
『コントな文学集』
【目次】
『あたたかい世界へ』
『パンチラ』
『ADさん、俺って口臭いですか?』
『もったいないおばけ』
『ギャップに弱い女マリコ①』
『ギャップに弱い女マリコ②』
『ギャップに弱い女マリコ③』
『愛妻弁当じゃなかった』
『優しい嘘』
『多様性を受け入れる時代』
『憧れのスーパースター』
『金持ち喧嘩せずみたいな事?』
『キラキラひかる卒業式』
『ママからのサプライズ(驚き)』
『娘は反抗期?』
『田中さんの劣等感』
『停止(フリーズ)刑事・国分寺卓郎』
『SM倶楽部100人の女王様』
『不謹慎』
『人間扱いしてほしい』
『さわりたい』
『お義父さんの笑えない面白い話』
『バレないようにチ○ポジを直しなさい』
『親子』
『やめてよ、お母さん』
以上25編収録
コントな文学『あたたかい世界へ』
定年退職したら妻と娘から生ゴミ扱い。
住宅ローンを払い終えたマイホームで俺は居場所と人権が無くなった。
こんな俺に温かく接してくれるのは暖房付きの便器だけになってしまった。
便座に尻と太ももと心を温めてくれて涙が溢れる。
自宅のトイレという小さな世界だけが唯一人間に戻れる空間だ。
人肌のぬくもり、叶わぬならば・・・
「ウォシュレット、スイッチ ON」
あったかいなぁ…
コントな文学『パンチラ』
春風のイタズラで、
見えた女子高生のパンチラが、
嬉しくて、嬉しくて、
今日1日、幸せな気分で過ごした自分が何だか、
虚しくて、切なくて、
寝る前泣いた50歳の夜。
コントな文学『ADさん、俺って口臭いですか?』
おはようございます。
本日の撮影はキスシーンがありますので、
楽屋に歯ブラシ、糸ようじ、舌ブラシ、
歯磨き粉、モンダミン、マウスウォッシュ、
フリスク、ミンティア、口臭サプリメント、
さわやかミント系のガム、イソジンうがい薬をご用意したので使って下さい。
コントな文学『もったいないおばけ』
「こんばんは。もったいないおばけですけど」
帰宅した俺の目の前に突如、もったいないおばけが現れた。
「お前、何で俺が来たか分かるか?
自分が何したか分かってるか?」
「分からないです。すいません…」
「20代の巨乳美女の同僚から一夜限りのお誘い(後腐れ一切無し)を観たいドラマがあるから断るってお前どんだけもったいない事しとんじゃいっ」
「す、すいません」
「ちなみに録画予約はしてなかったんか?」
「録画予約してました」・・
・・・「狂っとんか、ワレ?」
「最終回だったんでリアルタイムで観たかったんです」
「あの女はFカップなんやぞ、Fカップ!
録画予約してるドラマの最終回をリアルタイム視聴するよりリアルのFカップ見んかいボケッ」
「次から気を付けます。もったいない事をしてすいませんでした」
「二度ともったいない事すんなよ」
謝ったらもったいないおばけは帰ってくれた。
食べ物を粗末にする事以外でも、もったいないおばけって来る事あるんだなぁ…
さぁ…ドラマ観よ。
コントな文学『ギャップに弱い女マリコ①』
え?
ヤクザなのに?
背中に阿修羅の刺青が入ってるのに?
ケジメ付けて指も詰めてるのに?
お寿司サビ抜きなの?
カワイイ❤️
コントな文学『ギャップに弱い女マリコ②』
5778円を割り勘だから…
え~と…
まず5000÷2で2500だから…
ん~と…
スマホの電卓で計算しますね。
東大卒業後、マサチューセッツ工科大学に入学した秀才なのに暗算苦手なんてカワイイ❤️
私が奢ってあげる~❤️
コントな文学『ギャップに弱い女マリコ③』
え?
超一流のマジシャンなのに?
手先が器用で鮮やかなコインマジックができるのに?
華麗なトランプカードさばきができるのに?
