伊丹の自然ー昆虫編
1.はじめに
おはようございます。こんにちは。こんばんは。IWAOです。今回は、伊丹昆虫館の企画展示、伊丹の自然について書きます。前回は、動物について書きました。今回は、昆虫館ということもあり、昆陽池や伊丹でどのような昆虫がいるのかについて書いていきます。よろしくお願いします。
2.伊丹の昆虫と構成
展示の構成は、主に、実際に採れた昆虫の標本とパネルによる解説展示で構成されてました。また、学芸員による伊丹の昆虫の推し虫も別でパネルで展示解説されていました。
まず、伊丹市にはどれくらいの昆虫がいるでしょうか?今、分かっているだけで、「991種」もいます。つまり、調査によっては、より増えることが考えられます。
3.学芸員による推し昆虫
学芸員による推し虫が紹介されており、昆虫の魅力がより分かりました。その中で私が注目したのが、アオスジアゲハとヨツボシケシキスイの2種です。アオスジアゲハは、伊丹ではどこでもみることができ、身近な昆虫ということもあり、伊丹を象徴する昆虫となっています。シンボルマークにしたり、幼虫がでかいフィギュアにもなっているくらいで、伊丹昆虫館もアオスジアゲハをシンボルとする昆虫にしています。
ヨソボシケシキスイは、名前の由来でもある上羽の赤い4つの斑点が最大の特徴です。そして、オスは大顎は発達し、その大顎を利用してメスや餌場を獲得するための武器として使います。ここまでの説明で、ヨツボシケシキスイが、クワガタのように見えたかもしれませんが、彼らはクワガタの仲間ではありません。クワガタは、甲虫目クワガタムシ科に分類されるのに対し、ヨツボシケシキスイは、甲虫目「ケシキスイ科」に分類されます。科レベルでの違いは大きいため、クワガタとヨツボシケシキスイは、近縁でもありません。ただ、生息地も見た目も被るのに、分類的には近くないという所は不思議だなと思います。また、このヨツボシケシキスイは、伊丹の限られた所にしかいない激レアの生き物というわけではありません。北は北海道、南は奄美諸島と日本各地に、樹液の出る場所であれば、普通に見ることのできる昆虫で、カブトムシやクワガタよりも簡単に見ることができる生き物でもあります。
このヨツボシケシキスイは、絶大な人気がある昆虫のイメージはないですが、根強い人気を持つ昆虫だと思います。私がTwitterで知り合ったボクさんは、実際にトラップを仕掛けて採取し、現在も飼育しています。実際に採取した時の動画を載せているので、ご覧ください。ボクさんは、強い憧れを持っていました。その理由が、「初めて図鑑で見たときに衝撃を受けたこと」「子供時代に住んでいた自然が杉などの人工林が中心で、あまり森の中に入ることができなかったこと」などを挙げており、大人になった今に会うことができ、嬉しかったと動画内で話しています。ボクさんは、ブリードも行っており、初代は今年の夏まで生き、今は二代目と三代目となっています。二代目は去年に三代目は今年に生まれたもので、 今は成虫の寿命がどれだけなのかを観察していると教えてもらいました。おすすめポイントは、大きさは、1センチもないくらいで非常に小さいために、飼育スペースがそこまでいらないこと、飼育が簡単、幼虫期間が短く成虫の寿命が長いため、飼育に向いていることを教えてもらいました。私もいつか飼育してみたいと思ってしまいました。
4.伊丹の絶滅危惧種
伊丹の昆虫では、ツマグロキチョウ、シルビアシジミの絶滅と復活について展示されていました。
ツマグロキチョウは、猪名川河川敷に生息し、全体的に黄色味の強いチョウです。キタキチョウと瓜二つですが、見分け方は羽の角張り方です。翅の一番上の部分が、ツマグロチョウのでは角張り、キタキチョクの方が丸まっています。ツマグロキチョウの注目ポイントは、伊丹では2007年に約35年ぶりに「再発見」されたことです。いなくなったと思われる生物が、人目のつかない所で、しぶとく生きて続けていたことがわかります。いなくなったらから、絶滅したとは限りませんが、決して絶望したくはないです。
*近年再発見されたツチフキも30年ぶりの再発見でした。何故、再発見されたのか、気になった方は、是非、ご覧ください。
シルビアシジミは、境省レッドリストで「絶滅危惧Ⅰ類」に指定されており、その上位は、「野生絶滅」と絶滅リスクは非常に高いです。伊丹の辺りでは、猪名川や大阪空港周辺に生息しています。伊丹市昆虫館では、月に一度の野外調査と室内飼育で生態調査が続けられています。
両者ともに数を減らしてしまう要因は共通し、「食草の減少」が原因となります。ツマグロキチョウはカクラケツメイソウ、シルビアシジミはシロツメクサを食草としており、河川敷が生息地ということから、彼らの食草は、人のある程度手が入った場所、つまり、刈り入れが必要な環境にいると思われます。現在、2次的な環境の手入れが難しくなり、そういう環境の減少や消滅が、根本的に数を減らす原因になったのではないかと思われます。「自然とは何か?」「人と自然の関係性とはどうあるべきか?」ということを考えた場合、「人が創出する環境」も生物によっては、大切な自然になり、2次的な環境をどう守っていかなければならないのかを考えさせられると思います。
