安部公房展に行った話
先日、神奈川近代文学館で開催されている安部公房展に行ってきた。普段こういった展示会にはあまり行かないのだが、安部公房展は行くしかないと思い行ってみた次第である。
私が安部公房の作品に触れたのは、『砂の女』が初めてだった。書店に行ったときに見かけて、POPにをみて興味を持ったのだ。そのあとに読んだ著作は『カンガルー・ノート』であった。あらすじがほぼボーボボなんて言われていたが、実際に読んだ展開もボーボボ味があった。
さて、安部公房展の話である。生誕100年を記念して開催されたこの展示会は、約500点もの資料を通して安部公房の全貌に迫ろう、そして彼の作品のテーマが持つ意味について問い直そうというコンセプトにて開催された。
展示資料は多岐にわたる。刊行当時の著作、肉筆の原稿、読んだであろう本、執筆に使ったペンやワープロ、写真撮影に使用したカメラとレンズ、構想メモ、他の作家とのやりとりした書簡……。本当に多岐にわたる。
その中で印象に残ったものをひとつあげるとすれば、やはり肉筆の原稿だろう。小説の原稿だけで無く、詩ノート、戯曲なども展示されており、その多くに細かく赤字が入っていた。
展示された資料の中には、今回が初公開のものもある。書きはしたが、結局未発表に終わったものもあったのだろう。そういったものにも赤字が入れられていたのである。そのとき書いているものがたとえ発表されなかったとしても、書き続けるということが大切なのだと思う。
印象深い展示会だったが、細かい部分を見きれていないように感じる。会期中にもう一度行きたいと思っている。安部公房展の会期は、12月8日までとなっている。興味のある方は是非。