両手使って頑張ってるのに全然ブラジャーのホック外せないじゃん!
童貞だったの?カワイイ❤️
マリコがお・し・え・て・あ・げ・る❤️
コントな文学『愛妻弁当じゃなかった』
江里子じゃなかったんですね…
まさか、お義父さんが毎日ハートマーク入りの手作り弁当を僕に用意してくれていたとは思わなかったです。
コントな文学『優しい嘘』
江里子のじゃなかったんですね…
まさかお義父さんの物だったとは…
Tバック・・・
似合ってますよ、お義父さん。
コントな文学『多様性を受け入れるの時代』
分かりました、お義父さん。
これからはお義母さんと呼びます。
きっと江里子も受け入れてくれると思います。
コントな文学『憧れのスーパースター』
二刀流で活躍するメジャーリーガーよりも
サムライブルーな日本代表選手よりも
低収入、低身長、非イケメンなのに
女の子にモテて、いっぱい遊んでる
バイト先の矢沢先輩の方が
フリーターで女の子にモテない童貞の僕の
憧れのスーパースターっス。
コントな文学『金持ち喧嘩せずみたいな事?』
「男が唯一身に付けて良いアクセサリーって腕時計だと思うんだよ」
30歳を迎える年齢で開催された高校の同窓会で100万円超えの腕時計を自慢する同級生。
自分自身に値打ちを見出だせない薄っぺらい男に限って金目の物で着飾ってマウントを取ろうとする。
だが、許せる。
俺は女性経験人数が100人を超えている。
そしてお前が、かつて高校時代に片思いしていた女は俺の12人目だ。
『金持ち喧嘩せず』って、こういう事を言うのかな?と思いつつ俺の眼は今夜お持ち帰りできそうな女子を探している。
コントな文学『キラキラひかる卒業式』
「3年1組 赤木 光宙(ピカチュウ)」
「はい」
「岩田 龍飛威(ルフィ)」
「はい」
「上野 今鹿(ナウシカ)」
「はい」
「遠藤 木星(ジュピター)」
「はい」
「尾形 別世界(アナザーワールド)
「はい」
「加藤・・・
このクラス、キラキラネーム多いなぁ…
コントな文学『ママからのサプライズ(驚き)』
明日はママのお誕生日。
サプライズでママを驚かせたいから、
ママに内緒でパパとプレゼントを買いに出掛けたら…
ママが知らないおじさんと、
楽しそうに腕を組んで歩いていた。
コントな小説『娘は反抗期?』
里山修司42才 会社員。
幼馴染みの同級生と結婚して16才の高校生になる一人娘がいる。
1週間前から娘が突然、口を利いてくれなくなったし、目も合わせてくれなくなった。
それも父親の私だけじゃなく妻に対してもだ。
反抗期か?
それにしても突然過ぎる。
何がきっかけで反抗期が始まったのだろうか?
