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Woman's Bible 〜女性のためのバイブル〜


第1章:クラウン島へ出航

エミリーは興奮していた。

考古学専門の大学の研究として、マヤ文明のあった南米を訪れた時、女性について学ぶ島があることをある家族からたまたま知った。

そして、その島は、一度訪れたら43日間滞在しないと行けないようだ。しかも、そこは男子禁制らしい。

今どき、男子禁制なんて、ジェンダレスの考えからだいぶ遅れていると感じた。なので、一部のそこにいる部族のみの女性がいける場所なのかと始めは思ったが聞いてみると

「女性であるなら、もちろん行っても大丈夫よ」

そう教えてくれ他のは、去年の夏に訪れた南米のある一家のお母さんのマリアだった。マリアは、いつも笑っていた。そして、一番印象的だったのは、マリアの旦那さんのジョージが彼女を愛おしいそうに見る眼差しだった。子沢山で、8人の子供に囲まれながらも、彼女は強くて、優しくて、言葉にたくさんの愛が溢れていた。(きっと、彼女自身が素晴らしい親に育てられたのだろう。もしくは、それは彼女が持っている元々の性格なのだろう)と思っていた。


しかし、その考えが一転した日があった。


ある日、マリアが小さな小屋に行ったっきり戻ってこない時間があった。しかも、それが数日に渡ったのだ。(体調が悪いのだろうか、それとも8人の子供にやっぱりうんざりして家事や育児のストライキを起こしているのかしら?)そうエミリは勘繰ったが、一方で、そんな彼女の行動を気にも止めず、むしろ、マリアをそのままにして放っている家族の姿があった。

(みんな、なんて冷たいのかしら?)と思いながら、エミリは心配そうに小屋の前をウロウロしていると、ジョージが近寄ってきて伝えた。

「マリアは、今、神聖な時間を過ごしているんだ。だから心配しなくても大丈夫だよ」


と。


(神聖な時間?)


エミリーはその神聖という言葉が想像に眉をひそめた。


(あの小屋の中で、祈祷でも上げているのかしら?それとも、神に捧げる踊りでもしているのかしら?それとも、血を流して、生贄に捧げているのかしら?)


いろんな想像が頭を駆け巡ったところで、ほっぺを赤くしたマリアが小屋から出てきた。


心配そうな顔のエミリにマリアは、驚きながら言った。


「エミリ、どうしたの?こんなところで」


「えっと、マリアがずっとこの小屋に篭っているから、何かあったのかと思って心配で」


そう言いながら、ドアの開いた小屋の中をチラリと見ると血生臭さもなければ、生贄の気配もなかった。


「生理がもうすぐ始まるの。だから、セルフケアをしていたのよ。」


そうマリアは言って、ニッコリと笑って家へと向かっていった。


「セルフケア?」


エミリにとって初めて聞いた言葉だった。


(祈祷でも、踊りでも、流血でもなかった。では、セルフケアって何?)


質問をしたかったが、あまりにもマリアが当たり前に言うので、エミリは、知らないとは言い難かった。


だから、エミリはマリアにこう聞いた。


「マリアがしているセルフケアって、私も必要かしら?」


家のドアの前でマリアは振り返り、エミリをまっすぐ見て言った。


「必要がない人は、この世で誰もいないわ。もしもしていない人がいるのなら、その人は、愛を知らない人よ」


彼女が言った言葉にエミリは驚き、ただ呆然とその場に立ち尽くした。ハッとして、エミリはマリアがいた小屋に足を向けた。小屋に一歩踏み入ると、大きく深呼吸をしたくなった。なんの香りかはわからない。ただ、大きく息を吸って肺を満たしたくなる香りと穴の開いた木の箱が置いてあった。


(ここで何をしていたのだろう?)


ますますエミリの興味はそそられた。


それと同時に


【セルフケアをしてない人は、愛を知らない人】


というマリアの言葉が頭をこだます。


肺一杯に吸った香りに触発され、お腹の奥底で(彼女が知っていること、私も知りたい)と強烈に感じた。訳もわからず飛び込むことをしない、いつも入念に計画を立てて行動をするエミリだが、その瞬間、小屋を出てマリアのところへ駆け寄り


「ねえ、どうしたらセルフケアを学べるの?」


と聞いた。

続く

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