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美術、香水、音楽、風俗史あたりが好き。楽しく書けることを追求したい気持ちだけはアリ。美術史学科出身の会社員。

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《浴槽、ブルーのハーモニー》の香りを妄想する

 まだ数枚の作品を観たくらいだったころ、ボナールに対して抱いていたイメージは《太陽光を感じる明るい絵が多い》といったものだった。あまり明確な輪郭がなく色と色は溶け合い、眩しくて目を細めながら見ているような感覚を抱く絵たち。 妻をモデルに数多くの裸婦画を描いたことも知る。きっと満ち足りた人生だったのだろうと思っていた。  一方で私の中にはいつも『心が満たされていたならば、わざわざ絵など描くだろうか?』という思いがある。絵を描く、という行為は描かない者の傍目よりもずっと根気と気

    • ヨハネ主題の〈信仰を貫き殉教を遂げるヨハネ〉との対比として〈卑しい肉欲を振りかざし聖人を殺そうとする女〉…というキャラクター(サロメ)が独立して人気になったの、所詮人間はその程度と言うか。そもそものカトリック、白人男性だけが得するただの超排他的家父長制男尊女卑ポイズンなので…

      • 【Celesアート】をオーダーしてみた【中編】

        オーダーする作品のイメージを精査し膨らませた結果、選定が振り出しに戻ってしまったところまでの【前編】はこちら。 続きを書こう書こうと思っているうちに実家の猫の病気が判明し、何をやっていてもなんとなく上の空……みたいな数か月を過ごし、気付けば秋になっていた。 ちなみに2023年6月30日でCelesのアート香水サービスは終了している。どれくらいの人が利用したのだろう。あまり見かけなくて他の人の感想が気になっている。 さて、続き。 選定方針を固める 《夏の夜、人魚》でのオ

        • 《Sacellum et Clibano》によせて

          AROMABLENDBARでフルオーダーした香りが到着。今回は元々広視野・多視点の着想だったので、どこを削ぎ何を残すか検討するのが難しくもあり楽しいところでした。バナナブレッドとインセンスが柱のスパイシーアンバー系の香りになりました。 それで到着したその夜に香りを堪能しながら感想などを書いていて、連ねるうちにほんのりお話めいてきまして。メモ以上にする気はないしそのまま出すのは気恥ずかしいけれど、どこかに残しておきたいのでここに。 ⚫︎最初のコンセプトは《修道院(孤児院/療

        • 固定された記事

        《浴槽、ブルーのハーモニー》の香りを妄想する

        • ヨハネ主題の〈信仰を貫き殉教を遂げるヨハネ〉との対比として〈卑しい肉欲を振りかざし聖人を殺そうとする女〉…というキャラクター(サロメ)が独立して人気になったの、所詮人間はその程度と言うか。そもそものカトリック、白人男性だけが得するただの超排他的家父長制男尊女卑ポイズンなので…

        • 【Celesアート】をオーダーしてみた【中編】

        • 《Sacellum et Clibano》によせて

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          2本

        記事

          【Celesアート】をオーダーしてみた【前編】

          推し香水でも有名な【Celes】がアート作品を対象としたセレクトサービスを期間限定で提供していると知り、これは是非ともやってみたい! と。 自分の食指の範囲内で好きそうなものをキャッチし、それをどうしたって最終的には自分のやり方で咀嚼していると、確実に好みだが予定調和感がある。これは香水に限らないことだけれど。 かと言って嗜好はかなり強めに偏っているほうだし、嫌いなものは嫌いだし、多数決で選ばれたものを疑ってかかるタイプ。面倒くさい性格だ。助けてプロの人。 どの作品にする

          【Celesアート】をオーダーしてみた【前編】

          自由なる香水のフィーリング-BASTILLEディスカバリーセットを試した-

          先日2020年生まれの新しいブランドがNOSE SHOPに加わり、その《BASTILLE》というブランド名、そしてその由来にまず惹かれた。 近代贔屓としては結構刺さった。 6種類の香りのうち半数以上が気になったため、ディスカバリーを手に入れ試したところ。 全体として、香りごとのキャラクターもはっきりしているしそれぞれ結構ひねりのある香りだと感じるけれど、なおかつ全部いい意味でライト。あんまり何も考えずにシュッと系だと思う。ブランドの方針に適っている。 《HORS-PIS

          自由なる香水のフィーリング-BASTILLEディスカバリーセットを試した-

          ルーブル美術館展にまつわる個人的な今更と結局

          それを今この21世紀に… 敢えてだとしても【愛】ってタイトルにまとめちゃうか、そうかぁ……の気持ちで書いた前回の記事 【ルーブル展のタイトルに違和感を覚え、そこから色々捏ね回す】 から早1か月半だ。 今更の再確認 前回の記事を書いてからしばらく、神話・聖書テーマの作品を意識的に観ることが増えた。実は自分が[思った以上に好きじゃなかった]事が妙に面白くて、ほとんど[好きじゃないことの確認]で観ていた。 神話と聖書は西洋美術どころか西洋文化全体の大腿骨なのに、そしてそもそ

