聖人になっていることから、「アルター・デア・シュタットパトローネ(Altar der Stadtpatrone 守護聖人の祭壇)」とも呼ばれている。
聖人録
東方の3博士
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