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風見鶏

東から昇る太陽にはやさしさが
不足しているが 西に沈む太陽には
笑いがある と風見鶏は生まれる前から知っていた
一枚のトタン屋根として
さみしい少年の棲家を被っていたいた時分から

少年はいま 大きくなって
街のアパートに住んでいる

風見鶏は少年の部屋の外で
毎日 風の声を聞いている
少年は風見鶏を 太陽の光で塗ったので
朝と夕暮れには 窓ガラスが赤く燃え
夜になると 風見鶏の羽ばたく音が聞こえる

少年はきのう
初めて部屋に恋人を呼んだ
風見鶏はきょうから
どこにもない方位を みつめるようになった

 (詩集『夕陽と少年と樹木の挿話』第2章「冬の告知」より)




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