文化人物録55(川瀬賢太郎)
川瀬賢太郎(指揮者、神奈川フィルハーモニー管弦楽団前常任指揮者、名古屋フィルハーモニー交響楽団音楽監督)
→日本人指揮者として山田和樹さんの下の世代を代表する存在と言えば、間違いなく川瀬賢太郎さんだろう。2014年からは20代で神奈川フィルの常任指揮者に就任。22年まで8年間務めた。僕はちょうど川瀬さんの在任期間と重なっていたため多くの演奏を聴き、また直接話を聞く機会も多かったが、川瀬さんの指揮による音楽は楽団員も聴衆も、皆が楽しそうなのが印象的だった。指揮者として若いからといって恐縮したり萎縮したりせず、常にコミュニケーションを取ることを意識していたのだろう。2023年からは名古屋フィルハーモニー交響楽団の音楽監督となり、新たなステージでの活躍も大いに期待できる。
(2016年、神奈川フィルラインナップ会見@横浜)
・神奈川フィル常任指揮者の契約を更新した。神奈川フィルとの出会いはデビューのきっかけにもなった、東京国際音楽コンクールの入賞コンサートだった。そのあと2013年に2度目の共演をし、たった2回の共演で常任指揮者になった。最初は雲の上を歩いているような手探りの状態だったが、オーケストラやお客さん、メディアなどに支えられて無事やってきた。次の3年は最初の3年の上にどうアプローチして同神奈川フィルの魅力や五感を引き出すか。それが僕の課題です。
・マーラーは常任指揮者になってすぐに交響曲第2番「復活」をやったので、新たな3年間のスタートとしては交響曲第1番「巨人」をやりたかった。自分のほかの指揮者としてはカーチュン・ウォン、外山雄三さんら神奈川フィルの音楽の歴史を作っていただいた方に振っていただきたい。また、園田隆一郎さんはオペラではずば抜けている指揮者であり、是非得意のイタリアオペラをやってほしいと思っていた。
・神奈川フィルはピュアな響きが特徴で古典が非常にうまい。その印象は今でも変わっていない。ハイドンをやり、さらにボキャブラリーが増えたと思う。ピュアな反面、みなとみらいホールの音響を味方につけられていなかった点もあると思うので、みなとみらいHを一つの楽器として、神奈川フィルがみなとみらいHの鳴らし方を一番よくわかっているオーケストラにしたい。次の3年間でいかにホールを味方につけるか。そのやりがいを感じている。神奈川県民ホールはピえットでいい音がする。神奈川フィルはピットでのサポートが得意であり、改修が終わったらオペラでも積極的に関わっていきたい。
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