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紙は間違いに気づきやすいのか?

紙と画面で生じる「違い」

紙に印刷すると間違いに気づきやすい。なんとなくそんな気がする、という人が多いのではないか?自分もそうだ。

この理由を「分析モードとパターン認識モード」という概念で説明する意見がある。

「紙」で見ると間違に気づく? | リコー経済社会研究所 | リコーグループ企業・IR | リコー

リコー経済社会研究所

紙に印刷して読むとき、すなわち反射光で文字を読む際には、人間の脳は「分析モード」に切り替わります。目に入る情報を一つひとつ集中してチェックできるため、間違いを発見しやすくなるのです。

これに対し、画面から発せられる透過光を見る際、脳は「パターン認識モード」になります。送られてくる映像情報などをそのまま受け止めるため、脳は細かい部分を多少無視しながら、全体を把握しようとします。細部に注意をあまり向けられないので、間違いがあっても見逃してしまう確率が高くなるというわけです。

Print Compassより

この説明は直感的には納得できる。でも、科学的な根拠が十分とはいえないような気がしている。

過去の研究論文(2015年)では、紙と液晶ディスプレイを比較して「紙の方が誤り発見数が多い」という結果がある。ただし、その差は統計的に明確な有意差とはいえないようで、「慣れ」や「作業環境」が影響している可能性もある。
表示媒体の違いが誤りを探す読みに与える影響 | 文献情報 | J-GLOBAL 科学技術総合リンクセンター

心理的効果が鍵

実は、私は紙だから間違いに気がつくのではなく、「気持ちの切り替え」が紙の利用によって行われるからではないか、と考えている。

同じ文章を何度もディスプレイ越しで確認する。すると、脳がその内容を覚えてしまって誤りを見逃しやすくなる。一方、紙に印刷すると新しい視点で文章を読む感覚が生まれる。これは一晩寝かせてから文章を読み直すのに似ている。

「紙に印刷する」という行為自体が、作業に一段の重要性を付加する効果がある。心理的には、「紙にする」ことでタスクに対する集中力が高まり、注意深く文章を確認するようになる。

科学的根拠よりも広まりやすい「直感」

「紙は間違いに気づきやすい」という理論が、SNSで何度かバズっているのをみた。拡散するのは、「自分の経験と一致する」と感じる人が多いということが大切で、科学的かどうかよりも共感や体験が情報の受け取り方において重要に見える。

結局、言いたいのは

「紙が間違いに気づきやすい」と感じるのは、科学的根拠よりも心理的効果が大きいと考える。心理的効果をつくるために紙に印刷してみるにもいいし、1日空けて再度チェックしてみたり、場所や環境を変えてみるのもいいだろう。


出典

「紙」で見ると間違に気づく? | リコー経済社会研究所 | リコーグループ企業・IR | リコー
「紙」の方が誤りを見つけやすいのか、我らの時代のコピペ的フォークロア - ネットロアをめぐる冒険
脳科学で実証!「画面」に勝る「紙」の強みとは?|印刷業の売上拡大ならPrint CompassRICOH

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