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ビッケの大冒険① 〈虹の橋を渡る〉

吾輩は猫である。名前はビッケ。

幼い時に交通事故で左前脚を失い、歩行が少々困難である。


目が覚めると、そこは虹の橋の前であった。オイラはどうやら死んでしまったようだ。ここからは下界がよく見える。ご主人たちは寂しいかもしれないが、しばしのお別れだ。

虹の橋を進むといずれ天国に到達するのだろう。天国がどういうところかわからないが、迷わず進めよ、進めばわかるさという言葉を信じて、この虹の橋を渡ることにしよう。

それにしても死んでしまえば、左前脚が元通りに治っているのかと思いきや、失ったままだったことには驚いた。この虹の橋はいったいどこまで続いているのだろう。この足で天国へたどり着くのはなかなかに厳しいといわねばなるまい。

虹の橋を渡ってしばらくすると、突然、白髪の老人から声をかけられた。見るからに胡散臭そうな老人であったが、オイラは老人にも優しい。聞けば、虹の橋の途中で悪いやつらがくるのを防いでいるのだという。どうやって悪いやつらが見分けられるのかはわからないが、ご苦労なこった。

老人の名前は兜十蔵。全く知らない爺さんだ。爺さんはよほど話を聞いてくれたのがうれしかったのか、自分の研究所へ案内してくれるという。オイラは研究所なんて興味なかったが、長い旅なのだから寄り道もいいだろうと思い、とぼとぼと老人についていった。

研究所の名前は光子力研究所。なんだか物々しい研究所だ。中は見たことのない機械でぎっしりと埋まっている。老人は話を聞いてくれたお礼にオイラの左足を作ってくれるという。話を聞いただけなのに、ありがたい話だ。よほど、話し相手に困っているのか、誰も相手にしないのかのどちらかだろう。

研究所の中は薄暗いが、一番奥にはなんとロボットがしまってあった。なんでも悪いやつらを倒すときに使うらしい。爺さんのお孫さんが載っているらしいが、(爺さんの話によれば)お孫さんは女のケツばかり追い掛け回して、ちっとも使おうとしないという。

よければオイラにこのロボットを操縦して、やってくる悪いやつらを倒してくれないかと爺さんにお願いされたが、言下に断った。オイラは自由人。気ままに生きるのが一番さ。

爺さんは哀しそうな顔をしていたが、オイラにそこまでしてあげる義理はない。はやく左足を作ってくれよ、とお願いした。

爺さんはほかにもオプションを付けてやろうかとかなんとかうるさかった。胸からビームが出たり、目から光線を放ったり、口から強風が出たりできるらしい。オイラには無用の長物だ。爺さんはオイラに断られて、またもや哀しい顔をした。

小一時間ほどたったであろうか。研究所の扉が開いて爺さんがオイラの左足をもってでてきた。どうやら完成したらしい。どれ、装着してみようか♪

あ、間違った。


なかなかサマになっているではないか。左腕のところにボタンがあって、それを押すとパンチが飛び出すらしい。ほんとうに余計なことをしてくれる爺さんだ。長居をすると、どんな改造を施されるかわからない。老人との付き合いは短いに限る。

爺さんは別れを惜しんでいたが、オイラは爺さんの長逗留の誘いを丁寧に断り、さっそく旅に出ることにした。

ありがとよ、爺さん。いつか爺さんのほら話を信じて、そのすげぇロボットを使いこなす奴が現れるといいな。楽しみにしてるよ。


って、二本足で歩いてるやないかーい!!(by ヒトコトヌシ)



つづく(のかな?)


ビッケの大冒険のテーマソングはこれです♪


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