さっぱり分からない・・・
*
1週間前に遡る。
「恥ずかしいからバイト先には絶対来ないでね」と釘を刺されているので娘が出勤する前に妻と、娘のアルバイト先のゲームセンターの様子を見に行った。
もちろん娘にはナイショでだ。
週末のイオンモール内のゲームセンターは子連れの家族も多くガラの悪い客はいないようだった。
スタッフも丁寧に接客してくれて感じが良かった。
娘の初めてのアルバイト先がゲームセンターという事で過保護と思われるかもしれないが心配で見に来たけど安心した。
様子見ついでに私達夫婦は学生時代の頃のようにゲームセンターを楽しんだ。
*
「里山さん、面白い履歴残ってるよ。見る?」
「履歴?見たいです」
一般的にあまり知られていないが、プリクラで撮影した画像の履歴を店員は見る事ができるのだ。
「これ、午前中に来た中年の夫婦なんだけど、最新のプリクラの使い方が分からないからって説明してあげたんだよ。
それで後で履歴見てみたら、はしゃぎ過ぎててウケるのよ」
そこには40過ぎの両親がコマネチしてる画像。
バカップルがプリクラでやる定番の仲良しキスショット画像。
調子が出てきて上半身、裸になった父の乳首を変顔でつまむ母の画像。
下も脱いで白ブリーフだけになってY字バランスを取る父と隣で大爆笑する母の画像が残されていた。
コントな文学『田中さんの劣等感』
「じゃあ我々から順番に自己紹介していきましょうか。課長の鬼龍院です、宜しく」
「係長の長曽我部です、宜しく」
「主任の餓鬼地獄です、宜しく」
「社員の修羅場千回です、宜しくお願いします」
「社員の鬼畜国家です、宜しくお願いします」
「新人の毒味噌汁です、宜しくお願いします」
「派遣の巨乳祭です、宜しくお願いします」
「パートの世界不思議発見です、宜しくね」
「清掃のおばちゃんの無限法力最大出力です、宜しくお願いします」
「九州支店から本日付で名古屋支店にやって参りました、田中です。
普通の名前で何だかすいません。
皆さん、よろしくお願いします」
コントな文学『停止(フリーズ)刑事・国分寺卓郎』
俺の名前は渡辺 浩市
世田谷通り警察署に所属する新米刑事だ。
停止(フリーズ)刑事の異名を持つベテラン敏腕刑事の国分寺卓郎とコンビを組んだ初日に起きた事件について物語ろう。
*
停止(フリーズ)刑事、国分寺卓郎は語る。
「!」だけでは足りない。
「?」だけでもダメだ。
大事な事は対象者に「!?」
驚きとクエスチョンを植え付ける事だ。
そうすれば数秒だが思考と動きを止める事ができる。
思考と動きを止めるという事は対象者の時を止める事ができるんだ。
人は驚き、瞬時に理解できない事が起きると停止(フリーズ)するんだよ、新米刑事君。
*
マンションの屋上から飛び降り自殺しようとしてる若い女がいるという通報が入り俺は国分寺さんと現場に駆け付けた。
現場では警官隊が飛び降り自殺しようとしている女とマンションの周囲に群がる野次馬の対応を始めていた。
「新米刑事君。
君は下から拡声器マイクを使って女に説得を続けろ。
私が対処するまで女が飛び降りないように時間を稼ぐんだ。
警官隊は飛び降り自殺防止用のエアーマットを準備してくれ」
俺は現場で指揮を取る停止(フリーズ)刑事に問うた。
「国分寺さんはどうするんですか?」
国分寺はニヤリと笑って答えた。
「ちょっと時を止めてくる」
警官2人を引き連れ国分寺はマンションの屋上に向かった…
*
屋上に到着するなり国分寺は女に向かって叫んだ。
「ふざけんなぁっ!
俺が先に飛び降りようと思っていたんだぞ!
どけぃっ」
国分寺は白ブリーフ1枚の姿になっていた。
女を尻目に国分寺はマンションから飛び降りた。
白ブリーフ1枚の姿でマンションから飛び降りてくる国分寺に向かって俺は拡声器マイクを通して叫んだ。
「何してんねーんっ!!!」
飛び降り自殺しようとしていた女は何が起こったのか理解できず固まっている。
そして固まっている間に女は警官隊に取り押さえられた。
「あの女の時を止めて自殺を防いだという事か・・・
こ、これが停止(フリーズ)刑事・・・」
国分寺は予測不能で想定外な行動と白ブリーフ1枚というビジュアルで「!?」を女に植え付けたのだった。
国分寺刑事は自殺防止用エアーマットに飛び降りた衝撃でアバラにヒビが入り救急車で運ばれていった。
これが俺と停止(フリーズ)刑事、国分寺卓郎がコンビを組んだ最初の事件だった。
コントな小説『SM倶楽部100人の女王様』
三浦将平 35歳
都内の1DKのアパートで1人暮らし。
派遣会社に登録し派遣先の工場で仕分け作業をして生計を立てている。
人生に目標がない。友人も恋人もいない。
冴えない人生を送っている冴えない男だ。
いや、冴えない豚野郎だ・・・
*
ある日、人生が一変した。
宝くじで6億円当たったのだ。
これで、一生遊んで暮らせる!
