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「歌う」ことは素敵な健康法なのだ、というのりこちゃんの教え
のりこちゃんは親友だ。大学時代に知り合って、たくさん大切なことを教わってきたけれど、3年前にガンに連れられて逝ってしまい、いまはお空の上にいる。
その、のりこちゃんと実によく、カラオケに行った。何時間も、よく歌った。そして笑った。
歌うことは大いなる娯楽であり、体の細胞を活性化させる素敵な健康法であるということを教えてくれたのは、彼女だったと思う。カラオケボックスの中で自らの歌に酔ってしまう人も多い中(笑)、彼女が教えてくれたのは「自らが楽しみつつ、人も楽しませる歌」だった。
We are the worldを、すべての登場人物の声色で歌い分けることができた。一方で、越路吹雪もアンルイスもそつなくこなし、洋楽から昭和な歌を片端から歌い尽くしたと思えば、新曲を仕入れることも忘れず、笑ってふざけて、あれは本当に、贅沢で貴重な時間だったと改めて思い出している。
待ち合わせにはいつも、大きな袋におかしなコスプレ道具や、自前のマラカスや扇子なんかを詰め込んで現れた。楽しむことに、とにかく全力だった。
そんな彼女の周りに多くの人が集まって、昭和カラオケ倶楽部が作られ、そんな貴重な時間を一緒に過ごす仲間になった。
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のりこちゃんが逝ってから、カラオケに行く意味を失って、3年がたった。
もう、誰と行っても、あのときのように楽しめないと思う。あの時間と比べて寂しい思いをするのがいやなのかもしれない。
のりこちゃんは亡くなる1年ほど前から、大きな合唱隊に参加して、本格的に「歌う」ことに向き合っていた。今度、ブダペストでコンクールがあるから行くんだ、とうれしそうに報告していたことを、昨日のことのように思い出す。
「歌う」ことで、全身を覆い尽くしつつあったガンと戦う力を生み出していたんじゃないか。
”抗がん剤の副作用でね、足の指の爪がなくなっちゃって靴が履けなくなっちゃった。そしたら駅前でナースサンダルみつけたのよ。見て見て、めちゃ楽だよ”
そして白いサンダルで飛び跳ねながら、Qeenを歌った。
”こないだ地下鉄待ってたら、電車が入ってきたときの突風でかつらが飛んじゃって! 隣にいた男の人が、これ、、、って申し訳なさそうに拾ってくれたのよ、あっはっは”
私たちは釣られてあっはっは、と笑い
笑いながら、深く深く、多くのことを教えられ
歌いながら、生きることの奇跡を思った。
コロナでブダペストのコンクールが中止になって
カラオケも行かれなくなって
そこからは早かった。
3年たって、なんとなく身辺が落ち着いてきて
何かを始めたいと思ったときに
あ
歌おうか
と思ったのは、そんなのりこちゃんの教えがあったからなのだ、と思う。
私は私なりに、
楽しむために、生きるために
声を出し、誰かと共有し、音と交わる時間を慈しみたい。
やっと、そう思えるようになった。
息子が小学生のときに買ってくれたギターを持って
昨日、教室の門を叩いた。
歌うって、素敵な健康法なんだよ。
のりこちゃんが、お空の上でにこにこ言っているように思う。
歌うって、人生の大切なことのひとつだったんだね。
ありがとね。