ドライマウスの対策法
ドライマウスという言葉を聞いたことはありますでしょうか。日本語に直訳すると乾いた口のとおり「口腔乾燥症」のことを言います。唾液の分泌量が減少することで口腔内が乾燥してしまう症状で、お口の渇きや舌の痛み、口臭、味を感じないなど様々な症状が起こります。そんなドライマウスは日本人の4人に1人が悩んでいるとも言われているそうです。ということで、まずはご自身にドライマウスの疑いがあるかどうか下のチェックリストで確認してみてください。
さて、口腔内が乾燥する原因は唾液の分泌量の減少です。唾液の分泌は自律神経の働きによるものですが、その働きが乱れることで唾液の分泌量が減少してしまいます。ちなみに自律神経は無意識で働く神経なので自分で唾液を出したり止めたりすることはできません。
中高年の方では更年期のホルモンバランスの変化や持病のお薬の副作用などが原因になることが多いそうですが、若い方でもストレスによって自律神経が乱れることで唾液が出にくくなりドライマウスになります。
基本的な対策としては、唾液の元となる水分をしっかり摂る、よく噛んで食べる、こまめに歯みがきをして唾液が出やすくなるようにします。また、唾液は唾液腺から分泌されるので唾液腺マッサージで唾液腺を刺激したり、あいうべ体操をしたり、お口の保湿剤を用いたりするという方法もあります。唾液腺マッサージ、あいうべ体操については次に挿入した2021年10月26日付いずみ中山歯科ブログをご参照ください。
前半でドライマウスについてとその代表的な対策法(唾液腺マッサージとあいうべ体操)をご紹介しましたが、後半は「旨味で唾液腺を刺激」をご紹介します。
唾液は唾液腺という器官から分泌されます。その唾液腺には大唾液腺と小唾液腺の2種類があり、大唾液腺は耳下腺、舌下腺、顎下腺の3か所あります。一方、小唾液腺は舌や口蓋、上下くちびるの裏側、頬の裏側と口腔内にまんべんなく分布しています。
この大小2種類の唾液腺ですが、唾液の分泌量は9:1で圧倒的に大唾液腺から分泌されます。唾液の9割は大唾液腺から分泌されますが、小唾液腺は口腔内にまんべんなく分布しているので口腔内の乾燥予防にはこの小唾液腺からの唾液が大切になります。
お口には味を感じて唾液を出すという機能もあります。味には甘味、酸味、塩味、苦味、うま味という基本味があります。この中の「うま味」は昆布だしに含まれるグルタミン酸やかつおだしに含まれるイノシン酸、キノコ類に含まれるグアニル酸があります。この中でもグルタミン酸が小唾液腺の刺激に優れた効果を発揮するそうです。
うま味の他に酸味も唾液を多く分泌(梅干しやレモンで唾液が分泌するように)しますが、ドライマウスで粘膜が痛んでいる方には酸味はしみて痛みを感じてしまいます。また、酸味を感じた時にうま味と同じくらい唾液が出るそうですが、うま味との違いはその持続力。うま味は痛みを誘発せず、さらに味を感じてから唾液を長く分泌してくれる効果があるそうです。
では、うま味成分でどのように小唾液腺を刺激させるかをご紹介します。準備としては、水600mlに昆布30gを入れて1晩浸すだけです。後はこれを少量口に含んで口の中全体に行き渡らせたら、ペッと吐き出します。これを1日10回ほど繰り返すようにしてください。ドライマウスの方は体質や持病、お薬、ストレスなどが原因で自律神経が正常に機能せずに「唾液を出せ」という正常な命令が出せなくなっています。昆布だしの「うま味」による刺激には、唾液腺を直接刺激するだけでなく、唾液の出る感覚を取り戻す目的もあるので、1日10回ほど繰り返すことに意味があります。これを2~3ヶ月ほど続けると唾液を出すという機能が戻ってドライマウスが解消されることが多いです。すぐに止めるとまた元に戻ってしまうので、継続して行うようにしてください。