とりあえず仕事を辞めた。
次にマンションに引っ越そうとネットで賃貸情報を調べている所で俺の行動力は燃え尽きてしまった。
慌てて引っ越しするの面倒臭いから後回しにしよう…
時間と金だけがある状態になった。
時間と金があり過ぎて何もやる気が起こらない。
時間を消費するだけの毎日になった。
元々、物欲があまり無い上に運転免許証を持っていない。
免許があれば車を買うんだろうけど免許を取りに行くのも面倒臭い…
友人も恋人もいないから1人で旅行したり高級店で食事してお金を使うという選択肢も俺には無かった。
マンガ・テレビ・YouTube・Netflix観賞と風俗で性欲を発散する日々を送った。
そんな生活が3ヶ月以上続いて、さすがに人としてヤバいと思うようになってきた。
10年後、20年後もこんな生活を送っている自分を想像するとゾッとした。
何か変えなきゃといけないと思いつつ、でも簡単に堕落した生活は変えられなかった。
前置きが長くなりましたが、この物語は俺が、ちゃんとした人生を歩んでいこうと思うきっかけになった出来事を紹介するお話です。
*
とにかく金と性欲だけはある。
今日は以前から興味があった『SM倶楽部100人の女王様』に電話予約した。
リクエスト(おねだり)した内容は
「俺を滅茶苦茶にして下さい、女王様達」
*
とにかく圧倒的だった100人の女王様達。
まず20人程の女王様が俺の部屋にヒールを履いたまま土足で乗り込んできた。
そして部屋に入りきらない残りの女王様達がアパートを取り囲む。
「こんな狭いアパートに100人も呼ぶんじゃないわよ、この豚野郎」
室内の女王様達からお仕置きのムチの雨が、部屋中に降り注いだ。
白ブリーフ1枚になった俺をムチで叩く女王様達。
テレビをムチで叩く女王様。
トースターをムチで叩く女王様。
折り畳みベッド、ユニットバスの便座、そして
キッチンのシンクをムチで叩く女王様。
パソコンのキーボードのキーをヒールでひとつずつ踏み潰していく女王様もいる。
あぁ…俺も踏んでほしいです、女王様。
室外の女王様達はアパートの扉や郵便受け。
エアコンの室外機や駐輪場に置いてある俺の自転車をムチで叩いてロウソクまで垂らしている。
(他の住人の部屋や物には一切危害を加えない辺りがプロの仕事)
俺の生活の全てを100人の女王様達に蹂躙されている。
蹂躙して頂いてありがとうございます女王様達。
しかし、これはもはやプレイを越えて事件だ。
こんな豚野郎の人生に、こんな素敵な事件を与えて下さりありがとうございます、女王様達。
どうか誰も警察に通報しませんように…
「聞いて下さい、女王様達。
僕は宝くじで6億円当てました。
今はお金と時間をもて余して不毛な日々を送っています。
そんな僕をもっと叱って下さい、女王様達」
「誰が勝手に喋っていいって許可したんだい?」
「豚野郎のくせに浮かれてんじゃないわよ」
「ぶ、ぶひぃ~」
許可なく身の上話をした豚奴隷に女王様達はお仕置きのロウソクを垂らして叱って下さった。
「ありがとうございます、女王様達」
「お前はどうしようもない変態だね」
「私達にどうしてほしいんだい?」
「これからはちゃんと生きますから・・・
顔と乳首をヒールで踏んでほしいです、女王様達」
*
ある日突然、億万長者になって浮かれていた俺を女王様達が叱ってくれた。
金持ちになっても俺は豚野郎。
謙虚に生きよう。
しっかり生きよう。
ちゃんと生きよう。
目が覚めた。
更正するきっかけを与えて下さり、本当にありがとうございました女王様達。
とりあえず・・・
引っ越しから始めるか。
もう、このアパートでは暮らせない。
俺は新たな一歩を踏み出した。
コントな小説『不謹慎』
「誰かっ、誰か来て下さいっ」
50歳前後に見えるスーツを着たおじさんが叫んでいた。
声に気付いて私と買い物中と思われる自転車に乗ったおばさんが近付くと路上でお爺さんが倒れていた。
意識が無いようだ。
「あなた119番通報お願いします。あなたはAED持ってきて下さい」
自転車のおばさんはAED を探しに行った。
私は119番通報して救急車の要請をした。
私の名前は田岡奈々美。16才の女子高生だ。
まだ16年しか生きてない私の人生で、人の生き死にに関わる場面に遭遇するのは今回が初めてだ。
スーツのおじさんは必死で心臓マッサージをしている。
それにしても、このおじさん…
眉毛細いなぁ…
眉毛が、細過ぎるよなぁ…
こんな緊迫した場合は初めてなのに…
お爺さんの意識が戻ってほしいと心から願うのに…
不謹慎ですけど、必死で心臓マッサージしているおじさんの眉毛が細すぎるのが気になっています。
すいません…
この眉毛は剃ってるのかな?