絶滅は心配されているが、どちらも伊丹では意外にもパッチ状にいることが分かっている。決して安心していいわけではないが、今すぐ対策をとらなければ、手遅れになるほどの緊急性はないそうです。シルビアシジミの場合は、食草を変える(*地域によっては、ミヤコグサを食べるとの記述あり)こともあるらしく、この草だけは守らねばというものでもないそうです。また、シルビアシジミの場合、毎年たくさん飛んでいるとの記述があり、希望が持てそうな状況にあるなと感じます。
5.伊丹と地球の危機
ここの展示の中には、地球環境と伊丹の危機が読み取れる昆虫の展示もありました。グローバルな環境問題とローカルな環境問題、その両者が共存する環境問題が見られました。
・地球温暖化
まずは、クマゼミ、ヒラズゲンゼイ、ナガサキアゲハの3種で、彼らの共通する問題は、「地球温暖化」です。ヒラズゲンセイの場合は、当初は、高知県で確認されていたのですが、流通の発達と温暖化によって、大坂まで生息の拡大が確認されています。クマゼミの場合は、都市化などで彼らの好む環境が創出したなどの他の要因が絡みつつ温暖化によって、クマゼミに有利な環境になり、体数の増加が確認されています。
ナガサキアゲハの場合、温暖化により幼虫が耐えられる寒さの上限が引き上げられ、北上先で死ぬことなく繁殖できるようになったことが指摘されており、温暖化による指標生物と見られています。つまり、昆虫の変化ではなく、温暖化という環境の変化によって、生息地を拡大させた結果、現在、近畿地方にいるということです。
虫だけでなく、海水魚あたりでも、日本でおかしいことがおきています。北海道では、明らかに温暖な地域で取れる魚が取れるようになったり、沖縄のサンゴが白化していたりと地球の気温が上がっているからこそ引き起こされてると言えます。つまり、生物の生息域の変化は、環境そのものの変化であることが読み取れ、それは伊丹の昆虫からも見えるということです。
・外来種
クビアカツヤカミキリ、セアカコケグモの共通するテーマは、「外来種」で、彼らは、伊丹に実際に定着しています。
クビアカツヤカミキリは、生きた桜に卵を産み幼虫がその木々を枯らせます。桜だけでなく、モモやウメなどの木々にも同様のことを行います。景観を破壊し、農業被害が大きいことを理由に「特定外来生物」に指定されています。神戸市では、一時懸賞金が架けられたこともあり、それが話題になりました。農業、景観としての被害がかなり大きく見られ、定着の確認されている地域では、木の幹にネットがかけられています。
セアカコケグモは、排水構の裏や公園の遊具などに潜んでいます。薄暗い場所に隠れているため、性格的にもあまり狂暴ではないそうです。しかし、「毒をもつ」外来種で、噛まれてしまったら、最初は軽い痛み程度ですが、次第に痛みが強くなり四肢に広がり、汗や熱感、かゆみをへと発展し、重症化すると吐気や発熱、頭痛、血圧上昇、頻脈などの全身症状が現れることもありえるなどと健康被害が明確に出る危険な昆虫です。それ故、こちらも「特定外来生物」に指定されています。普段の生活で触る機会はなくとも、まれに触る機会のある場所に潜んでおり、両者会いたいわけではない時に偶然遭遇することで、被害にあうことが想定されます。ある意味たちが悪い外来種です。
伊丹の外来種問題は、他の地域とは少し事情が違い、伊丹ならではの問題があります。それは、伊丹に「空港」があることです。空港を経由し、新たな外来種が運ばれることが考えられます。クビアカツヤカミキリ、セアカゴケグモの両者は、「外来種」だけでなく、日本に侵入した経緯も「建築用資材に紛れ込んで日本に侵入した」、つまり、「意図的に持ち込んだわけではない」ということでも大事な共通点です。外来種問題で一番注目されるのは、「逃がした」「遺棄した」などと「意図的に」放した場合ですが、何かにくっついた生き物が偶然運ばれた場合も同様の外来種を引き起こします。
空港や港は、人や物の移動の入り口です。そこで、偶然くっついた外来種が、日本へ侵入する入り口にもなりかねない。グローバル化によって、交通網が発達したことによる負の側面であり、そのきっかけに伊丹がなる可能性があるということです。伊丹には、アルゼンチンアリがすでに侵入しています。今、外来種で1番警戒されているヒアリも侵入し、拡散するになる可能性もあり、そのシナリオは「意図せざる持ち込み」です。私は、空港があることが悪いと主張するわけではありませんが、空港があるのは、「思いもしないものを運んでしまうリスクを必然的に抱えている」ということです。
6. まとめー伊丹の自然から何が分かるのか?
