兵隊だったことがある
JR灘駅を
山側に歩けば王子公園に
海側に歩けば
私が毎日働いていた会社に
行き着く
灘駅から会社に向かう道の途中に
肉とマッコリがたまらなく旨い焼肉屋がある
毎朝八時から九時前まで
何百人という社員がその店の前を通った
ザッ ザッ ザッ ザッ
兵隊さんが行進してるみたいやったで
あんたらの足音
韓国人のおばちゃんが私に言った
オレは兵隊だったのか オモニ
ひとは殺さずに
自分を殺していたよ
何かを忘れて足踏みばかりしていた
殺した自分を取り戻さなければ
割が会わない
いつだったか
店に電話した時のこと
「オモニいる?」
「あんた誰や」
店のおっちゃんだった
オモニを愛していたんだね アボジ
そのアボジも今は亡く
会社の名前も場所も変わった
オモニはまだあそこで店をやっている