いや、抜いてる?
抜きすぎてもう生えてこないパターン?
そもそも何でおにぎりの具の昆布みたいに細くて短い眉毛なのだ?
元ヤンですか?
ビーバップ世代ですか?
それとも元ビジュアル系バンドの人?
「AED持ってきました」
自転車のおばさんが戻ってきた。
私には自転車のおばさんがおじさんの眉毛を二度見したように見えた。
*
AEDの電気ショックでお爺さんは意識が戻った。
一安心したタイミングで救急隊が到着した。
「ぶはっ」
私は変な声を出して笑ってしまったので、すぐに咳払いをして誤魔化した。
なんと、やってきた救急隊員の男が「セミの脱け殻貼り付けとんかいっ」てツッコミたくなる程に立派で存在感のある眉毛だったのだ。
夢のコラボ(笑)
重ね重ね不謹慎ですいません…
*
頭がボーっとする…
ワシは意識を失っておったのか…
ん?
眉毛細い奴がおるのぉ…
眉毛細過ぎて気持ち悪い奴やのぉ…
女子高生もおるのぉ…
もう少し近寄ってきてくれたらパンツ見えそうじゃのう…
この娘のパンツ見たいのぉ…
こんな状況でワシは不謹慎じゃのう…
あ!救急車から、すんごい眉毛太い奴が来た。
コントな文学『人間扱いしてほしい』
え?
博士にサイボーグに改造されたのに?
肉体の8割以上が機械の体になったのに?
充電して動くのに?
目からビーム出せるのに?
前厄、本厄、後厄と3年続けて厄払いしたの?
厄払い・・・必要?
コントな小説『さわりたい(外道編)』
大崎恭子 30歳 OL
平日は仕事に追われ、心をすり減らしながら毎日働いている。
リフレッシュと運動不足解消の為、週末は近所の公園を散歩するのが習慣になっている。
公園は広くて緑も多い。
ジョギングやウォーキングをしている人。
子供を遊ばせたり芝生でお弁当を広げてピクニックをしている家族もいる。
その中に最近気になる男の子がいる。
3~4歳位だろうか…
何が気になるのかというと、坊主頭なのだ。
マルコメ味噌のキャラクターのような坊主頭。
とにかく可愛い。
あの坊主頭にさわりたい。
いつしか公園に来る目的の一つが坊主頭の男の子になっていた。
目の保養だけで毎週楽しんできたが、坊主頭をさわりたい欲求が抑えられなくなってきた。
そこで私は怪しまれず決して警察沙汰にならないように坊主頭を触る作戦を考える事にした。
①『坊主頭君の目の前で転びそうになった拍子に触る作戦』
→無理がある為ボツ!
②『犬を飼って散歩して犬を坊主頭君に近付けさせて仲良くなるキッカケを作る作戦』
→ペット禁止のアパート住まいなのでボツ!
③『私も坊主にして「同じ髪型だねっ」て近づく作戦』
→なんでやねん!ボツ!
