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PS5 Proに12万円の価値はあるか?PCとの比較、そして買うべき人

結論:買う価値はあるが、人を選ぶ

先日PlayStation 5のPro版が発表された。自分の周囲でも買うかどうか迷っている人がいるので、緊急で果たして買うべきか否か考える記事を書いている。

前提として、真に「買うべきか」どうかは個人の情熱・価値観・経済状況によるので一概に言えない。5万円でも所得の少ない人であれば「高い」と感じるし、逆に100万円でも価値があるものにかんしては「安い」と感じるだろう。

よってこの記事では、そういう色々な事情を抱えた人々に向けて「買え・買うな」という「結論」ではなく「買うべきかどうか」を考慮する一つの「ヒント」を差し出したい。なお筆者は当然ながらスマホ、ゲーミングPC、最新世代コンソール(Nintendo Switch、PS5、Xbox環境)は全てそろえている。


また率直に言うと、PS5Proを巡る昨今の意見は、極度に一部プラットフォーマーへの盲目的な好悪もしくは昨今のハードウェア(スマホ、PC)の無関心に基づいている疑惑がある。

そこで本当に今PS5Proを買うかどうか迷っている人は、この記事を少しでも参考にいただければ幸いである。



PS5Proはどのような性能となるか

PS5Proについては以下の通り公式から発表があった。

内容をまとめると

・GPUの大きな改善
・レイトレーシングの改善、AIによる解像感向上
・価格は12万円(700ドル)
・予約は9月30日から

とある。


さて、問題はスペック部分、具体的にはGPUの改善が果たしてどの程度か?という話だろう。

結論から言うと、「現状は何も言えない」という他ない。これは発売前でなく、発売後であってもかなり検証が難しい部分だと思う。そもそもPS5に限らずコンソールハードのスペックを具体的に比較するのは、以下の理由から難しい。

・コンソールに用いられるGPUは専用のカスタムチップであり、それ単体で市販されていない。言い換えるとゲーミングPC等に用いられるGPUと簡単に比較できない。(ただし公称の理論性能やチップのアーキテクチャから、おおよそのスペックは予測できる)

・同様に、GPUを取り巻くハード構成に関してもオリジナルなので、個別パーツを組み立てたPCと比較できない。

・コンソールでサードパーティのベンチマークを運用することが難しい。

・コンソール用のソフトウェアはディベロッパーによっていずれも(PCより)きちんと最適化しているため、スペック以上のパフォーマンスを発揮する。逆に言えば最適化の度合いによって(スペックと関係なく)パフォーマンスが上下する。

そのうえ、実はSIEはスペックについて具体的な説明はしていない。直接引用すると

「PS5 Proに搭載するGPUは、現行PS5のGPUと比較してコンピュートユニットの数が67%増加しているほか、GPUメモリも28%の高速化を実現しています。これにより、ゲームプレイ時のレンダリング速度が最大で45%アップし、これまで以上にスムーズなプレイ体験が可能となります。」

とあるのだが、これは実質的なスペックに繋がる情報にはなっていないのである。(なお〈リーク〉などと称した具体的なチップの世代やアーキテクチャに対する見解に対しては、既に伝言ゲーム化している実情を鑑みてこの場で考慮しない。)



ただし上記の条件(最適化やハード構成などの優位)を考慮した上で、あくまで「おおよそ」のスペックのあたりをつけること自体は、現行ゲーミングPCで動く共通のゲームソフトを通じて比較することはできる。

例えば、PS5 Proの元になるPS5は、Nvidia製GPUでいうところの「GeForce RTX 2080」、AMD製GPUでいう「Radeon RX 5700 XT」前後の性能に相当するGPUが搭載されているのではないか、と指摘されてきた。これはSIE側の公称の理論性能が10.28TFLOPsであることや(2080は10.07 TFLOPs、5700XTは9.754 TFLOPS)、サードパーティのソフトウェアの実機テストを比較していても妥当な線だろう。

現行PS5

対して、繰り返すようにPS5Proは具体的なGPUの性能を明らかにしていない。ただ「従来のPS5と比べ、グラフィックモードとパフォーマンスモードを両立できる・めざす=60FPSの高設定」という主張や、世代や価格、有志の憶測をそれぞれ検討すると、かなり理想的な構築では「GeForce RTX 4070」(29 TFLOPS、≒RTX3080)、現実的には「RTX 4060Ti」(22 TFLOPS≒RTX 3070Ti)あたりのスペックになるのではないか、と予想される(あくまで予想)。

このレベルのGPUなら、現行で30FPSのグラフィックモードを60FPSで動かす程度の性能向上は期待できる。RTX 4070レベルは期待しすぎな感もあるが、4060Tiレベルがないと現状のAAA級を最高設定で60FPSで動かすのは厳しいのも事実。

