街には人の数をゆうに超える無数の生物が共生しているのに、その生きている姿を視認する頻度に比べて、死骸或いは死にゆく姿を見る事は極めて稀だ。彼らは意図的に死を隠蔽しているように思える。彼らには人の知らない秘密の死に場所があるのか、それとも死骸は他の生物によって瞬時に片付けられてしまうのか、いずれにせよ、人が行き交う街中で最後を迎える事は殆ど無い。まるで人以外の生物には人間には死を見せないという黙約があるかのようだ。少なくとも明らかに死期を選択、調整している。人の中では未だに明確な答えや共通認識が見出されていない死に関する諸問題について、彼らは人よりも遙かに高度な知見と覚悟、及びその解答を持っており、且つその実行を為しているのではないだろうか。