賤しい人
賤しい人
怒りやすくて恨みを抱き、邪悪にして、見せかけで欺き、誤った見解を奉じ、企みのある人・・・彼を賤しい人であると知れ。
一度生まれるもの(胎生)でも二度生まれるもの(卵生)でも、この世で生きものを害し、生きものに対する憐れみの無い人・・・彼を賤しい人であると知れ。
村や町を破壊し、包囲し、圧制者として一般に知られる人・・・彼を賤しい人であると知れ。
村にあっても、林にあっても、他人の所有物をば、与えられないのに盗み心を持って取る人・・・彼を賤しい人であると知れ。
実際には負債があるのに、返済するように督促されると「あなたからの負債は無い」と言って言い逃れる人・・・彼を賤しい人であると知れ。
実に僅かのものが欲しくて道行く人を殺害して、僅かのものを奪い取る人・・・彼を賤しい人であると知れ。
証人として尋ねられた時に、自分のため、他人のため、また財のために、偽りを語る人・・・彼を賤しい人であると知れ。
あるいは暴力を用い、あるいは相愛して、親族または友人の妻と交わる人・・・彼を賤しい人であると知れ。
己は財豊かであるのに、年老いて衰えた母や父を養わない人・・・彼を賤しい人であると知れ。
母、父、兄弟、姉妹あるいは義母を打ち、または言葉で罵る人・・・彼を賤しい人であると知れ。
相手の利益となることを問われたのに不利益を与え、隠し事をして語る人・・・彼を賤しい人であると知れ。
悪事を行っておきながら「誰も私のしたことを知らないように」と望み、隠し事をする人・・・彼を賤しい人であると知れ。
他人の家に行っては美食をもってもてなされながら、客としてきた時には、返礼としてもてなさない人・・・彼を賤しい人であると知れ。
食事の時が来たのに、バラモンまたは「道の人」を言葉で罵り食を与えない人・・・彼を賤しい人であると知れ。
この世で迷妄に囚われ、僅かのものが欲しくて、事実で無い事を語る人・・・彼を賤しい人であると知れ。
自分を褒め称え、他人を軽蔑し、自らの慢心のために卑しくなった人・・・彼を賤しい人であると知れ。
人を悩まし、欲深く、悪いことを欲し、物惜しみをし、欺いて徳が無いのに敬われようと欲し、恥じ入るこころの無い人・・・彼を賤しい人であると知れ。
目覚めた人(ブッダ)をそしり、あるいは出家・在家のその弟子をそしる人・・・彼を賤しい人であると知れ。
実際は尊敬さるべき人ではないのに尊敬さるべき人と自称し、梵天を含む世界の盗賊である人・・・彼を賤しい人であると知れ。
わたくしがそなた達に時示したこれらの人々は、実に「賤しい人」と呼ばれる。
生まれによって賤しい人になるのでは無い。生まれによってバラモンとなるのでは無い。行為によって賤しい人ともなり、行為によってバラモンともなる。
仏典「スッタニパータ」より