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編集担当Jと取材で世界各地を飛び回るSがお届けする、世界各地で息づくキリスト教カトリックのアート、伝統、風習、文化を様々な視点から紹介していきます。普通の旅行では感じることのできない、本当の伝統、文化、人々の姿に触れる旅を一緒にどうぞ!

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最近の記事

子どもに人気の聖人が、菓子パンに

11月になるとドイツのパン屋にマルティンスマン(Martinsmann)と呼ばれる菓子パンが出回る。11月11日が記念日の聖マルティヌスに因んだ薄い塩味の菓子パンだ。聖マルティヌスはライン河畔の村や町では子どもたちに大人気の聖人だ。 マルティンスマンは11月に入るとパン屋の店頭を飾り始める。軽く塩を含んでいてお菓子とは言い難いが、スナック菓子として人気。眼に干しブドウを入れて、外見は不気味な人型パンだが、この時期子どもたちには絶大な人気。 11月第二週、聖マルティヌスの記

    • 冤罪の囚人、戦争捕虜を救った聖人

      六世紀に南フランスで修道活動を始めたノブラの聖レオナール(Léonard de Noblat ドイツ語:Leonhardレオンハルト)は多くの冤罪の囚人、戦争捕虜など救った。聖レオナールは中世に捕虜の鎖を持って描かれていたため、鎖繋がり?で農耕馬、家畜などを想起させたことから農民、馬、家畜の守護聖人にもなった。 聖レオナールの記念日(11月6日)にドイツ南部の農村地帯で「聖レオンハルトの騎行」と呼ばれる祝祭事が繰り広げられる。 南ドイツの中心都市ミュンへンから南へ約40キロ

      • 鹿に出会って回心した聖フーベルト

        ベルギー東部リエージュ(Liege ドイツ語Lüttich)の最初の司教となった聖フーベルトは、8世紀にベルギー東部アルデンヌ(Ardenne)地方を宣教したことから「アルデンヌの使徒」と言われる。狩猟中に十字架を角に載せた鹿と遭遇し、回心。キリスト教の伝道に後半生を捧げ、ベルギー東部、オランダ南部の宣教に力を注いだ。狩猟の守護聖人で、記念日の11月3日、リエージュの聖ピエール(ペテロ)教区教会で特別ミサが行われた。 ドイツ国境に近いベルギー東部の中心都市リエージュは中世か

        • ローマ 城壁外の聖パウロ大聖堂

          ローマは古代ローマ帝国時代、重厚な城壁で囲まれていた。その城壁の外に聖パウロへ献堂した大聖堂が4世紀に築かれた。聖パウロは、斬首の刑で殉教した後、現在大聖堂が立つ位置に葬られた。城壁外にあることから「城壁外の聖パウロ大聖堂(San Pulo fuori les mura)」と呼ばれている。 近年、ローマ市内から城壁外の聖パウロ大聖堂へ地下鉄が通り、行きやすくなった。地下鉄B線でテルミニ駅、コロッセロなどの観光名所からも10分、15分。聖パウロは大聖堂から約3キロメートル南の

          史上初のご出現 柱の聖マリア

          紀元後40年10月12日、スペイン北東部を宣教中の聖(大)ヤコブが宣教が捗らずサラゴサ(Zaragoza)の河畔で仲間と意気消沈していたところ、聖母マリアがご出現なされ、聖(大)ヤコブたちを励ましたという。 聖母マリアの存命中で、史上初のご出現となった。柱の上にご出現なさったことから「柱の聖母マリア(Virgen del Pilar)」と呼ばれている。 サラゴサの聖母マリアご出現の記念日は、早朝から始まる。朝4時から旧市街の聖パブロ(=パウロ)教会(iglesia de S

          史上初のご出現 柱の聖マリア

          修道女ブリジディネスの創作スイーツ

          イタリア中央部トスカナ地方の丘陵地帯モンタルバーノMontalbanoの聖ビルギッタ修道院の修道女ブリジディネスが、16世紀に聖体(ホスティア)の形をしたドルチェ(スイーツ)、薄いお煎餅のようなクッキー、ブリギディーニを修道女たちに作った。 16世紀からトスカナ地方に伝わる丸くて薄い煎餅風のクッキーをベースに、1910年トスカナ地方ピストイア郊外のランポレッキオLamporecchio村の菓子職人が小麦粉、卵、砂糖、アニスだけで作った菓子、ブルギディーニを行商し始めた。

          修道女ブリジディネスの創作スイーツ

          南フランス、アジャンの乙女殉教者

          フランス南西部アジャンAgenに4世紀初頭ディオクレティアヌス帝のキリスト教徒迫害で殉教した乙女殉教者聖フォワがいる。5世紀頃まで存在すら知られていなかったが聖女の聖遺物が数々の奇跡を起こしたことから一躍人気の聖女となった。 フランス南西部に中央山塊Massif centralと呼ばれる巨大な山地がある。その南部の緑深い丘陵地帯にサンチャゴ・デ・コンポステーラの巡礼路の宿場町にもなっているコンクConquesがある。 中央山塊を水源とするドゥルドゥ川とウシュ川が合流する地

          南フランス、アジャンの乙女殉教者

          イエスに最も近い生涯を送った聖人

          アッシジの聖フランチェスコ(Francesco d'Assisi)は、自然が美しい緑豊かなイタリアの緑のハートと呼ばれるウンブリア地方のアッシジに1181年に生まれ、1226年10月3日帰天した。 アッシジの町はスバシオの丘の中腹に東西に広がる。東の端れに聖キアラ教会、西の端に聖フランチェスコ教会が立っている。聖キアラ教会から旧市街の中心地、市庁舎広場(Piazza del Comune)に行く途中に現在生誕記念礼拝堂になっている聖フランチェスコの生家がある。 聖フランチ

