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まちはだれが守るのか | 第2回内講(ゲスト:平31区みなさん)

6月26日、内郷下綴集会所におきまして、第2回「内講」が開催されました。今回のゲストは、いわき市下平窪地区「平31区」の皆さんです。下平窪は令和元年台風で甚大な洪水被害を受け、4名の尊い命が失われましたが、その後、防災のまちづくりを進めています。

その平31区の江尻光芳区長、末永和也副区長、さらに防災担当の高橋幸雄さん、ガイド役として、下平窪の住民でいわき市職員の猪狩僚さん、この4名の方をお呼びし、被災後にどのような取り組みを、どのような思いで行ってきたのかをお話しいただきました。

結論から申しますと、皆さんのお話、というか行動、アクション、考え方、どれも大変すばらしく、感動しました。私たちも心を入れ替えて自分のまちに向き合わなければならないと感じました。御礼申し上げます。

それでは、当日の内講の模様、振り返っていきましょう。

内郷まちづくり市民会議の四ツ倉会長の挨拶からスタート!
お酒もいただきながら、いい雰囲気の内講でした

自分で歩く、自分でつくる

まず、平31区の住民で防災活動に関わってきた、いわき市職員の猪狩僚さんが用意してくださったプレゼン資料を見ながら、平窪の活動の概要をご説明いただきました。

まず皆さんが語ったのが、被災直後の「ゴミ置ぎ場なじょすんだ問題」。一時的に公園などが置き場になるケースが多いと思いますが、よそから捨てにきてしまう人などもおり、すぐに満杯になってしまう。衛生的にもよくないですし、これから復興するんだという気持ちになりにくいものがあります。

内郷でも、被災直後の設置された置き場に凄まじい量のゴミや家財道具が置かれていましたが、やはり自分の家を片付けないことには誰かの家の手伝いに行く気持ちにもなれず、気持ちを前に向かせるためにも、やはり掃除はとても大事です。平窪の場合は、浄水場の被災により洗浄する水が使えず、大変ご苦労されたそうです。いやあ、思い出しますね。

下平窪の被災状況(当日のプレゼン資料より)

ある程度、地域が落ち着きを取り戻した後に取り組んだのが、平窪地区内のまち歩きだったそうです。被災に関するさまざまな情報を聞き取りするとともに、何階建ての建物が多いか、避難できそうな場所はあるか、水はどちらの方向に流れていったのかなど、細かな情報をマッピングしていかれたそうです。

会長たちが当時、手作りしていったマップ(プレゼン資料より)

すると、平窪地区内にある3階建て以上で、かつある程度の人数が避難できそうな場所は、平第四小学校以外に見当たらないことがわかり、区長さんたちが学校に掛け合い、通常避難場所とされる体育館への水平避難だけでなく、体育館から学校の3〜4階へと避難する垂直避難の訓練などを行うことができるようになったそうです。

んだがら言ったっぺ、はやぐ逃げろって

江尻区長は、垂直避難の必要性・重要性を力説していらっしゃいました。水が押し寄せる速度は速く、特に高齢者は、いざというときに移動が難しい状況にあるケースが多いため、とにかく垂直。自宅のより高い場所に逃げることだと。しかし、そうなる前に「とにかく早く避難することが重要だ」ということも重ねて強調していました。

地域への想いも語っていただいた江尻区長
いわき市の猪狩さんが軽妙に取り組みを紹介してくださいました

自分たちで作成したマップを手がかりに、今度は地元の理系最高学府「福島高専」の先生方と連携し、学生もその活動に加わるかたちでマップの磨き上げ作業を行い、オリジナルの防災マップを完成させました。大変仕上がりがよく、手作り感が満載で想いが伝わってくるマップになっています。

江尻区長は、いわき市が作成する防災マップについて「地元の目線が反映されていない。指定された避難場所に避難するのに橋を2階も渡らなければいけないというケースも出てくる。行政任せにするんじゃなく、地元の目線で防災マップを作成していくことが大事だ」と力説されていました。

この言葉には、内郷のメンバーからも賛同の声が相次ぎました。いわき市の防災マップは網羅的であり、自分の家のそばにどのような危険があるのか、暮らしの目線で描かれているわけではありません。もちろん、市のマップを否定しているわけではなく、行政目線と暮らしの目線、両方があることで防災により一層役立つマップになるということです。

江尻区長は、もともと消防士として、長年いわき市の消防行政に関わってきたそうです。防災への意識も当然高いのですが、区長たちの思いが次々に住民の心を突き動かし、地域の学校、福島高専の専門家たちを動かし、防災のまちづくりに発展してきた、ということが窺い知れました。

