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2次正方行列の正則、行列式、逆行列の計算

こんにちは。
2次正方行列の逆行列は私が高校生のとき、ギリギリ学習指導要領にあったので私は高校で習いました。大学や社会人になってから行列と出会った人にとってみれば、それまで長い間、普通の数の四則演算しか見たことなくて、逆行列のわけわからんややこしい計算は頭に入りづらいかもしれません。
一般的なn次正方行列の逆行列は掃き出し法という方法を使って求めるのですが、掃き出し法を使わなくても2次正方行列だけは裏技的に逆行列を見つけることができます。3次以上については別の記事で紹介します。
逆行列とは普通の数(四則演算)で言うと逆数みたいな物です。$${5}$$とその逆数$${\frac{1}{5}}$$みたいな感じで、ある行列に対してある行列が対応していていて、$${5 \cdot \frac{1}{5}=1}$$と似たような関係を満たすものです。しかし、行列の世界ではそれがいつも存在するとは限りません。逆行列がある行列は正則行列といいますが、正則性は奥が深いので詳しいことは別の記事で紹介します。

行列の定数倍

行列の定数倍は行列の全部の要素を定数倍するだけです。前回の記事で紹介し忘れていたので紹介します。2次正方行列の逆行列を計算するのに知っておく必要があります。以下は2次正方行列$${A}$$を3倍する計算例です。

$$
A = \begin{pmatrix}
1 & 2 \\
3 & 4
\end{pmatrix}
$$

とすると、$${A}$$の3倍の$${3A}$$は

$$
3A =
\begin{pmatrix}
3 \cdot 1 & 3 \cdot 2 \\
3 \cdot 3 &3 \cdot 4
\end{pmatrix}
=
\begin{pmatrix}
3 & 6 \\
9 & 12
\end{pmatrix} 
$$

となります。

2つの行列を定数倍してから和を計算しても、和を計算してから定数倍しても同じ行列になります。積に対しても、定数倍してから積を計算しても、積を取ってから定数倍しても変わりません。つまり、$${A,B}$$を$${n}$$次正方行列、$${c,d,f}$$を定数とすると

$$
cA+cB=c(A+B) \\
(dA)(fB)=(df)(AB)
$$

が成り立ちます。

2次正方行列の行列式

逆行列が存在するかどうか調べるのに、よく行列式というものを使ったりします。今回紹介する2次正方行列の逆行列を見つける過程の中で行列式が必要になります。

正方行列に対して、行列式というスカラー量(値)を定義することができます。日本語では行列式といいますが、英語では"Determinant"といいます。ちなみに2次方程式の判別式は"Discriminant"といいます。行列式は例えば行列$${A}$$があるとしたら、"det$${(A)}$$"と書いたり、"$${|A|}$$"と書いたりします。たまに$${\Delta(A)}$$とか記述もみたりすることもありますが、先述の2つが普通です。

2次正方行列の行列式は今回紹介する方法で簡単に計算できるのですが、3次以上の行列式の計算は行基本変形と余因子展開というテクニックを使って計算します。実は3次はサラスの公式という2次と似たような方法でも計算できるのですが、筆者はあんまり使ったことはないです。サラスは"3次でしか使えない"のですが、勘違いして4次や5次で勝手に使おうとする人も学生の時よく見かけた気がします。意味無いので気をつけましょう。

ここまでちょっと難しいこと書きましたが、とりあえず、"行列"と"行列式"というものは全くの別物で、行列式は行列から計算できる一つの量または値のことだと理解すればいいです。筆者は高校生の時は恥ずかしながら行列と行列式の違いについてよくわかっていませんでした。名前がややこしすぎる。とりあえず2次で実際にどう計算すればいいのか紹介します。

2次正方行列$${A}$$の行列式det$${(A)}$$は

$$
A=
\begin{pmatrix}
a & b \\
c & d
\end{pmatrix}
$$

に対して

$$
\det(A)=ad-bc
$$

というふうに計算できます。

具体的には

$$
A=
\begin{pmatrix}
1 & 2 \\
3 & 4
\end{pmatrix}
$$

のとき、det$${(A)}$$は

$$
\det(A)=1\cdot4-2 \cdot 3 = 4 - 6 = -2
$$

となります。

正則性

正則の定義

n次正方行列$${A}$$に対して、次を満たすn次正方行列$${B}$$が存在するとき、行列$${A}$$は正則であるという。また、$${B}$$を$${A}$$の逆行列という。ここでは$${E}$$はn次の単位行列を表す。

