語彙の知識が少ない子には
おはようございます。いわたコトバのそうだん室の言語聴覚士の岩田です。
今日は、「語彙の知識が少ない子には」というテーマでお話ししたいと思います。発達障害のあるお子さんの中には、言葉を理解したり、適切に使ったりすることに難しさを感じる子がいます。今回は、そんなお子さんたちの「語彙力を育てるための工夫」をご紹介します。
語彙力が少ないとどんなことが起きる?
まず、語彙力が少ないと、どんな困りごとが出てくるかを考えてみます。語彙力が少ない子には、以下のような特徴が見られることがあります。
- 自分から話したがらない:言いたいことがうまく表現できないので、黙りがちになることが多いです。
- 短い言葉で簡単に済ませる:詳しい表現ができないため、内容の薄い会話になってしまいます。
- 言葉が出てくるまでに時間がかかる:適切な言葉を思い出せず、代わりの表現を使うことが多いです。たとえば、「定規」を「線を引くもの」と表現するなどです。
- 時間に関する言葉が苦手:「昨日」「いつも」「毎日」などの言葉をうまく使えず、過去や未来の話が混ざってしまうこともあります。
- 言葉の意味の境界があいまい:たとえば、「手」と「腕」の違いがわかりにくかったり、似た意味の言葉を混同したりします。
これらの特徴は、単に「語彙が少ない」というだけでなく、言葉を理解し表現する力がまだ育っていないことが原因で起こりやすいものです。
語彙力を育てるための工夫
では、具体的にどのように語彙力を育てていくか、その方法をいくつかご紹介します。
1. ことば遊びを取り入れる
ことば遊びやなぞなぞは、子どもたちの語彙力を伸ばすためにとても効果的です。例えば、以下のように言葉に関するヒントを出していきます。
「ハガキを入れるところで、赤くて道路に立っています。な~んだ?」(答え:郵便ポスト)
このように、ものの特徴や用途を説明しながら「これは何だろう?」と考えさせることで、自然と新しい語彙が増えていきます。
また、「カルタ遊び」もおすすめです。カルタでは「辞書ってどういうもの?」といった質問をして、子どもが考えた特徴を読み札にして遊ぶことができます。「辞書は、言葉の意味を調べるときに使う本だよ」といった具合に、特徴を言葉で表現する練習ができるのです。
2. メタ言語的な活動を取り入れる
メタ言語的な活動とは、言葉の意味を客観的に考えたり、説明したりする力を育てる活動のことです。たとえば、「走る」と「歩く」の違いを考えてみたり、「結ぶ」に対して反対の言葉を考えてみたりすることが、メタ言語の力を育てます。
学齢期になると、意味を調べる練習が始まりますが、これはまさにメタ言語的な活動です。子どもたちが自分で「これはこういう意味かな?」と考える時間を持つことで、少しずつ自分の語彙が増えていきます。
3. ヒントを出し過ぎないようにする
子どもに語彙を教えるとき、あまり説明し過ぎないことも大切です。言語発達には、子ども自身が考えて表現する経験がとても重要です。ヒントを出し過ぎてしまうと、子どもは自分で考える時間がなくなってしまい、覚えるチャンスを逃してしまいます。
例えば、子どもがある言葉を説明しようとして、うまく表現できないときには「こういう言い方はどう?」とヒントを出す程度にとどめましょう。そのヒントで自分で考えて答えにたどり着ければ、子どもは達成感を感じ、「自分で言えた!」という自信がつきます。
4. 具体的な言葉を使って一緒に話をする
子どもとの日常の会話の中でも、「この言葉はこういう意味だね」とか「この場面ではこんな言葉を使うよ」といった具合に、少しずつ言葉の使い方を教えていきましょう。
例えば、「昨日は楽しかったね」と一緒に振り返るとき、「昨日」という言葉を意識的に使ってみます。過去の出来事や、時間の表現に少しずつ慣れていくことができます。また、今の話と未来の話の区別を教えるために、「来週は何をする?」などの言葉も日常の中で取り入れていくと、時間の概念も自然と学べます。
お子さんの成長を焦らず見守ることも大切
お子さんの語彙力が少ないと、どうしても「もっと話してほしい」「表現を豊かにしてほしい」と思ってしまうかもしれません。しかし、語彙力の発達はその子その子で違いがありますし、焦らず、少しずつ増やしていくのが大切です。日常生活の中で無理なく、ゆっくりと関わりながら、少しずつ語彙を増やしていくことを心がけていきましょう。
語彙力が増えると、子どもは自信を持って話せるようになります。「言いたいことがちゃんと言える」という成功体験が、これからの表現力をどんどん引き出してくれます。ぜひ、今日ご紹介した工夫を取り入れながら、お子さんと楽しく語彙を増やす時間を過ごしてみてくださいね。
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