わからない、けど面白い

 本当に不思議なんですが、どうして「わからないのに面白い」ということがあるんでしょうか。

 どうも、椎名いゆです。
 最近読んで(特に文系のみなさんに)「これはオススメだ!」と強く感じた本を紹介します。


『時間は存在しない』カルロ・ロヴェッリ 富永星訳 NHK出版


 きりりとした青地に白抜きのクレバーなたたずまいでもう、本の顔つきがいい。絶対面白いこの本、と思って買ったらやっぱり面白かった。
 本書は3部構成。なんですが、1部で既にタイトルの「時間は存在しない」は説明されてしまいます。それ以後で、じゃあどうして時間を感じるのか?まで言及してくれる安心設計。
 インドはシヴァ神の優雅な踊りから始まったと思ったら、あっという間にめくるめく知識の渦に飲み込まれます。私からすれば一章から「え?そうなの?」という驚きの連続。星間旅行の末年齢が離れてしまうSFを読んだことはありませんか?この本を読むまではSFの特殊設定だと思っていました。恥ずかしい。
 この本のすごいのは、もうほぼわからないのに面白いところです。わからないけどすごい。わからないけど読みたい。わからなくても楽しんでいいという、あまりにもひらかれた本です。
 帯に物理学物理学とやたら書いてありますが、中身はそれと同じぐらい哲学と霊感に満ち溢れた、なんとも融合的な手触り。全ての学問は哲学から始まったといいますが、なるほど全てはつながっているんだなぁという感動すら伴う読書体験になること間違いなし。
 そして論に論を重ね宇宙の果てにまで意識を巡らせたのち、きちんとリズムしている自分の鼓動を確かめられるような、ちょっとそういう、あったかい本でもあります。
 物理学を勉強して再挑戦するもよし、その詩的な表現に心を安らげるもよし、何度でも手に取りたくなる本です。理系のあの人にわからないところを聞いてみてもいいかも。

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