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「歴史」ではない、学問としての「歴史学」

ぼちぼちと(本当にそれはもうぼちぼちと)歴史を勉強しはじめて、半年以上が経過した(過去記事参照)。他にもいろいろ勉強していたり、一時期は体調に問題があったりで、そこまで進捗は芳しくないけれど、諦めはせずに続けている。

主に高校生を対象とした教科書や参考書を使って勉強している中で、最近はその背景となっている(はずの)「歴史学」という学問分野についても興味が湧いてきた。そんなときにちょうどSNSで『歴史学入門』という今の私にぴったりなタイトルの本を見かけたので、手に取ってみた。

『歴史学入門』前川一郎編

この本は、大きく2つの部で構成されている。

まず第Ⅰ部は「歴史学の見方と方法」と題されていて、歴史学という学問全体に共通しているポイントや、方法などについて説明している。

初めて知ることが多い中で、特に私の印象に残ったのは、第1章第2節「歴史学は事実にこだわる――第一のポイント」という箇所だった。
この節は、前々から「歴史と言ったって結局は過去目立っていた人たちの『お話』でしかないし、なかったことにされた事実だってきっといっぱいあるんだし」と捻くれた見方をしていた私に対して、とても丁寧に歴史学という学問がとる態度を説明してくれるような一節だった。

曰く、「突き詰めると、事実など人間が恣意的に認識しうるにすぎない」と問題視する見方があることは把握しつつも、「それでも歴史学は、事実の〈不確かさ〉を最小限に抑えることができるという前提で話を進め」るとのこと。もちろんこの〈不確かさ〉を最小限に抑えるために、歴史学者が踏襲している歴史学の基本的な作業工程というものも紹介されていた。
わたしが考えることなど疾うの昔に議論されつくされた上で、一つの学問領域としての前提を置いて、方法を確立しているということだった。

続いて第Ⅱ部は、「過去を通じて現在を知る」と題されていて、グローバリゼーション、国民と民族、人種主義、ジェンダー、経済成長と格差、帝国主義、戦争というそれぞれのテーマについての実例について述べられている。

第Ⅱ部の全体を通して、「何事にも今に続く歴史があって、全ての歴史は今に地続きなものなんだな」と改めて実感した(当たり前だけど)。「遠い昔のことを知って何になるんだろう」と思っていた時期もあったけれど、遠い過去を見た後に、現代をそれと同じ視点で見ることで、初めて分かることもあると理解した。

また、歴史学というのは、「時間横断性」と「地域横断性」を持っている、という考えを、実例を通して深く理解できたように思う。たしかに、時間と空間の2軸で物事をとらえようと思った時には、(時間軸のスパンがかなり短くない限り)必ずそこに歴史が登場することになるし、何を探求するにしたって歴史学は避けられない学問なのだと分かった。

この一冊を通して、「歴史学」そのものについても大まかに理解することができたし、「歴史」を学ぶ意義についてもより深く知ることができた。

本の中でたくさんの推薦図書が紹介されていたので、引き続き色々読んでみようと思う。推薦図書として紹介されてはいないものの、E.H.カーの『歴史とは何か』は複数の章で引用・参照されていたので、この本もぜひ読んでみたい。







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