雨の神
雨の日も椋鳥は鳴く
欅の枝に群れに群れ
鳴くに鳴く
世界中の欅の葉を集めたよりも多く
ただ 鳴くに鳴く
まるで
打ちまちがえたメールが
空を飛び交うように
少女は心を折り畳んで
雲母のように光る小箱にしまう
涙が渇いても
まだ残っているものがある
ぼくが君だった頃
ため息には価値があった
昼間に
空に飛んで行った魂が
夜には欅めがけて帰ってくる
君はまだ泣くことができるだろう?
血管の中には
涙の成分が流れているから
椋鳥は鳴け
空に隠れていた雨の神が
寝ぼけた顔を出すまで
玄関では
コップの中で
紫陽花が暗算を始めている
(詩集『夕陽と少年と樹木の挿話』より)
今回note投稿にあたり大幅に加筆修正した。