OH!へんろ。親子の88か所巡り(71番札所):剣五山 弥谷寺(香川県)
わたしが、子どもたちと決めた今回のお遍路ルールは一つだけ。納経所で御朱印をいただくのは子どもたちの役割ということ。ちゃんと挨拶をして、御朱印をお願いし、最後はしっかり御礼をする、です。
今日の煩悩:
千葉県(鎌ヶ谷市)にあった私の実家は、母が特別養護老人ホームに入るのを切っ掛けに、もう10年くらい前に取り壊しました。母は老後は過ごしやすくなるようにと、1階に建物を増築し、台所なんかもリフォームしていました。十分に住める家でしたが、家は奥まったところにあり、玄関までの私道も狭く、私も妹もそこに住む予定はなかったので、解体することになりました。
解体業者さんが、ちょうど近くで2件解体の仕事をしていて、その隙間時間で作業すること、家に残る家具や備品の処遇をお任せすることを条件に、かなりお安く見積もってくれました。私は実家から遠く離れて住んでいたので、その計画に間に合うように大急ぎで二泊三日の旅行を準備し、自分の部屋周辺のものを整理するためにと実家に帰りました。
昔の自分の部屋に泊り、エアコンが動くことに感動しつつ、アルバムや写真、書類関係を段ボールに詰めます。書籍なんかは大量にありましたが、数冊を除いて処分、レコード、CDも処分、ガラクタ同然だったけど捨てられないお土産品、古い(たぶん起動した)パソコンも処分しました。そのほか、「もし家がそこにあるのなら」、捨てなかっただろうなというものも、解体する家に置き去りにしました。半ば強制的な断捨離です。
庭先や物置、キッチンには食器や調理器具も、いくつか持ち出したものを除いて、いろいろ残っていました。玄関に置かれたアイヌの木彫り、中身のいない水槽、靴もいくつか残った下駄箱、ポチのいない犬小屋など、いろいろなものがありましたが、「滞在時間がない」という時間制限を付けたことはむしろ良かったのかもしれません、過度に思い出に耽ることもなく、全巻揃ったコミックを読むこともしませんでした。
その後、実家の建物は綺麗に更地となったそうです。「なったそうです」とは、自身で確認に行っておらず、妹から聞いただけだからです。
私の研究室の引き出しを開けると、実家の玄関のスペアキーがどこかの国のコインと一緒に鎮座しています。不思議なもので、建物がなくなってから10年経っていますが、私の中では目を瞑っていても歩けるくらい、身体感覚が残っています。何歩進んで手を伸ばすと「電気のスイッチ」がある、トイレの扉を開ける感覚、お風呂場のタイルの質感や温度、床をはだしで歩いた感覚、蛇口をひねる感覚、ベランダの床の軋み。
思いました。実家の建屋の質感なんて、他の人にはどうでも良い感覚だし、記憶です。自分にだけわかれば良い感覚です。この世にいる時間が限られている、寿命を持つ存在の記憶の中にだけある、まさに儚いものですが、期間限定のその記憶がたぶん良いのです。
私の子どもたちも、遍路を回っている間に、だいぶん大きく成長しました。まあ、2回半くらい回っていますけど。階段を全力で駆け上がるなんてことは、小学六年生の娘はもうしないですね(笑)。でも、そうした記憶が頭の中にあるということは、儚くも、大事だと思いました。
いまは、iphoneがあるので、写真が取り放題 (笑)
御詠歌:
あくにんとゆきつれなんも弥谷寺 ただかりそめも良きともぞよき
本尊:
千手観世音菩薩
創建:
天平年間(729〜749)
真言:
おん ばざら たらま きりく
歴史:
縁起によれば、およそ1300年前に聖武天皇の勅願により、行基菩薩が堂宇を建立し、疾病平癒の為、光明皇后により、『大方広仏華厳経』がお祀りされ、寺院を創建したと伝えられています。
所在地:
香川県三豊市三野町大見70
駐車場:
あり