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【いよなん12/1新刊サンプル】轟木 由紀子『あの日の夜を探して』

みなさま、はじめまして。
あるいは、おひさしぶりです。

いよなん、でございます!

恒例になりつつありますが、今回も、『いよなん』第2号に掲載される作品のサンプルをあげていきます!
これまでにあげた分に関しては、↓ のマガジンにまとめてありますので、ぜひ目を通してみてくださいね。

今回、紹介するのは、轟木 由紀子さん小説『あの日の夜を探して』です。

いよなんサンプル #7

作者:轟木 由紀子
タイトル:あの日の夜を探して

あらすじ

飄々とした長女と、おっとりした気の優しい弟――
平凡な家族に起きた、ある夜の事件簿を母親の視点から描きます。

本文サンプル

 遥斗、優花のふたつ年下の弟、は、言われる前から動く、いわゆる空気を読む子であった。我儘放題の姉を見て育ったからか、私が口を出さなくても、前日の夜には翌日の時間割を見てランドセルに教科書やノートをセットしていた。

「遥斗は本当にいい子ね、優花、少しは弟を見習いなさい」

 そんな小言を言うのが常だった。
 ただし、成績は優花の方がずば抜けてよかった。帰宅後夕飯前にきちんと机に向かって宿題をし、終えてからテレビを観にリビングにやってくる遥斗と、その間ずっとリビングでスマホをいじったりひたすらダラダラしている優花では、当然遥斗の方が成績優秀になりそうだが、そうではなかった。優花はよっぽどヤマをかけるのが上手いのか、授業中に全て記憶するという天才的な頭脳を持っているのか定かではないが、学年で三十番より下には落ちたことがなかったのだ。優花本人もしれっと、

「私、地頭がいいんだよね」

 と塾の先生に言われた褒め言葉を繰り返していた。ちなみに塾の先生は、その後に「だけど、努力しないからなあ」と続けていたのだが。

 遥斗はそんな飄々とした姉の陰に隠れがちではあったが、姉からの細かい指図に従っているうちに、気配りができる、優しい子に育っていた。私は遥斗が可愛くて仕方がなかった。なんとか姉の陰から出て、光の当たる場所に立たせたくて、姉のやや不得意な英語を習わせたり、ジュニアサッカーチームに入れたりして、姉に勝てるという自信を持たせてやりたかった。


よくあるような「平凡な」家族。そんな彼らに何が起こったんでしょうか……。
そして果たして、そこに描かれる真相とは。

気になる物語の展開と続きは『いよなん』第2号に掲載されます!

『いよなん』第2号は、
西3・4ホール
ぬ-21
に場所をいただいています!

みなさんのご来場を、お待ちしております!

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