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ITIL4のコア書籍紹介②「Digital and IT Strategy(デジタルおよびITストラテジ―)」(DITS)

前回の記事では、ITサービスマネジメントのベストプラクティス・ガイダンスである「ITIL4」の5つのコア書籍の一つである「Create, Deliver and Support(作成、提供およびサポート)」(CDS)について紹介しました。
今回は、ITIL4のコア書籍のうち、最後に出版された「Digital and IT Strategy(デジタルおよびITストラテジ―)」(DITS)の内容をご紹介します。

ITIL4 Digital and IT Strategy(デジタルおよびITストラテジ―)とは?

「Digital and IT Strategy(デジタルおよびITストラテジ―)」(以下、DITS)は、デジタル化された組織における戦略の役割を考察しています。また、デジタル化された世界で競争するために必要な能力を概観し、組織がどのように新しいテクノロジーを評価し、どのように競争優位を確立することができるかを提案しています。(序文より抜粋して要約)

DITSはITIL4の資格体系の二つのトラックのうち、「ストラテジック・リーダーシップ」のモジュールの一つに位置付けられています。ストラテジック・リーダーシップ・モジュールは「Digital and IT Strategy」に加え、「Direct, Plan and Improve(方向付け、計画および改善)」も含まれていることから、戦略、ガバナンス、コントロール、リーダーシップといった、サービスマネジメントのいわゆる上流に関わる内容であることがわかります。

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日本語版書籍および日本語での研修コースが提供されています。(ITプレナーズ社の申込サイトはこちら)。

コンテンツをざっくりとご紹介

DITSはPart1からPart3に分かれています。
各Partでデジタル/IT戦略の立案と実行のための手法が紹介されていることに加え、読者の理解の促進のため、仮想企業を設定して、どのように理論を実践していくかが、ケーススタディ形式で説明されています。

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各Partの内容はざっくりと以下の通り。

<Part1>
デジタル/IT戦略を語る上で必要となる、現在のビジネス環境が整理された形で記述されています。また、昨今の最重要トピックであるデジタルトランスフォーメーションに関わる用語の定義や内容の説明DITSの基本コンセプトがまとめられています。

<Part2>
過去のITILのバージョンでも活用されてきた、ITILの「継続的改善モデル」に従って、戦略実行のジャーニー(旅程)の各ステップの実施事項と、各ステップで活用できる多くの手法がまとめられています。

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<Part3>
Part3では、Part2のジャーニーを進めていくために、どのようなケイパビリティ(組織能力)が必要かがまとめられています。リーダーシップやイノベーション、組織構造など、これまでのITILのバージョンでは記述が十分でなかった点についても言及されています。

当社のコンサルタントが考えたDITSの特徴

過去のITILのバージョンも含め、DITSがカバーする領域でのコンサルティング経験を持つ当社㈱IT VALUE EXPERTSのコンサルタントが、DITSの特徴を解説します。

1.デジタルトランスフォーメーション(DX)に正面からアプローチしている
これまでITILはどちらかというと、「既存のITシステム」「SoR」のサービスマネジメントのプラクティスであり、デジタルトランスフォーメーションには対応できないといった見られ方をされがちでしたが、DITS(そしてそれを含むITIL4)は、正面からデジタルトランスフォーメーションに取り組んでいます。

2.平易で読みやすい
全体を通じて平易な言葉を使っており、DITSと同領域を扱っているITILバージョン3の「サービス戦略(Service Strategy」で読みにくさに苦戦した方も、今回は楽に読み進められます。本書ではデジタル技術やデジタルトランスフォーメーションの定義がわかりやすく整理されており、ITサービスマネジメント以外の領域の方にもおすすめです。

3.Strategy Journeyごとに数多くの手法がマッピングされている
既存のITILのプラクティスだけでなく、市場で活用されているフレームワーク、プラクティスを積極的に取り込んでいるため、戦略領域においても、多くの手法が紹介されています。また、以前のバージョンに比べ、ITIL独自の手法はかなり減った印象です。

4.他書籍との整合性・融合が非常に強く意識されている
DITSは戦略面を取り扱うため、他のコア書籍とは立ち位置が明らかに異なっています。しかしながら、他の書籍との整合性はしっかりと担保されており、本書籍を読むことで、ITIL4の全体像がより体系的に理解できます。(初めてITIL4書籍を読む方は「ITIL4 Foundation」を読むことを強く推奨します。

5.適用にはビジネスコンテクストの理解が必須
海外の専門家の間ではDITSは「ITサービスマネジメントのMBA」と呼ばれています。MBAがそうであるように、理論を習得するだけでは十分でなく、適用にあたっては「ビジネスコンテクスト(背景)を踏まえ、自社(顧客)では何をどう適用すべきか?」という視点で見ていくことが必要になります。

本書をおすすめしたいのは?

以前のバージョンよりも大きく進化した「Digital and IT Strategy」。ITSM領域以外の方にも広く活用していただきたい内容となっています。特におすすめしたいのは...。

① デジタル推進組織、IT組織のリーダー層
目線が個々のプラクティスよりも戦略に合わせられているので、デジタル/ITサービスやビジネスの企画・運営といった、全体をend-to-endで見ている立場の方におすすめです。実務での活用だけでなく、デジタルトランスフォーメーションに必要となる基礎知識の習得にも役立ちます。

② 戦略系、DX系のコンサルタント
デジタル/ITサービスがビジネスのコアとして定着してきた中、サービスマネジメントの観点はコンサルタントにも必須になってきています。ITIL4及びDITSはデジタル/ITサービスを前提としたサービスマネジメントの観点を概観できる非常に良いコンテンツです。(一部で誤解されているように)ITIL4は決して特定領域のマニアックなベストプラクティスではありません。

③ あらゆる企業の経営層
DITSは、デジタルテクノロジーの中身を詳述したものではなく、あくまでフォーカスはマネジメントであり、目的はビジネス価値の創出に当てられています。そのため、経営層の方がデジタル/ITを活用したサービスの戦略やマネジメントに関する手法の理解を深め、ビジネス価値の創出を構想するための第一歩として、大変有益です。

その他のキーワード

以下に、DITSで言及されているその他のキーワードをいくつか挙げておきます。ピンと来た方はぜひ書籍を手に入れて、中身を確認してみてください。

・Digital Transformationの4本柱
・Positioning Tools
・Digital Readiness Assessment
・OKR
・Automation(Simple/Complex/Intelligent)
・Customer/Employee 360
・Absorptive Capacity
・Cynefin framework
・Toyota Kata
・Parallel Operating Model
・Servant Leadership

おわりに

前回のITIL4書籍「Create, Deliver and Support(作成、提供およびサポート)」(CDS)に引き続き、今回は「Digital and IT Strategy(デジタルおよびITストラテジ―)」(DITS)についてご紹介しました。興味を持っていただけたでしょうか?
今後もITIL4のコア書籍について順次ご紹介していきますので、どうぞフォローしてくださいね。

当社IVEでは日々のコンサルティング活用の中でITIL4の適用も始めています。当社のサービスについてのお問い合わせ、提案依頼、協業のご相談等がございましたら、下記からお問い合わせください。

お問い合わせ先:info@iv-experts.co.jp
IT VALUE EXPERTS Webサイト:https://www.iv-experts.co.jp/
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以上

※本文中に記載されているフレームワーク、ベストプラクティス等に関する商標の情報はこちらをご参照ください。

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