アラサーを迎えてからは実家に帰る度に婚活話を持ちかけてくるのが嫌だけど仕方がない。
実家で飼ってる犬を借りて坊主頭君に近づく作戦を実行しようかなぁ…
そういえば坊主頭君はいつもお父さんと2人だけどお母さんいないのかな?
*
1年後、私の名字は大崎から綾瀬に変わって綾瀬恭子になった。
実家の犬を使う作戦が成功したのだ。
坊主頭君とお父さんの両方と仲良くなった事がきっかけで関係が発展していった。
そして私は坊主頭君のお母さんになったのだ。
毎日、旦那様に愛されて、息子の坊主頭を触って愛でる幸せな生活を送っています。
*
綾瀬孝弘 33才 システムエンジニア。
3年前、妻に先立たれ4歳になる息子を育てながら生活している。
息子を連れて近所の公園に出かけた際に度々、美人でスタイルの良い女性を見かけた。
どうやら週末の昼間に散歩するのが習慣のようだ。
「いい女だなぁ…
何とか仲良くなって乳や尻や太ももを触りたいなぁ…」
いい女の気を引いて仲良くなるきっかけになるのではと思って息子を坊主頭にしてみた。
己の欲求を満たす為に息子を坊主にするという外道の所業を犯してしまったが丸坊主作戦が成功していい女と仲良くなり、その後関係が発展して結婚する運びとなった。
毎日、頭を撫でて可愛がってくれる新しいお母さんができて息子も喜んでいる。
僕は毎晩、妻の乳、尻、太ももを触りまくって結果的に家族全員、幸せに暮らしています。
コントな文学『まだ60歳のお義父さんの笑えない面白い話』
昨日ね、凄く面白い事が起こったんだよ。
もう、お腹抱えて笑ってさ…
でもね、
何が起こったのか内容が思い出せないんだよ…
でもね、
昨日、何か凄く面白い事が起こった事だけは覚えているんだよ。
もし、思い出したら凄く面白かったから教えるね。
コントな文学『バレないようにチ◯ポジを直しなさい①』
気持ち悪いなぁ…
気持ち悪い位置にある。
位置が悪くて動きにくいぜ…
試合中なのにチ◯ポジが悪くてバスケに集中できない…
敵にも味方にも観客にもバレないようにチン◯ジを直したい。
どうする?
苦手だけど、この手しかない!
俺は3ポイントシュートを打った。
皆がボールの行方を見守る隙に俺はチンポ◯を直した。
ボールは高く美しい放物線を描いてリングに吸い込まれた…
苦手な3ポイントシュートが決まってチームの逆転勝利に貢献した。
コントな文学『バレないようにチ◯ポジを直しなさい②』
会社の上司や同僚達と仕事終わりにボーリング場に来ました。
ボーリング中にチン◯ジを直すにはこの方法しかない!
スピンをかけて放った球はカーブしながら待ち構える10本のピンに向かって行く。
俺は皆の視線をボーリング球に集中させた隙に素早く◯ンポジを直した。
そして俺は球がピンに当たる直前に振り返って背中でストライクを感じた。
見事ストライクを取ったのでチンポ◯を直した手で皆とハイタッチした。
コントな文学『バレないようにチ◯ポジを直しなさい③』
友人達とドライブで山に来ました。
俺はやまびこに関して、子供の頃からずっと不思議に思っていた事がある。
何故、人は目に見えないヤッホーを追いかけるように山を見るんだろう?
ヤッホーが山にぶつかる所も、反響して返ってくるヤッホーも瞳には映らないんだぜ?