その他、CPUやメモリにかんして具体的な情報はまだ明らかになっていないものの、このGPUのボトルネックにならない程度という範囲では現実的には絞られてくるだろう。

PS5 Proは2モードの統一を目指す 画像はYouTubeより

他にもSIEはレイトレーシングの改善や、AIによる解像感向上という改善点を挙げている。ただレイトレーシングはGPUの進化それ自体に紐づいているから当たり前の話だし、AIによる解像感向上(PSSRという独自技術)にかんしても実際に動かさない限り全くわからないし、「解像”感”」というあたりどの程度の変化があるか全くわからない。

画像はYouTubeより

他に直接スペックに関係しない特徴としては、SSD(ストレージ)が2TBもある。M.2規格の2TBSSDは平均的に2万円前後するので、これはかなり気前がいい。ただしディスクシステムがない点は残念だ。恐らく中古対策だろうが、本来PlayStationといえば「マルチメディア」が魅力で、特にPS2の歴史的ヒットはDVD再生機の需要があったことを考えると、そのアイデンティティは守ってほしかったのが本音である。(一応、別売りのものが着脱可能だと思われるが)


総合的に考えて、仮にSIEの主張する「パフォーマンスとグラフィックスの両立」という前提を信じつつ、現状のGPUの相場と照らし合わせて考えるのであれば、PS5Proは確かに大きなスペックの向上を期待できる。具体的にはGPUの世代が1~2つ分は上がっており、特に2021年は30世代など大きな進歩があったことを鑑みると、現実的に可能な範疇だろう。

しかし問題は、現実的にそれが「12万円」という前代未聞の価格に見合うかどうか。特に「その価格ならゲーミングPCでいいのでは?」という指摘も多いが、果たしてそれは正しいのか。


PS5 Proはその価格に見合う価値があるか?

結論から言えば、少なくともゲーミングPCを含むハードウェア市場の相場を鑑みて、客観的にはソーシャルメディアなどで指摘されるほどPS5 Proは「高い」わけでない。

実際に発売されるまで不明な点は多いが、現実的な予想の範囲ではPS5 Proの価格は妥当である。逆に、現段階でゲーミングPCと比較して「PCでよい」としている意見は、ハードウェア市場の相場を踏まえているとは思えない。


これは各自調べれば簡単に判明することだが、一応ここで検討していこう。まず、全体的なまとまりがあり筆者もよく利用している「パソコン工房」のサイトで、12万円で購入できるゲーミングPCを調べてみた。すると大体、以下のような構成となる。

このように、はっきり言って、12万円で組めるPCではRTX 3050程度が限界だ。正直これでは、総合的なスペックでPS5 ProはおろかPS5と同程度の性能を再現できるかも、怪しいといわざるを得ない。

現状12万円代の主力GPUはRTX 3050あたりだが、その理論性能は9.098TFLOPSであり、RTX 2080前後と言われるPS5にも劣る可能性がある。よほど偏った構成にするか、自作してパーツをどこからか抜いてくる等工夫をすれば同じ予算でも高性能なPCを組めるだろうが、そんな自作er(古語)ならPS5は眼中にないだろう。

なお、競合他社のドスパラでは以下のような価格帯であり、

TSUKUMOでも12万円では全く比較にならなかった。

ましてPS5 Proの構成、現状のAAA級ゲームを最高設定かつ60FPSで動かせるような構成となると、12万円ではまず足りない。ここでは仮説として、PS5 Proの性能は少なくともRTX 4060前後ではないかと予想しているが、その場合は14~16万円前後となる。しかも、上記のBTOはいずれもストレージがSSD 500GBで統一されており、これを2TBにアップグレードするなら2万円程度は上乗せされる。それだけで16~18万円は少なくともかかる。

実際、ドスパラがスポンサードするASCIIのサイトでさえでさえ、「もちろん、12万円前後のゲーミングパソコンでは、レイトレーシングを効かせてAAAタイトルを4Kで快適に遊ぶというのは難しい。そのため、高いグラフィックスで存分にゲームを楽しみたい人にとっては、PlayStation 5 Proというのは、かなり魅力的ではないだろうか。」と論じている。PCを販売するPCショップが「12万円で同程度のスペックは多分無理」と言っているのである。

逆に、12万円にさらに6~8万円を上乗せし、20万円出せばゲーミングPCを購入できると訴える人もいる。そもそも8万円の通常モデルに12万円で「高い」と感じる人が、さらにその2倍以上の値上げ幅のあるゲーミングPCを買えるのだろうか?その差額を受け入れられる人なら、最初からゲーミングPCを購入しても不思議ではないように思う。


そのうえでPS5とPCを併用する筆者に言わせると、そもそも、この2つを比較すること自体が正直ナンセンスといわざるを得ない。

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以下、有料部分では

・ゲーミングPC側からみた、PS5とPCの比較の的が外れている理由
・PS5 Proを買うべき人・買うべきでない人の目安
・「PS5 Pro12万円」の反響に見る、現代の半導体相場と日本ゲームコミュニティの大きな問題

について議論しています。露悪的に消費するのではなく、本気でPS5 Proの購入を検討している人や、PS5に興味がなくとも現代のゲームハード事情について知りたい人は、ぜひ購読を検討してみてください。
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