・昆虫編のまとめ
以上が、昆虫編の内容になります。991種という種数の多さから、普通の生き物から珍しい生き物まで幅広く扱われていたと思います。私がその中でも注目したのが、ヨツボシケシキスイと昆虫から見た環境問題です。ボクさんの場合は違った面もありますが、普通に見られる生き物もレアな生き物と違った魅力を持ち、人を惹きつけていることがわかります。引き起こされている環境問題は、生き物の存在や状態が、その写し鏡だと思っている面があり、それが如実に現れたと思います。それ故、温暖化により北上した生き物が見られる所があるのではないでしょうか。また、外来種問題の場合、伊丹という地域の特殊性が表れたと思います。特に、グローバル化によって、外来種問題が引き起こされ、間接的で空港のような外国との入り口が、そのきっかけになるということが、今回取り上げた外来種から読み取れます。伊丹にいる昆虫から、読み取れるものや考えられるものが多いことがわかる展示になったと思います。
・全体のまとめ
実際の展示物としては、鳥と昆虫の展示が中心でしたが、両者に共通して言えることは、「生き物の種類が多い」ということです。ただし、大前提として「種の数が多いことは、生物多様性の多さと同義ではない」です。それでも、自然が豊かであるのかの指標の一つではあり、昆陽池や伊丹の生物多様性の多さを示しているのではないかと感じました。
では、昆陽池と伊丹の生物多様性の豊かさを生み出しているその根源は何かというと「環境の豊かさ」ではないかと感じます。伊丹と昆陽池には、生き物が多くいますが、どのような「環境に住んでいるのか」を考えれば、必然的に「みんなが同じ環境にいるとはならない」はずです。また、昆陽池の周りを歩いてどのような生き物がいるのか、どういう公園かを観察しました。昆陽池というでかい池がポツンと一つあるでけではありません。池を囲む林があり、その構成する樹木が違う、池の周りに河川があり、流れが急だったり、緩やかだったり、側に小さな水場があったりと、環境のあり方は、多様です。そのような多様な環境があるため、多くの生き物を引き寄せ、生息できるようにしているのではないかと感じました。昆陽池では、トンボが多く生息し、タイコウチ、ミズカマキリ、コオイムシのような数を減らしている水生昆虫も生息しているため、水環境の豊かさというのが、住んでいる生き物から見えてくると思います。そこに伊丹昆虫館や昆陽池の魅力というものがあるのではないかと思います。
昆陽池の隣に人工のため池があります。昆陽池とため池を比べて見たら、昆陽池では、池の中から水生植物が所々にはえ、それが陸地を作ります。陸地と池の境もはっきりしているだけでなく、池と陸地の間に植物がはえて曖昧になる所もあります。つまり、「エコトーン」があるということです。こういう環境は、生き物の隠れ家になり、餌場を提供します。エコトーンがあるのは、創出される環境が多様化することと同義です。エコトーンだけでなく、池の深さなども一様ではないと思われるため、昆陽池にある環境は、陸地・池まであり方が多様ではないかと思われます。一方のため池はどうでしょうか?陸地との境界はコンクリート化され、池の深さはどこも均一になっているでしょう。偶然だったとは思いますが、開発されたいけとそうではない池、その違いが、生き物の生息を通してよくわかるようになったのではと思います。
以上が、伊丹の自然の内容になります。ここまで読んでくださり、大変ありがとうございます。次回もお楽しみにしてください。
*ボクしゅみちゃんねる
今回、ブログを書くにあたり、ボクさんにヨツボシケシキスイの写真を貸してもらい、魅力を教えてもらいました。現在、大型水槽のDIYを作成する動画を投稿しています。大型水槽の作成が終わったら、ヨツボシケシキスイについての動画を作成さるそうです。私のブログをきっかけに、ボクさんの動画も是非、ご覧ください。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?