しっかりヤッホー聴きたいなら瞳を閉じて耳をすませばいいのにね。
悪いが利用させてもらうぜ。
「ヤッホーッ」・・・
友人達が俺のヤッホーを追いかけるように山に視線を向けた隙に俺はチン◯ジを直した。
・・・「ヤッホー」
やまびこが返ってきた。
コントな文学『親子』
夜間の定時制高校に入学した頃から反抗期が始まった。
俺は、親父や他の奴らみたいに陰気臭い生き方をしているつまらない大人にはなりたくなかった。
そして何よりも普通が嫌だった。
普通とは違う特別な存在になりたいんだ。
いつか必ず何者かになれるという思春期特有の根拠の無い自信だけが俺にはあった。
*
見た目から普通な自分を変えたかった俺は筋トレとプロテインで肉体改造を始めた。
コンプレックスだった色白の肌は太陽が苦手の為、日サロに通って黒くした。
半年後、色白で華奢なカラダからタンクトップが似合う褐色の肌の、爽やか細マッチョになった。
そして、生まれてはじめて親父に殴られた。
「どこの世界にタンクトップ着た色黒細マッチョのドラキュラがいるんだバカ野郎」
「考え方が古いんだよ、クソ親父」
*
高校卒業後に上京して10年間、東京で色々頑張ってみたけど、結局は何者にもなれなかった俺は地元に戻って夜勤で働ける工場に就職した。
1年後には結婚して息子ができた。
仕事と育児に追われる日々が過ぎて、気付けば息子は高校生になっていた。
「どこの世界に十字架のタトゥー入れたドラキュラがいるんだ、バカ野郎」
「考え方が古いんだよ、クソ親父」
胸に大きな十字架のタトゥーを彫るというドラキュラとしてはあまりにも非常識で革命的な息子とのやりとりに、かつての自分と父親が重なった。
新しい何かをしたい思春期の子供の気持ちが俺には分かる。
分かるけど…
今は、思春期の子供の親の気持ちも分かる。
「新しいとか古いとか関係ねぇよ。
親のスネかじってる高校生の分際でタトゥー入れるなんて許せねぇんだよ、バカ野郎」
俺は、はじめて息子を殴った。
コントな文学『やめてよ、お母さん』
私が10才の時、お父さんが他界した。
それから私とお母さんのふたりぼっちになった。
私は中学、高校と年齢を重ねる毎にお母さんに対して腹を立てたり、恥ずかしい、みっともないと思うようになっていった。
思春期の反抗期だけが理由ではない。
「やめてよ、お母さん。駄菓子のBIGカツをおかずに白飯食べないで」
「やめてよ、お母さん。私が中学で使ってた体操着を私服にしてスーパーに買い物行かないで」
「やめてよ、お母さん。恥ずかしいから夜中に駅前で路上ミュージシャンしないで」
「やめてよ、お母さん。自分で髪切って失敗してんじゃん。それはベリーショートじゃなくて、角刈りだよ」
*
ある日、学校から帰ると台所でお母さんが倒れていた。
私は意識の無いお母さんの体を揺すりながら声を掛けた。
「やめてよ、お母さん。私を1人にしないで」
お父さんは多額の借金を残していた。
朝は清掃業のパート。
昼はテレアポのアルバイト。
夜は路上ミュージシャン。
お母さんは自分の食事代も洋服代も散髪代も節約していた。
朝から晩まで掛け持ちで働いて、借金を返済しながら私を育ててくれていた。
お母さんに対して腹を立てたり、恥ずかしい、みっともないと思う一方でお母さんばかりに負担を掛けている自分の非力さに腹が立った。
何もしてあげられない事が情けなかった。
お母さんは充分な栄養が取れていない状態と過労が原因で倒れただけだった。
「また倒れられたら困るから私、バイトする」
アルバイト代で学費と家計の負担を減らして、お母さんの力になろうと思った。
ふたりぼっちなんだから2人で支え合って生きていきたいって思った。
*
その後、お母さんは角刈りシングルマザーの路上ミュージシャンというトリッキーなスタイルがSNSで話題になりメジャーデビュー。
一躍、時の人になったお母さんはお父さんの残した借金を全て返済した。
高校を卒業した私の夢はお母さんと同じミュージシャンなのだが…
「あんたも角刈りにしてみれば?」
「変なアドバイスはやめてよ、お母さん。角刈りだけは絶対にイヤッ」
了