          ルーブル美術館展にまつわる個人的な今更と結局

          DEMETER レビューの備忘録②

          2021年頃の【DEMETER】の香りの感想メモを発掘しました。 その①はこちら 個人的に ・蓮や波など水辺をイメージさせる香り、雨系 ・ピンク、黄色のイメージの花 ・草原、春風、初夏のようなイメージのグリーン感のある系統 が肌の上でまともに香らないタイプ。体温高めで柑橘は大抵一瞬で飛ぶ。 Cinnamon Bun バターの香る甘いパンの香り。落ち着くと少しシナモンが出て来る感じ。シナモンを直接嗅いだ時のような酸味も漂う。少し経つとほんのりスモーキー。 Condens

          DEMETER レビューの備忘録②

          DEMETER レビューの備忘録①

          2021年頃の【DEMETER】の香りの感想メモを発掘したのでこちらに。 高校生の時ハンズで出会い、ユニークな香りにわくわくしたディメーターの香り。再上陸してくれて、種類も少しずつ増えていて嬉しい限りです。 個人的に ・蓮や波など水辺をイメージさせる香り、雨系 ・ピンク、黄色のイメージの花 ・草原、春風、初夏のようなイメージのグリーン感のある系統 が肌の上でまともに香らないタイプ。体温高めで柑橘は大抵一瞬で飛ぶ。 Lotus Flower 石鹸感のある香り立ち。しなやか

          DEMETER レビューの備忘録①

          ルーブル展のタイトルに違和感を覚え、そこから色々捏ね回す

          ヘッダーの画像はロココを代表する画家のひとり、フラゴナール《かんぬき》の一部分。 描かれているのはベッド&林檎の置かれたテーブルではあるものの、裸身の女性があられもなく仰向けになっている状態を匂わせるように描いたのだ、という見方もある。 これぞロココだと思ってしまう。 さて 《ルーヴル美術館展 愛を描く》が好評らしい。 タイトルといい絵のセレクトといい、観に行きやすいように巧く作ってあると思う。 一方で個人的には『「愛」ってどういうことよ』 とタイトルの真意を断続的に考え

          ルーブル展のタイトルに違和感を覚え、そこから色々捏ね回す

          香水と絵画の話 ~PENHALIGON'S《Vaara》~

           初めての香りを試して(ああいい香りだ……)と思う時。 その『いい香り』はどの『いい香り』なのか。その『いい』の中には『好いけれど肌に乗せたら多分似合わない 』『使うシーンがなさそうだけど大変に好い』『とても佳く美しいけれど私向きではない』なども含まれる。 購入するとなるとその辺をよく見極めて『好きだし佳いものだし似合うし使う』を満たす必要が(個人的には)あり、見送ることも珍しくはない。 しかしそれでも忘れ難く、定期的に悶える羽目になる香りというのが幾つか存在する。 その1

          香水と絵画の話 ~PENHALIGON'S《Vaara》~

          【BATHTUB】ひとり反省会

          昨日、4月に書き始めていた記事をようやく書き終わった。5月には香りのイメージも全部固まっていたにも関わらず、なぜこんなに時間がかかったのか。 ①ボナールについての思考が甘いまま、まったくのパッションで書き始めてしまった ②感覚を言語化するスピードと力量不足 ざっと原因はこのへん。 ①に関してはそもそもこの『絵画を香水化する』ということ自体が偶発的な妄想ベースである為、ふわっと発生することに起因する。ふわっと始まるから、掘ったらどんな根塊が出て来るのか、根など無いのかな

          【BATHTUB】ひとり反省会

          《カジノのホール》の香りを妄想する

           いつの時代も社交場にはさまざまな人が集うもの。 元々は貴族のための場だったものが、近代以降にはブルジョワの人々も出入りしはじめる。やはりそれに連れて、その中の人間関係は複雑になって行ったようだ。それが夜のカジノともなれば一体どんな魑魅魍魎まで紛れ込んでいたことやら……と、ついサスペンスドラマのような妄想をしてしまう。 例えば女相手の詐欺師、身分を偽って潜り込んだ女、澄ました顔をして狡猾なやり手の御婦人…… 【ジョルジュ=バルビエのイラストレーション】 今回妄想する作品は

          《カジノのホール》の香りを妄想する

          2017.02.09 岐阜県美術館 観賞メモ

          改修に伴う1年の休館が決まっていたので、その前に!と訪問した時のメモの備忘録。【岐阜県美術館 https://kenbi.pref.gifu.lg.jp/】 1.山本芳翠 1850-1906 《浦島図》 1893-95 一見写実、つぶさすぎて完全にフィクションの世界がリアルに見えると言うか、最早アニメーションに近い。 年代を考えると経歴が気になるところ。西洋絵画の手法だし、明らかにポセイドンだ。イルカだし。 ハイライトの白の点がすごい。コローみたいな。髪飾りや髪の毛の末端の

          2017.02.09 岐阜県美術館 観賞メモ

          ブリュアンの一瞥

          アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック作 《アリスティド・ブリュアン》 Aristide Bruant 1893年 グワッシュ、油彩,紙 81.2×105.0cm  ロートレックの作品の前に立ったとき、額縁の向こう側の空間を覗いているような気持ちになることがよくある。タッチは必ずしも写実的ではないのだけれど、人物の何気ない一瞬の動き、その時の身体のラインや表情、目線……。 多分、見たものを《捉える目》の的確さと、それを手から筆へと素速く正確に反映させる技術の確かさがその臨場

          ブリュアンの一瞥