$$
AB=BA=E
$$

この$${B}$$は、$${A}$$の逆行列だとわかっているときは$${A^{-1}}$$というふうに書くことが普通です。

正則の必要十分条件

ある行列が正則であるかどうかは、一般的に以下の定理を用いて判定することができます。

$$
n次正方行列Aが正則である\Leftrightarrow \det(A) \neq 0
$$

この定理は次のようなことを意味しています。

  • $${A}$$が正則ならば、det $${(A) \neq 0 }$$

  • det $${(A) \neq 0 }$$ ならば、Aは正則である。

この対偶を取ると

  • det $${(A) = 0 }$$ ならば、Aは非正則である。

  • $${A}$$が非正則ならば、det $${(A) = 0 }$$。

ということです。

この定理を用いると、先程の行列

$$
A=
\begin{pmatrix}
1 & 2 \\
3 & 4
\end{pmatrix}
$$

は$${\det(A)=-2 \neq 0}$$だったので、正則であることがわかります。

2次正方行列の逆行列の見つけ方

正則な2次正方行列の逆行列は次のように計算できます。2次正方行列を

$$
A=
\begin{pmatrix}
a & b \\
c & d
\end{pmatrix}
$$

とすると、この逆行列は

$$
A^{-1}=
\frac{1}{\det(A)}
\begin{pmatrix}
d & -b \\
-c & a
\end{pmatrix}
=
\frac{1}{ad-bc}
\begin{pmatrix}
d & -b \\
-c & a
\end{pmatrix}
$$

となります。$${a}$$と$${d}$$を交換して、$${b}$$と$${c}$$に$${-}$$をつけた行列を$${\frac{1}{\det(A)}}$$倍しただけです。

実際これを利用すると、

$$
A=
\begin{pmatrix}
1 & 2 \\
3 & 4
\end{pmatrix}
$$

に対して、逆行列は

$$
A^{-1}=
\frac{1}{-2}
\begin{pmatrix}
4 & -2 \\
-3 & 1
\end{pmatrix}
=
\frac{1}{2}
\begin{pmatrix}
-4 & 2 \\
3 & -1
\end{pmatrix}
$$

と計算できます。

実際に$${A}$$と$${A^{-1}}$$の積が単位行列になるのか計算すると、

$$
AA^{-1}
=
\begin{pmatrix}
1 & 2 \\
3 & 4
\end{pmatrix}
\frac{1}{2}
\begin{pmatrix}
-4 & 2 \\
3 & -1
\end{pmatrix}
=
\frac{1}{2}
\begin{pmatrix}
1 & 2 \\
3 & 4
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
-4 & 2 \\
3 & -1
\end{pmatrix}
=
\begin{pmatrix}
1 \cdot (-4) + 2 \cdot 3 & 1 \cdot 2 + 2 \cdot (-1) \\
3 \cdot (-4) + 4 \cdot 3 & 3 \cdot 2 + 4 \cdot (-1)
\end{pmatrix}
=
\frac{1}{2}
\begin{pmatrix}
-4 + 6 & 2 - 2 \\
-12 + 12 & 6 - 4
\end{pmatrix}
=
\frac{1}{2}
\begin{pmatrix}
2 & 0 \\
0 & 2
\end{pmatrix}
=
\begin{pmatrix}
1 & 0 \\
0 & 1
\end{pmatrix}
$$

逆にしても

$$
A^{-1}A=
\frac{1}{2}
\begin{pmatrix}
-4 & 2 \\
3 & -1
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
1 & 2 \\
3 & 4
\end{pmatrix}
=
\frac{1}{2}
\begin{pmatrix}
-4 \cdot 1 + 2 \cdot 3 & -4 \cdot 2 + 2 \cdot 4\\
3 \cdot 1 + (-1) \cdot 3 & 3 \cdot 2 + (-1) \cdot 4 
\end{pmatrix}
=
\frac{1}{2}
\begin{pmatrix}
-4 + 6 & -8 + 8 \\
3 - 3  & 6-4
\end{pmatrix}
=
\frac{1}{2}
\begin{pmatrix}
2& 0 \\
0  & 2
\end{pmatrix}
=
\begin{pmatrix}
1 & 0 \\
0  & 1
\end{pmatrix}
$$

というように$${AA^{-1}=A^{-1}A=E}$$という関係になっていることがわかります。不思議ですね。前回のNoteでは行列の積は一般的に非可換だと紹介しましたが、逆行列はちゃんと可換になります。

以上、適当に2次正方行列の逆行列について書きました。だいぶ雑だったり適当な部分もあったりするのですが、使えるところを拾って役立てていただければ幸いです。

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