見出し画像

【随想】太宰治『冬の花火』

ねえ、アナーキーってどんな事なの?あたしは、それは、支那の桃源境みたいなものを作ってみる事じゃないかと思うの。気の合った友だちばかりで田畑を耕して、桃や梨や林檎の木を植えて、ラジオも聞かず、新聞も読まず、手紙も来ないし、選挙も無いし、演説も無いし、みんなが自分の過去の罪を自覚して気が弱くて、それこそ、おのれを愛するが如く隣人を愛して、そうして疲れたら眠って、そんな部落を作れないものかしら。

太宰治『冬の花火』(短編集『グッド・バイ』)新潮社,1972

 知らない方がいいことを知りすぎた。行かない方がいい場所へ行きすぎた。余計なことをしすぎた。
夢は夢だからいい。もう一度何も無かった頃へ戻れないものか。
 自由に記憶することは出来るのに自由に忘れることは出来ないのは人間の最大の欠陥ではないか。

いいなと思ったら応援しよう!

Junigatsu Yota
素晴らしいことです素晴らしいことです

この記事が参加している募集