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好きな絵記録-ポーラ美術館『カラーズ』展【中編】-

ポーラ美術館(神奈川県/箱根)で5/18まで開催中の『カラーズ ― 色の秘密にせまる 印象派から現代アートへ』展に行って来ました。
今回は個人的に気に入った作品を記録しておきたいと思います。
前編はこちら

■展覧会について

■気に入った作品

①スーラ《グランカンの干潮》

《グランカンの干潮》

人生で最も多く観ている作品のひとつ。
英仏海峡に面したノルマンディー地方の小さな漁村の風景を描いています。
この作品の前に立つとしみじみ、箱根に来たなぁ…と思います。山の中で海の絵ですが。
絵のフチを囲んだ点描によるライン、そして額縁の凹凸が合わさって奥行が増して感じられ、絵全体が窓に見える時があります。壁の向こうには穏やかな海が広がっているような気がしてくる作品。

②シニャック《フリシンゲン湾》

《フリシンゲン湾》

オランダ南西部、北海のそばにあるフリシンゲン湾を描いた作品。
シニャックはヨットの旅が大好きだったとどこかで読みました。手前の方に陸地が描かれていないので、この作品もヨットから描いたのかも…と勝手に想像しています。
ブルー、グレー、ラベンダーからピンクまで繊細に変化し重なった筆の痕。色味がとても好みで、一つ一つ置かれた色の粒を舐めるように観てしまいました。

…余談ですが、展覧会後に画像を検索して見てみると『肉眼はどんなカメラよりはるかに高性能』ということを実感しますね。あの透明感も絵の中の空気の質感も、やはり現地で観賞する醍醐味なのだなと。


③坂本夏子《Signals, A(lice)》《Signals, B(ob)》《Signals, C(olors)》《二つの場所で同時に絵を描くまぼろし》

制作過程を含めた物語性のある作品。
現実の制作過程と作品の中という二つの世界 / 二つの時間軸がもたらす偶発性や「眼には見えていない部分(物事)』に想いを馳せること、創作はどこまでが意思でどこからは無意識の結実なのかというようなことが、頭の中で連なって行きました。

《Signals, A(lice)》、《Signals, B(ob)》、《Signals, C(olors)》はCを軸とした派生のAとBという位置付け。
3枚並べて展示されていて、画面の中では円形が有機的に連なり、植物のようにも細胞の中を覗くようにも見えます。
この“細胞を覗くような”という連想は私がルドン好きであるから出て来たものだと思いますが、作者の意図するところから全く大外れでもなさそうな……。
最近よく並行世界のことを考える機会があるので、この作品を今観るのはタイミングがよかったです。
《二つの場所で同時に絵を描くまぼろし》を最初に観ると、他の坂本夏子作品がぐっと近付くと思います。ぜひじっくり。

④伊藤秀人《CELADON: FLAT Produced by RYUSENDO GALLERY》

シニャックやスーラの残像が脳裏に残る中で出会った作品。
小部屋のような展示室の一角を囲むように並ぶ、透き通った美しい青色。近づくと釉薬の厚みの違いや貫入(ひび模様)によるゆらぎがより見えて、穏やかな海のようでもありました。
貫入はやきものを窯から出して冷却している間にできるのですが、その時の音をQRコードから聴ける展示がありました。大音量でなければその場で聴いてOKだそうです。
水琴窟のような冴えた響きが作品の静謐な雰囲気にマッチしていて、この音込みで作品と呼びたい! と密かに興奮しました。

■好きな色はなんですか

普段「好きな色」に青を挙げることはほとんどないのですが、こうして書いてみると淡い青に惹かれている自分に気付きます。
青は世界で一番好きな人が多い色という説もありますが、皆さんはどうでしょうか。
ちなみに、私の好きな色の筆頭である黒は無彩色なので色にカウントしないという考え方もあるんだそうで。
いやそれはないでしょう、ルドンだってビアスリーだって…と色々反論したくなりますが、その辺の話はまた改めて。

■すみませんまだ続きます


【後編】では今度こそ、展覧会全体についてやや客観的な目線から考えてみたことを書きたいと思います。
今回もここまでお読みいただき、ありがとうございました!

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