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目で見て美しい乱数
そろそろ数学とアートの融合について語りたい。
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純粋な乱数はつくるのが難しい
もう10年くらい前の話だが、
IT機器の売り込みをしていた頃、たまたまアポがとれた統計数理研究所のすごくエラい方と2人きりで30分ほど会話したことがある。
この方は「乱数」の研究をしており「いかにランダムを作ることが難しいか」「真の乱数など世の中にそうそう存在しない」とアツく語っていた。
当時の僕は会社員なりたての若者で学生相手に研究内容を語ってる感覚だったと思う。
若輩者にアツく深く語ってくれて素晴らしい方だ!と当時は感じたが、
今思うと知識の整理とかただただ自分が話したいだけだったかもしれない。
その後、「サイコロの目は必ずしも1/6ではない」という知識をたまたま得る。サイコロの目をつくるために掘った穴の影響でそれぞれの目が出る確率は実は1/6ではない。
そして最も出やすい目は「5」だと聞いたことがある。
その理由は「5」のウラが「2」で 「5」の目はくぼみを5カ所掘っているのに対し、「2」の目では2カ所しか掘っておらず、わずかだが質量の差が生まれ「5」が上になる可能性が高いらしい。
そのとき、あの数理研のすごくエラい方が
「純粋な乱数はマジでむずい」(意訳)
と言っていたことを思い出した。
乱数の現実世界での活用
最近はあまり流行っていないのかもしれないが、
ラバランプというインテリアがある。
液体の中で光る浮遊物が動いているコレである。
このラバランプは油と色がついた水が中に入っている。底についたライトの光熱で油と水の対流が生まれる。その対流により色がついたほわほわが上にいったり下にいったりする。
単なるインテリアだと思っていたが、この油と水の動きは予想不可能なランダムとなるため、「乱数発生器」として特許が取られているらしい。
そしてCloudflareというセキュリティベンダーが、このラバランプを通信の暗号化のための乱数発生器と使用している。しかも、このラバランプをインテリアとしても飾っている。コレである。
https://www.cloudflare.com/ja-jp/learning/ssl/lava-lamp-encryption
👆のリンクに書いてあるが、
- Cloudflareは本社ロビーの壁に約100個のラバランプを配置し、それ撮影するカメラを設置
- カメラは定期的にランプの写真を撮り、その画像を数字に変換
(色のピクセルを独自の数値へ変換)
- これにより完全にランダムな数列をつくり安全な暗号キーを作成
実用的かつアートになっているラバランプ。
すごい。目でみても美しい。
ちなみにこのロビーはヒトが行き来する。
ランプとカメラのあいだの障害物と認識し、これもランダム性をつくる要因になっているので、この会社のロビーにいけば暗号キーの一部になれる。興奮する。
乱数を研究していたあの方はラバランプも当然知っていたのだろうか。
あの雑多な研究室にラバランプがあったような気もする。なかったような気もする。
実用性だけ追えば、できるだけ早く乱数をつくれるほうがセキュリティが高いのは言うまでもない。最近では1秒間に188億個もの乱数を生成できるようになっているらしい。途方もない。
なにとぞ。