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メアリー・シェリーの災難

 『メアリ・シェリー 「フランケンシュタイン」から〈共感の共同体〉へ』(シャーロット・ゴードン著 小川公代訳 白水社 2024.12.05)は『フランケンシュタイン』(1818年)で有名な小説家であるメアリー・シェリー(Mary Shelley)の入門書としてはとても分かりやすいのであるが、登場人物が多すぎる上に同名であったり婚姻関係にあっても名字が変わらないなどしており相関図が付いていれば良かったと思う。ここにメアリー・シェリーを中心に本作に登場する人物名を記しておきたいと思う。

ウィリアム・ゴドウィン(William Godwin)(1756-1836)メアリーの父親
 メアリ・ジェーン・クレアモント(Mary Jane Clairmont)(1768-1841)
 ウィリアムの再婚相手
 クレア・クレアモント(Claire Clairmont)(1798-1879)ウィリアム・ゴ
 ドウィンの娘
  クララ・アレグラ・バイロン(Clara Allegra Byron)(1817-1822)19
  世紀のロマン派の大詩人ジョージ・ゴードン・バイロン(George
  Gordon Byron)(1788-1824)とクレアの娘
 ウィリアム・ゴドウィン(William Godwin)(1803-1832)ウィリアム・
 ゴドウィンの息子
メアリ・ウルストンクラフト(Mary Wollstonecraft)(1759-1797)メアリーの母親
 ギルバート・イムレー(Gilbert Imlay)(1754-1828)メアリ・ウルストン
 クラフトの前夫
 フランシス・“ファニー”・イムレー(Frances "Fanny" Imlay)(1794-
 1816)メアリ・ウルストンクラフトの一人娘

メアリー・ウルストンクラフト・ゴドウィン・シェリー(Mary Wollstonecraft Godwin Shelley)(1797-1851)本人
 ウィリアム(William Shelley)(1816-1819)長男
 クララ(Clara Shelley)(1817-1818)次女
 パーシー・フローレンス(Percy Florence Shelley)(1819-1889)次男
  ジェイン・シェリー(Jane Shelley)パーシー・フローレンスの妻
パーシー・ビッシュ・シェリー(Percy Bysshe Shelley)(1792-1822)メアリー・シェリーの夫
 ハリエット・シェリー(Harriet Shelley)(1795-1816)パーシー・シェリ
 ーの前妻
 アイアンシー・シェリー(Ianthe Shelley)(1813-1876)パーシーとハリ
 エットの一人娘

 メアリー・シェリーは『フランケンシュタイン』だけの、いわゆる「一発屋」だと思っていたのだが、アナキストの父親とフェミニストの母親の間に生まれた娘は両親の血を受け継いでいるのみならず、作品に関しても『フランケンシュタイン』は1818年の初版と1831年の改訂版の二種類が存在し、知らないことばかりだった。しかしメアリー・シェリーの再評価は最近のことらしく、詳細は是非本書を手に取って確認してもらいたいと思う。
 それにしてもメアリー・シェリーの周囲で死人が多すぎる。母親はメアリーを生んだ後、産褥熱で亡くなっており、パーシー・シェリーの前妻のハリエットが自殺したためにメアリーはパーシーと結婚している。ファニーもアヘンの過剰摂取による自殺で、長女は出産直後に亡くなっており、次女のクララは1818年にヴェニスで、長男のウィリアムは1819年にローマで病死しており、クララ・アレグラ・バイロンが1922年4月にチフスかマラリアで5歳で亡くなっており、ついには夫のパーシーも29歳の時の1822年7月に熱中していたボートを航行中に嵐に遭い遺体が海岸に打ち上げられたのである。そんな中でも53年間の人生において多くの仕事をこなしてきたのだから、作家とはこうでなければならないのであろう。