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文化人物録85(室崎益輝)

#室崎益輝 (防災学者、神戸大学名誉教授)
→1944年兵庫県生まれ。67年 #京都大学 工学部建築学科卒業。京都大学助手、#神戸大学 工学部助教授、同大学工学部教授を経て、98年より同大学都市安全研究センター教授。同大学を退職後、2004年4月より独立行政法人消防研究所理事長、 06年4月より消防庁消防研究センター所長。

関西学院大学教授、#兵庫県立大学 減災復興政策研究科長、京都大学防災研究所客員教授、中央防災会議専門委員、消防審議会会長なども務めた。著書に『地域計画と防火』『ビル火災』『危険都市の証言』『建築防災・安全』など。

室崎さんには直接お会いしたことはないが、新聞の社会部時代に防災関連についていろいろお電話などでお話ししたほか、文化部の時も防災とメディアに関する取材をさせていただいた。室崎さんのお話が説得力を持つのは、防災学の第一人者でありながら、ご自身も #阪神大震災 の被災者である点に尽きる。

深い学識と悲しい経験がリンクしているからこそ、ほかのメディアなども含め室崎さんの話を聞きに行くのである。そして、防災への備えが永続的となり、「防災文化」として各地域で代々語り継がれていくことが室崎さんの願いだろう。

*メディアと防災・減災について(2015年)
減災という観点で言えば、まず第一にメディアの役割がとても大きくなった。リスクコミュニケーションという言葉があるが、これはリスクへの理解なしに災害に立ち向かえないということだ。リスクコミュニケーションをいかにやるかが減災の課題になる。

行政、メディア、専門家、市民の4者が共同でやる必要がある。特に専門家とメディアは市民をつなぐ役割がある。阪神大震災、#東日本大震災 では専門家の発信が弱かった。しっかり連携して減災に備える必要がある。

第二に、阪神大震災以前は災害が起きた後に問題点を指摘していたことだ。行政の責任追及も後にやる。被害想定を決める場にメディアも入っていて、指摘するチャンスがあったにもかかわらずだ。メディア自身にも誤ったリスクを伝えた責任がある。

起きる前にいかに備えるかが重要だ。被害予防に向け、何をすべきか問うべきだった。そこに阪神大震災があり、ようやく気づいた。いま私は #人と防災未来センター もやっているが、そこで「ナマズの会」という勉強会を始めた。その成果は地震防災のページに掲載され、地震データは月に1回神戸新聞に紹介している。リスク情報、災害への備えに意識的になってきた。

ページの中身もだんだんよくなっている。世界の動向として生活密着、被災者の声を拾うようになってきた。国際的事例も紹介しているし、さらに延長線上でメディア、講演会、イベントなども増えてきた。減災に対するメディアの意識も主体的になってきたように思う。

第三に流行に弱いという点だ。中国地方の豪雨被害の時も広島にメディアが殺到し、丹波市に来るメディアはほとんどなかった。少数者の声なき声を発掘するのがメディアの役割だ。見落とされた部分は注意喚起したい。阪神大震災にしても、テレビ局があるのは1・17前後の特集ぐらいで、世の中の関心に合わせて動いてしまっている。

3・11後の課題としては、メディアの世代交代がある。阪神での経験が引き継がれていない。これは研究者も行政も同じことが言え、東北には伝わっておらず、阪神の二の舞になる事態を何度もやっている。公営住宅の教訓も警告しなかった。教訓の継承がメディアでも必要だ。

もう一つは科学的知見や表現の必要性だ。自然の捉え方が右往左往している。本当の科学ではなく、根拠のないことを視聴者に日々伝えることも少なくない。専門家と緊密に連携し、勉強する必要がある。

メディアがやるべきことはこのような連携に加え、心理的バイアスの克服と風化防止だ。風化すると警報が出ても逃げなくなり、警報が当たらないと批判するようになる。警報や情報の受け止め方、バイアスをなくす報道が求められる。災害が起きる前の報道と起きた後の報道、両方をうまくやる必要がある。

ほかには身近な防災の注意喚起、SNSとの連携が挙げられる。新しいITツールをリスクコミュニケーションにどう生かすか。これはデータの積み重ねが必要になってくる。

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