マップについて力説する高橋さん
早期避難を呼びかけるキャッチコピー
前回に引き続き地域活動家の小松さんが総合司会に

また、マップだけでなく、最近になって、防災関連情報に気軽に手早くアクセスできる「QRコード」を埋め込んだアナデジ防災看板を、地区内の各所に設置するという活動も続けられているそうです。実際に見させてもらいましたが、防災看板、アナログさとデジタルが結びついた、なんとも「ちょうどいい」アナデジ防災看板、とても素晴らしいんです。

QRコードを読み取ってリンク先へと進むと、河川の推移情報など、防災当日に役立つリンクだけでなく、平窪が被災した時に撮影された写真をまとめたGoogleドライブにジャンプする機能もあり、ものすごく役立ちました。

これはシンプルですばらしいアイディアだなと思いました。Googleドライブに被災直後の写真をファイル分けして置いておけばアーカイブにもなるし、そのまま次の時代の人たちにとっての承継にもなる。普段から使っているのに、そういう使い方があるとは灯台下暗しでした。

内郷の防災のまちづくりを力説する「うちぼう」の三室メンバー

平窪の皆さんの取り組み、高いモチベーションと、周囲を巻き込む力がとてもすばらしいな、と思うのですが、「防災で終わらない」点もすばらしいなと思いました。なんと昨年度、子どもたちを対象にした夏祭りを開催し、想像以上に子どもたちがやってきてくれたそうです。防災から、未来世代を見据えた関係づくりへの展開、とてもすばらしいと思います。

楽しいからやれる、続けられる

皆さんに、なぜそこまで打ち込めるのかを聞くと、楽しいから、自分でやっていて楽しいんだ、そんな言葉が多く聞かれ、皆さんの地域に対する気持ちが伝わってきます。まずは楽しいというポジティブな感情の上に、まちの未来、将来への視点が重なっているから開放的な取り組みになるのでしょう。

平窪でも、被災直後、不動産の価格が落ちた時期があったそうです。洪水が来るかもしれない地域として見られていたのでしょう。しかし、皆さんの取り組む平素のまちづくり活動が、徐々に「暮らしやすさ」を作り出し、それが伝わっていく。そういうサイクルができれば、また再び若い世帯に選ばれるまちになれるかもしれない。そのためにも頑張ろるんだという気持ちの強さが、言葉の節々から感じました。

平窪の支援に入っていた「Teco」の小沼さんと鈴木さん

支援にも恵まれたそうです。住民だけでは、ここまで来るのは難しかったかもしれない。平窪の皆さんはそうおっしゃっていました。地元の支援団体である一般社団法人Tecoの皆さんが支援に入り、さまざまな支援を続けてきたそうです。地元の人たちと支援団体、双方が強みを活かすことで、こうした防災のまちづくりが進められてきたことがわかりました。

だれがまちを守るのか

内講は、お酒を飲みながらやりますので、みんなで声を張り上げながら、笑いあり、涙あり?で繰り広げられていくのですが、こうして楽しく、真剣に防災について議論できること、そう簡単にできることではなく、改めて下平窪の皆さんに感謝申し上げると共に、大きな刺激を受けました。

平31区の皆さんが、誰よりも汗をかいていらっしゃる。3名の幹部の皆さんは「楽しんでやることが大事だ」とおっしゃいますが、楽しさだけでやれるものではありません。地域を愛する気持ち、なんとかしたいという自主性の成せる技だなと改めて思いました。

内郷の皆さんからもさまざまな意見が出てきました

内郷はどうだろう。そんなこと思います。もちろん、私たちもさまざまな活動をしてきましたし、内郷地区内の区長さんたちにもご賛同いただていていますから、地域との結びつきは強いとは思っています。ですが、平窪の皆さんの話を聞いて、まだまだやれる、楽しいという動機でいいんだと、勇気をいただいた気持ちになりました。

だれのための防災なのか。まちを守るのはだれなのか。住民自治の、そんな根源的な問いは、うちぼうメンバーの一人一人の心に残ったはずです。

そして、同じいわき市で、被災という辛い経験だけれども、気持ちがわかる者同士、こうして意見を、気持ちを交換できたこと、これこそまちづくりの醍醐味だな、と思わずにいられない。そんなすばらしい一夜となりました。調整いただきました皆さん、ありがとうございました!!!

次回の内講は7月24日水曜日です。内郷公民館で行われる「新川・宮川の浸水対策に係る説明会」を「内講第3回」として開催します。お酒もおつまみもありませんが、今後の防災を考える上で非常に重要な説明会となりますので、皆様、奮ってご参加ください。

内郷まちづくり市民会議「うちぼうプロジェクト」事務局


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