          イエスに最も近い生涯を送った聖人

          ル・コルビジェ設計のロンシャン礼拝堂

          フランス東部、スイス国境に近いヴォージュ山地の丘の上にスイス出身の建築家ル・コルビジェが設計した礼拝堂がある。東京の国立西洋美術館などと共に「ル・コルビジェの建築作品‐近代建築運動への顕著な貢献」として2016年にユネスコの世界遺産として登録された。 ロンシャンの礼拝堂は正式には、ノートル・ダム・デュ・オーNotre dame du Haut、高地(海抜472㍍)にあるノートル・ダム(聖母マリア)と呼ばれる。ブールレモンBourlémontの丘には11世紀末頃から礼拝堂があ

          ル・コルビジェ設計のロンシャン礼拝堂

          アルプス南麓に聖母マリアご出現

          1846年9月19日ヨーロッパ・アルプスの南麓フランスのラ・サレット ・ファラヴォ―La Salette Fallavauxの二人の幼い羊飼いが山から下りて来る最中に聖母マリアに出会った。聖母マリアは涙を流していたが、そのうち二人の羊飼いに語り掛け始めた。 聖母マリアが1846年9月19日にご出現なさったラ・サレットの聖所Sanctuaire  de La saletteは、ヨーロッパ・アルプス南麓の標高1800メートルの地にある。近くのフランスの大都市と言えば冬季オリンピ

          アルプス南麓に聖母マリアご出現

          神の啓示を受けた女子修道院長

          ドイツの交通河川でもあるライン河中流の河畔はワインの産地として知られる。ライン河観光の中心都市の一つリューデスハイムの後背のぶどう畑におおわれた丘の上にビンゲンの聖ヒルデガルトHildegard von Bingenが創立した修道会の修道院がある。 聖ヒルデガルトは、1098年、現在聖ヒルデガルト女子修道院が立つ、ライン河畔のリューデスハイムRüdesheim am Rhein から約50キロメートルほど南に離れたアルツァイAlzeyで生まれた。育ての親であった修道女ユッタ

          神の啓示を受けた女子修道院長

          聖ヤコブのタルト

          ヨーロッパではコロナの影響で野外スポーツとも言える巡礼は大人気。ヨーロッパには数々の巡礼地、巡礼路があるが、一番人気は、聖(大)ヤコブの墓があるとされるスペイン北西部のサンチャゴ・デ・コンポステ―ラ(以後、SCQ)への巡礼路だろう。人によっては1、2か月かけてフランス、イタリア、ドイツなどからSCQを目指す。長い巡礼路の後、SCQでアーモンド・ケーキ、トルタ・デ・サンチャゴ(Torta de Santiago)が待っている。 SCQに入る前、多くの巡礼者たちは郊外の丘の上に

          聖ヤコブのタルト

          プラートの聖母のベルト

          Sacra Cintola di Prato 聖母マリアは天使たちに導かれ被昇天したので、地上には聖遺体は残っていない。しかし聖母マリアが生前身に付けていたベール、衣服など数々の聖遺物が地上に残されている。イタリア中部のプラート(Prato)に聖母マリアのベルトがある。9月8日の聖母マリア聖誕の記念日にはヨーロッパ各国、各地の聖母マリアに献堂された教会、聖遺物のある教会で祝祭事が営まれる。 聖母マリアが被昇天した際に、聖トーマスが墳墓を訪れ、被昇天を疑っていたところ、被昇

          プラートの聖母のベルト

          子どもを守る聖バルトロメオのクッキー

          中部イタリアのピストイアでは聖バルトロメオが子どもたちを守ってくれている。聖バルトロメオの記念日(8月24日)にはクッキーで造った「聖バルトロメオの王冠(Coronna di San Bartolomeo)」を首飾りにして子どもたちへプレゼントする。 ピストイアの聖バルトロメオ(San Bartolomeo)教会の起源は8世紀半ばに築かれた修道院に由来する。現在の教会は12世紀に改築された。 聖バルトロメオの記念日(8月24日)には主祭壇の前に麻の袋が二つ置かれ、子供たち

          子どもを守る聖バルトロメオのクッキー

          銘ワイナリーになった修道院

          中世からドイツの重要な交通路でもあったライン河中流のエルトヴィレEltville am Rheinからブドウで被われた小高い丘を10KMほど上がるとドイツの銘醸ワインで知られる旧エバーバッハEberbach修道院がある。 エバーバッハ修道院は、1136年に当時フランスの聖ベルナールが修道院改革を推進していたシトー派の修道院から派遣された12人の修道士が設立した。修道院は無原罪聖母マリアと洗礼者聖ヨハネによって守護された。 エバーバッハ修道院は急速に拡大し、12世紀初頭から

          銘ワイナリーになった修道院

          「聖マリアの被昇天の祭日」を飾る大燭台

          Assunzione della Beata Vergine Maria イタリア語で"Macchina(マッキナ)"というと、"機械"や"車"を指すが、地方の祭事では"御輿"を指すこともある。サルデーニャ島のサッサリ(Sassari)では毎年8月14日の夜、「ベツレヘムの聖マリア教会」に「大燭台(Candelieri)」を奉納する祭事がある。 「大燭台奉納」は、13世紀にイタリア半島の海洋国家ピサにサッサリが占領され、聖母マリアに蝋燭を奉納するよう強要されたことに起源を

          「聖マリアの被昇天の祭日」を飾る大燭台